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ああ、やっちゃったね

 「エリシア」が選択肢や展開をすっ飛ばして次の展開を早く得ようとするのは当然だ。このゲーム、時間管理がかなりシビアなのだ。各キャラルートは同時進行でいろいろなキャラルートが発生し、どれを選んだかによってどのキャラルートになるかも決まるが、この世界の運命も決まると言える。

 国の暗躍は「エリシア」の命に関わり、バッドエンドになると処刑だ。魔獣の話では「エリシア」は魔獣と同化してしまうか、魔獣に食われるか。制御できるかはランダム要素も関わる。戦争については言わずもがな。聖女としてまつりあげられ、どんどん死者が増えることに心を痛めたり戦闘が失敗したら「エリシア」のせいだと断罪が始まってしまう。


 キャラとくっついてハッピーエンド、だけでは終われない。そのキャラルートに入っても国を救う展開に進まなければいけないのだ。その判定が実にシビア。普通の乙女ゲーは割と時系列順にイベントが出るが、さっきも言った通り複数個のイベントが同時に出て、すべて回収するのはイベント期間内に間に合わない設計になっている。

 誰かと約束しておいて別のイベントに顔出したら約束時間に間に合わないということも多い。それがガチャのようにランダム要素で出るもんで、難易度が高いのだ。

 確実に消化しておけるイベントは早め早めに消化しようとする。それはまあ、ゲームの展開知ってたら当たり前だ。今も「エリシア」は攻略キャラ二人に話しかけている。そこは一人だけのはずでしょ。


”ブツン”


 今日もまた、「エリシア」がゲームにない行動を起こしている。「エリステル」の嫌がらせの証拠を、夜のうちに確保しておいて翌日全校生徒発表会の時にそれを証明しようとしているのだろう。夜の生徒会室に忍び込み、ガサガサと棚を漁っている。鍵がかかってないことに疑問を感じなかったのだろうか。


「何してるの?」


 私が声をかけると、「エリシア」はびくりと体を震わせる。見つかった、と焦っているのがわかる。月明りの中でよくもまあ頑張ったものだ。見つからないためにランタンが使えないから仕方ないけど。


「ど、どうして……」

「今ここに、貴方がいるの、って? ネズミがこそこそしてたらわかるでしょ普通。怪しすぎるし」


 こんなのゲームにない展開だと焦っているらしい。それ、アンタが今までやってきた言動にも当てはまるんだけどね。自分はやられると焦るわけか、馬鹿じゃないの。


「勝手にこの部屋に忍び込んで盗みとは。退学処分を覚悟した、たいした行動――」

「違うの!」


 人がしゃべってる途中だというのに遮ってくるかね。ちゃんと最後まで聞きなさい。


「このままじゃ戦争になっちゃうの! 今はまだそんな事ないけど、他国と通じていても利用されているだけ! この国の究極魔法が欲しいだけなの、ドリマージュ国は!」

「知ってる」


 私の言葉に「エリシア」は目を丸くした。え、と呆けている。いや察し悪いな、考えるな、感じろ。フィーリング! 私も同じだってばよ。ゲームやってないと分からん情報を知ってるなら同じ境遇よ。

 このままいけば「エリシア」は退学エンド。これはこのゲームの一番初めに出るバッドエンドでクソつまんないやつ。あっさり「弁明を聞き入れてもらえず退学となった」で終わってしまう。それでよくない?


「なん、で……? どうして」


 え~、わかんない? ここまで来てわかんないんですか! マジ? ちょっと鈍すぎない? ようっし、じゃあ特大の爆弾投下しちゃうぞお。


「あなたと同じ」

「あ……まさか、貴方も転生者!?」


 そうそう。そうなんだけど、口には出さない。何でかって、そりゃあやっちゃいかんでしょうよ。


「じゃあ協力して! 私、キャラ攻略には興味ないの。この国が滅亡の道に進むのをどうにかしたいの! このままじゃこの国滅ぼされちゃう、知ってるでしょ!?」


 彼女の言葉に私は無言のまま。たぶん表情も無表情かな。私が何も反応を示さないことに焦れたのか、「エリシア」はさらに語る。


「このペースだとフリックルートに行くと思う、それだとぎりぎり魔獣の封印は間に合うけど、戦争回避が間に合わない。ゲームでは選択肢選んでたった一つのエンディングを目指すけど、ここでは他のルートの魔獣ルートや戦争ルートも同時に進んでるのよ。魔獣封印できても戦争が回避できないんじゃ……」

「知ってる」


私の言葉に「エリシア」は目を丸くした。理解できないんだろうな。


「だったらどうして!? この理不尽な世界を変えないと、貴方死ぬかもしれないんだよ!?」


ブツブツ ブツブツ キィィィィッ


 マイク音量を大にして起きるハウリングのような音が鳴り始める。それは「エリシア」にも聞こえたようで、きょろきょろと辺りを見渡した。


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