ちゃんとやろう、シナリオ通りに
「ああ、確定しちゃった。じゃあしょうがないか」
「え?」
「あのねえ? ここは、ゲームの世界なわけ。本当に存在する異世界でもなんでもなく、システムの中」
ここに転生した人はまず驚く。ゲームの世界そのままだ、と。しかし何故か、ゲームの世界を基準にした「異世界に来てしまった」と認識がすり替わるのだ。
違う。ゲームの中なんだよ、あくまでも。ここは、ゲーム。
【エラーが見つかりました。デバックしてください】
そんな表示が「エリシア」の前に現れる。彼女はわけがわからずその表示を見て、私を見るという動作を繰り返していたが。
「え、なに。え? い、痛い!? いぃぃいい!?」
突然「エリシア」が自分を抱きしめるように腕で体を包み込みしゃがみこんだ。いや、崩れ落ちたというべきかな。思い切りしりもちをついている。
「エリシアには選択肢が用意されてるし、シナリオだって決まったものがちゃんとある。それを無視して自分の都合の良いようにやっていいわけないじゃん」
「なに? 何言って……痛い痛い痛い! いやあ、何これえ!?」
「ゲームのシステムにない事が起きたら、それ、バグでしょ?」
「ぎゃああああああああ!!」
ブツン。
電源を落とすような音と同時に、「エリシア」が粉々になって消えた。
ま、ゲームにない事言っちゃった私も対象だけどね。もう確定しちゃったからいいかなって。
あいててて、相変わらず痛いなデータが粉々になる感覚は。
全身がバラバラになるようで痛い。これも、何回目だっけな。もう慣れたけど。
世界が暗転する。
また、ゲームの開始時に戻される。
どういうわけか、「エリシア」は毎回毎回違う転生者が中の人となって収まる。皆驚き、嬉しがり、生き延びるために必死で抗おうとする。こちらがどれだけ忠告しても聞きゃしないのでもうアドバイスはやめた。
ゲームにない言動をすれば当然エラーだ。デバックされるに決まってる。そうしてきれいに処理されて、また「エリシア」が学園に入学するところからやり直しだ。
毎回違う人が来るせいで、それぞれ誰推しなのか分からず毎回展開が変わるのがすっごいめんどくさい。
うとうとしていたところをそっと起こされる「エリステル」。
「……ん? あれ?」
きょろきょろと辺りを見渡し、周囲を、自分の格好を見て驚いている。
「いかがなさいました? エリステル様」
あ~、なるほどね。今回は「エリステル」が転生者か。「エリステル」が私の顔を見てびっくりした表情となる。
「え? ええ? オ、オリン、なの……?」
「はい」
それしか言わない。結構難しいんだよ、ゲームに影響出ない程度の会話の変更って。オリンはクールキャラだという設定だから、これくらいはまあいいだろう。細かくいろいろ聞いたりしない方がオリンっぽい。具合でも悪いんですか、くらいは聞いてもよかったかな?
「エリステル」が転生者なのは久しぶりだ、十回くらい前だったかな。だいたいいつも「エリシア」が転生者なのでハチャメチャ好き勝手やって結局自滅してまたやり直しだ。おかげで生きてる時は数回やった程度だったこのゲームを何十回とやる羽目にあっている。
「エリステル」に転生した人の行動パターンは全員一緒。他人をいじめることを嫌がり、「エリシア」や他の仲間と協力して仲良しこよしで平和にいろいろ立ち向かおうとする。
「あ、ええっと。オリン、今日入学する女の子ってどんな子?」
それ、「エリステル」から聞くのNGだからね。顔合わせイベント直前まで「エリシア」の事知らないはずだから。
「エリシアという女性です。優秀な人材とのことで時季外れの入学が認められました」
「そう。ちょっと挨拶に行こうかしら」
そうやって、エリシアと仲良くなるためににこやかに近づく、びっくりするほど皆一緒。遠くに「エリシア」を見つけ、嬉しそうに駆け寄っていく「エリステル」を見送る。
「エリステル」の行動は何かのテンプレかと言いたくなるくらい本当に同じだな。
本当、馬鹿。
「エリステル」は遠くで「エリシア」と何やら会話をして、首を絞められた鶏みたいな悲鳴を上げ、粉々になって消えた。初対面の大事なイベントを捻じ曲げたらそりゃそうなるわ。
ああ、またやり直しか。ま、「エリステル」の時は速攻こうなるの分かってるからもうジタバタしないことにしたんだけど。
ゲームなんだからさ。
皆、与えられた役割をシナリオ通りにやってよ。何都合よく自分好みに変えようとするんだよ、迷惑な。
このゲームそういう話じゃないんだから。
ブツン。
END




