9.『またね!』
買い物を終え、着替えたククルを見たいという僕の欲望のためだけに、宿屋に戻ってきた僕達。
だってしょうがない、ククルが可愛すぎるのが悪い。
「じゃ、着替えてきますね!」
「手伝おうか?」
「ダメです!待っててください。」
買ってきた服と僕のワイシャツを持ち、ククルが上機嫌で脱衣場に向かうのを見送る。
程なくして戻ってきたククルは、想像以上に可愛かった。
「どうでしょう?似合ってますか?」
ククルがその場で回ると、スカートがふわりと揺れた。
「ククル、ちょっと動かないでいて。」
「はい?」
ククルのスカートを捲る。
チラリと覗く白い下着。
「なっ、なんでそういう事するんですか!?」
「ククル、最高に似合ってる!」
「うぅー。ありがとうございますぅ…。」
スカートを抑えて真っ赤になるククル、最高に可愛いよ!
「もぅ…。外ではスカート捲らないでくださいね?」
「家の中ならいいの?」
「………だって、せっかくレイ様の好みの下着なんですから…。レイ様が喜ぶなら、その…。」
お許しが出た。
両手でガバっと捲って、白い下着を露わにする。
「……レイ様のエッチ。」
更に真っ赤な顔で、それでも耐えているククル。
……さすがに意地悪しすぎたな。
「ごめんね。ククルみたいな可愛い婚約者ができて、舞い上がってたよ。少し自重するね。」
「………あの、私も求められるのは嫌じゃないというか、嬉しいというか…んッ……」
あまりに可愛かったので、思わずキスしてしまった。
「さて、走って汗をかいたから、お風呂入ってくるよ。」
「じゃあ、またお身体を洗わせていただきますね!」
「いや、我慢できなくなっちゃうから。」
苦笑いして一人で入ろうとするが、ククルは譲らなかった。
「レイ様?私、まだ全然甘えてないんですけど?お風呂で甘えさせてくださいね。」
…そういえば、約束してたね。
忘れてたけど、それはそれで楽しみだな。
ククルがワイシャツを脱ぐのを見ながら、ふと思った。
付き合い始めの恋人同士って、みんなこんな感じなのだろうか?
普通がわからない僕達に、考えても答えなんて出ない。
僕もククルも、ずっと1人で過ごしてきた。
そのため、初めて自分を求めてくれた相手への依存度が高すぎるのかもしれない。
これから先、僕がククルを裏切ることがあったなら、きっとククルは壊れてしまう。
きっと、その逆も…。
なら、死ぬまで僕はククルを愛し続けよう。
ククルが僕を裏切ることなんてありえないのだから。
お風呂で、そしてベッドでククルを求め、ククルも僕を求めた。
「甘え足りたかな?」
「お腹いっぱいです。レイ様は足りました?」
「足りない。まだククルが欲しい。」
「フフフ、私ばかり甘えちゃいましたからね。私もお返しします。」
ククルから濃厚なキスを受け、それに応える。
身体中がとろけるような快感に身を委ね、僕達はベッドで抱き合った。
「子供ができたら、どうします?」
心地良い達成感の中、不意にククルが問いかけた。
「えっ?凄く可愛がると思う。パパがママを凄く愛しているから、君は生まれたんだよって教える。変かな?」
「………堕ろせって、言わないんですか?」
「言わないよ!?……ククルは子供が嫌い?」
「……いえ。レイ様の子供、欲しいです。」
「僕も、ククルとの子供欲しいよ。」
「……私は奴隷です。奴隷は人じゃないので、子供も物なんです。普通、奴隷の子供は、奴隷として売られます……。堕ろせば、悲しい思いをする子供はいなくなります……。」
………そういうことか。
「ククル、君も生まれた子供も、僕は奴隷としては扱わないよ。いっぱい愛してあげて、甘えさせてあげて、僕達の子供で良かったって誇れるよう大切に育てたい。」
「……じゃあ、授かったら産んでもいいんですか?私達で育てていいんですか?」
「ボクの子供だから、エッチな子供になっちゃうかも。それでもいい?」
ククルに微笑みかけると、ククルも涙を流しながら微笑みを返してくれた。
「レイ様、愛してます。」
「ククル、愛してるよ。」
二人で交わす誓いのキス。
幸せな気持ちに包まれ、僕達は互いの体温を感じながら眠りについた。
夜中に、ふと目が覚めた。
隣で眠るククルに軽くキスをして、幸せな気持ちに浸る。
そうだ、両親にメールを送ろう。
何も説明できずにこちらの世界にきたから、きっと心を痛めているだろう。
今更だが、僕はイジメを受けていたこと。
僕が死んだ理由は、自殺ではなく神様に関連した事故だったこと。
神様からの謝罪として、違う世界で元気に生きていること。
大事な人ができたこと。
とても両親に感謝していること。
ククルとのツーショットを添付して送信しようとしたときに、自分が涙を流していることに気付いた。
会えなくて寂しいし不安もあるけど、とても大切な人ができた。
大丈夫、もう僕は一人じゃないよ。
メールの最後に、『またね!』と付け加えてメールを送信した。
いつか生まれ変わる時がくるとしたら、僕はまた二人の子供として生まれたい。
その時まで、『またね!』。
不意に僕の頭に腕が回された。
ククルは僕の頭を抱き寄せ、額にキスをした。
「暖かいです…。」
ククルには敵わないなぁ、と苦笑しつつ、僕は再び眠りに落ちた。
翌朝、肌寒さに目が覚めると、ククルが布団を捲って全裸の僕をニマニマと観察していた。
………やられた。
「見たかったの?どうぞ、じっくり見てね!」
少し恥ずかしいのを我慢して、朝なのでアレがアレなのを見せつける。
「や、ちょ、仕返しで、見たいわけでは、いえ、なくはなくて…。」
動揺したククルを抱きしめる。
「ククル、おはよ。」
「…レイ様、おはようございます。」
抱き合ったまま、二人で笑いあった。
「ククル、ご飯食べに行こうか!」
「はい!レイ様となら、どこへでも!」