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11.注目を集めるメンツ

「高級レストランだとおじいちゃんが作法を知らなくて恥ずかしいから、ちょっとお高い居酒屋にしよう」


 そう結論を出して店に向かって歩く。


 めっちゃ見られてるわね。

 そりゃそうか。

 私の隣には大将のソフィア。

 ソフィアは緑の髪が肩より長くサラッサラ。身長は170cm程度ありスラッとしたモデル体型。

 

 後ろにも大将のガイエン。

 ガイエンは短髪黒髪で兵士団だけあって筋肉質。身長が高くシュッとしているので目立つ。


 その隣には180を越す身長でムッキムキの白髪の爺さん。ローガンが1番目立つ。


 そこに私だもんなぁ。

 身長は150cm程度で肩まである赤髪。首の下には大きな物があるし、嫌だねぇ。一緒に歩きたくないよぉ。


「で? 何処に行くんだ?」


「この先の少しお高い居酒屋さんでーす! ローガンさんごちそうになりまーす!」


「急になん────」


 人差し指を唇に当てる。


「(ボソッ)私の受付嬢モードだから黙ってて」


「お、おう」


「もう! 太っ腹なんですからローガンさんもガイエンさんも! 嬉しーです!」


 先頭でルンルンになりながら進んでいく。


 すると、ローガンとガイエンは寒気を覚えた。


「クッソォ。俺達のエマちゃんを……」

「元帥がなんだコノヤロー。エマちゃんを独り占めしやがって……」

「エマちゃん、そいつはやめておけよぉ!」

「「「あのヤロー共ー」」」


 周りの軍人達からの呪詛が凄まじいほど届いていた。


「な、なぁ、ソフィア?」


「はい? 何でしょう?」


「エマは、受付嬢としてはどうだ?」


「えぇ、ちょっとおっちょこちょいな所があるとか。それも含めて人気の受付嬢みたいですよ? 甘い物が好きなので、中には甘味を献上する方もいらっしゃるそうですよ?」


「そ、そうなんだな……」


「エマさん、末恐ろしいな。間接的に俺達を攻撃するとは……」


 そんな呪いのような視線に耐えながら店にいく。

 すると、そこは少し上流の軍人達が愛用する居酒屋だったのだ。


「いらっしゃーい! エマちゃん、今日はまた凄い人連れてるねぇ! 4名?」


 おばちゃんが対応してくれる。


「そうでーす! ご飯に誘われたので、ここがいいかなぁと思って来ました! ご迷惑でした?」


「とんでもないさね! さっ、あそこのテーブルでどう?」


 おばちゃんが指を刺したのは端の方にある四人掛けのテーブルであった。


「はぁーい!」


 歩いていこうとすると。


ガタガタガタッ!


 座っていた軍人が全て立ち上がり敬礼する。


「おいおい。こんなとこで敬礼はいいって! 酒を楽しめ! しょうがねぇ! 今日はみんな俺の奢りだぁ!」


「「「「「おおぉおぉぉぉ!」」」」」


「ガッハッハッハッ!」


 こういう豪快な所がみんなを引きつけるんでしょうね。ローガンの周りは皆忠誠を誓った人が多いわ。

 だから、スパイが居るとは考えづらいのよねぇ。慎重に進めないとローガンの忠誠も揺らいでしまう。


「「「「カンパーイ!」」」」


「元帥は、なんでエマちゃんと一緒なんですか? エマちゃん、このチョコ食べる?」


「あら、ありがと!」


「元帥ー。ご馳走になります! エマちゃん、このケーキ食べない?」


「わぁー! 美味しそう!」


「大将も居るなんて珍しいっすねぇ! エマちゃん、このパフェどうっすか?」


「パフェ!? だーい好き!」


 ローガンの頬がヒクヒクしている。


「お前達俺に挨拶する口実でエマに話しかけに来てるじゃねぇかよぉぉ! ふざけんなおまえらぁぁ!」


「うぉぉぉ! 元帥がお怒りだぁぁ!」


「すみません! 勘弁してください!」


「あっ! エールどうぞっス!」


 兵士がローガンのジョッキに注ぐ。


「おう! グビッグビッグビッ……かぁぁー!」


「よっ! 流石! いい飲みっぷり!」


「お前らも飲め飲めー」


 単純ねぇ。

 すーぐに機嫌が良くなって。

 ま、それもいいんでしょうけどねぇ。


「(ボソッ)エマさん、そのキャラ疲れません?」


 ソフィアが不思議に思ったのだろう。聞いてきた。

 

「(ボソッ)もう慣れたのよねぇ」


「このパフェ美味しぃー! ありがとー!」


「おぉぉぉ! エマちゃんが喜んでくれたッス! やったッス!」


 はしゃいでいる。


 ふふふっ。

 可愛いわねぇ。

 猫の被りがいがあるわ。


「ふふふっ」


 笑って男達を眺めていると。


「あぁ。エマさんが妖艶に笑っている。小悪魔だ」


「何!? 悪魔だと!?」


 ローガンが騒ぎ出した。


「ウインドバインド」


 空気で締め付ける。


「な、何をする」


「ローガンさん! メッ! ですよ?」


 めっ!を強調することで男達がメロメロになる。男って単純よねぇ。


「ぐぬぬぬぬ。悪魔はどこだぁぁ!」


「ローガン、悪魔はこの世には居ないわよ。迷信。わかった?」


「あぁ? そうなのか」


 発作は収まったようだ。


「爺さん、頼むから黙って飲んでろよぉ!」


 今度はローガンにガイエンが絡んでいく。

 よほど溜まっていたのだろう。

 肩を組んで飲んでいる。


「調子に乗るでない!」


 ゴンッと拳骨を落とされて床に伸びる。


 うわぁ。やっぱり馬鹿力ねぇ。

 この筋肉ダルマの近くにいたくないわ。


 密かに距離をとる。

 すると、他の席に近くなってしまい。


「あっ! エマちゃん! これ食べてみない?」


「ん? これなに?」


「カエルの丸焼き」


 皿にはカエルがそのまま焼かれて手足を開いている姿だった。


「キャーーーッ!」


 即座にその男を離れ、ローガンにしがみついてしまった。


「エマさん、大丈夫!?」


 ソフィアが心配して駆けつけてくれる。

 目をギュッと瞑っているとそっと両肩に手が置かれた。

 

「エマさん!?」


 ゆっくり目を開けるとソフィアがいる。

 思わず抱きついてしまった。


「うぅぅ。カエル気持ち悪いぃぃ」


 目に涙をためて訴える。


 すると、それを聞いたローガンは先程のカエルの丸焼きを見せた男の所へ行き、ゲンコツをお見舞した。


「ったく! エマをこんなに怖がらせおって!」


 フンッと言って座るとまた酒を飲み出した。

 それを見た軍人達は思ったのだった。


 (エマちゃんが何故そんなに元帥から守られているのか気になる……隠し子?)


 年齢的にそう思う者も居るだろう。

 本当に娘かのように可愛がっているのだから。


「エマさん、ほら、パフェ食べましょ?」


 パフェが目の前に出されるとそれを掴みパクッとひと口食べる。


「んーー。おいひぃー」


 顔が緩くなってしまう。


 それを見ていた周りの軍人たちは更に顔が緩くなり、中には花を抑えている者もいる。


 (あぁ……エマちゃん……可愛すぎるぅ)


 これが皆の心の声であった。


 パクパク食べていると、目の前に色々な甘い物が置かれる。


「エマちゃん、このケーキ食べて元気だして?」


「パクッ。美味しぃ!」


「エマちゃん、このフィナンシェ美味しいんだよ! 食べてみない?」


「パクッ。外はサクサク中はしっとりあまーい! おいしーい!」

 

「エマちゃん、このチーズケーキ食べてみて! 美味しいんだよ?」


「パクッ。うーーん! チーズの味が濃厚で美味しい!」


 上げた人、見てる人、皆の顔が緩くなり癒されていく。


 ローガンは子の光景を見て思ったのだった。


 (この子は人を引きつけるんだな。こんなにも周りに人が集まるとは。やはり、あの婆さんの目に狂いは無かった訳だ)


 この店は最早エマの独壇場であった。

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