塔
守護者からの『星海祭』の火付け人としての宣言を受けてからいつの間にか一日が経ってしまった。時間というのは一瞬に過ぎてしまうので有名だと聞くがこんなに早いとは思いもしなかった、それはそれとして吹き飛ばされた後のアウェルを介抱して大丈夫そうになってから『星海祭』の準備の為に色々と勤しんでいた。
取り敢えずアウェルが気を失っていた間にマディーさん達と出来る限りの情報共有した後グリエさんが転移魔法を多用してまだ三つも残っている海底都市の中で会っていないイプロとルウェーに死累人、オルフィット含む『アルチャー』との合流と人質として連れ去られてしまったイリューフさんが残した『星海祭』に必要となってくる運搬の手伝いといないと思うが魔物からの護衛を目的として動くのだそう。それぞれやることが多くて頭を悩ましている感じだったが『海の王』という絶対的な存在から下される制裁という大きな言葉が強くのしかかっている縛りのせいでテキパキと行動しなければならないということになってしまう。
今もアウェルが必要とする魔力回復用の魔導書などがズラリと並んでいる店に入ったのだが自分が想像魔法で組み立てている魔法構築ほどではないのだがかなり作り込められた魔導書が本棚に並んでいた。
これだけの物なら買おうと思ったが残念ながらお金がないので見送りとするがシグマリがいたら変わっていたんだろうな…目の前でぴょんぴょん跳ねた後に反応に困るぐらいの笑顔でこっちを見てくるのだと思うとその時の自分は多分苦笑しているだろう。
地上では賞金狩りが数人囲んでやっと狩ることができるあの蟷螂共の殻をアルチャーを経由して売り捌いて大金を持っているがここでは何があろうと無一文だからそんなことをされてもシグマリには勝って与えることは無理だろうな。
「それにしてもこんなにも魔導書見開きに全体に緻密な魔法陣なんて結構な労力がかかっているから結構良い値するんじゃないか?と思ったが破格の値段で売っているのだが…」
「海底都市に住まう我々は大体の職という名の趣味みたいなものとして捉えていてお金については毎回上の方から大量に支給されているからそこまで高いというわけでもないし文献で知った事なんだが大陸に存在すると言われている魔物すらいないものだから戦闘すらない我々にとってはあまり使い所無いな」
「へぇ…それぞれの魚人族の生活リズムとかは丸っ切り変わってる可能性があるって事だよな」
「あぁ、その解釈で構わない」
本棚から取り出した小綺麗な魔導書の中身をペラペラと捲ってみれば代行して利用する為に回路を二重に重ねているような書き方をしているものがあるし興味深いところもある。その点では言えば趣味として作られる者ではないと自分は思っているのだが自分は間違ってはいないだろうか不安になってくるな。この本棚の前に立って本を広げる前の何も知らない自分に教えてあげたいくらいだわ。
「しかし…そもそもの魚人族の魔力はアウェルが魔法瓶等の補給が無いとあまり多用するのが難しい印象だけどここまで複雑になると誰が使うんだ?」
アウェルと話をしながらもいくつか魔導書を持っていって会計を済ませに行ったのだが再度考えてみると趣味でここまで出来るってかなりのものだよな…他の趣味と言っても戦闘に関わるような物でなければ大体海底都市のどこかしらにあるということにもある。
もう少し時間があるのならもっと色々と回ってみたいのだが状況が状況で気を抜くなんてことができないのだが…会計に時間がかかっているアウェルを見て先に店から出て見ればさっきまでは見えなかったが遠くの方に高い建造物が見えた。あれが守護者がいる塔だと思うのだが何故さっきまで見えなかったのが不思議なものだ。
あれほど周辺を回っていたとしても大通りに出れば確実に視界に入ってくるような大きさなのに意識に入ってこなかったのはあまりにも不自然すぎる。守護者の襲撃の際にはグリエさんが領域魔法なんていう大層な代物で一つの海底都市を覆うほどの効力だった別行動しているシグマリから聞いたしそれに近いのが永続的にあるとなるととんでもないな…
「なんでこんな所で止まっているんだ…?そうか塔が見えるようになったのかなら納得できるがそこで止まっていると他の者に迷惑だからな」
「すまん、結構見えるような場所に立っているのに見逃していただなんておかしいからどういうことか分からなくて魔法か物理的に狂わしてるかのどっちか考えていた所だった」
そのまま遠くの方を見ていると会計を済ませて店から出てきたアウェルは店前で止まっていた自分の事を不思議そうな目で見ていたがすぐに察してくれたお陰で助かった、アウェルは次にその遠くにある塔に向かうことに決めて足を進めた。
塔を見た時のアウェルは何やら重い表情をしていたがそんな堅苦しい表情は一瞬で切り替わり自分が見るいつもの顔に戻っていたのだがどうしたのだろうか…聞きたいところだが帰ってくる返答次第で気まずくなる可能性があるのでやめておいた。
塔と言われて思い浮かべるものと言えば見上げてしまう程の高さで尚且つ大量の人が入るような形を頭の中で想像するのが定石だろう、斯くして自分も同じだった。そんな自分の常識を覆すような建造物を目の当たりにして自分は初めに馬鹿げているとしか頭の中に残っていなかった。
先程遠くから見た時には周りに建てられた建造物を紛れもなく越すようにして見せていたのかもしれない。別に自分の思っているような物がそのまま出てくるなんてことなんて今まで続いたなんていうことは一回もないし逆に面白い意味で何度も裏切られているからそこまで感じていなかったが今回も今回だな…見てて楽しいから自分はいいけど
「まさか近くに来ればあんなにデカデカとした構造を見せつけておいて逆に人が二人…いや一応三人は入るようで入らないような微妙な空洞があるっぽいけどそこらの建物よりも高いなんてどう見ても内装がハリボテにしか考えられない…だったらこれはもう柱っていう割り切った解釈でも良いのか?」
「確かに私も入ったことはないが今まで担ってきた先代達はこのハリボテの中に入ってどうにかして火付け人の役割をしていたんだろうな…それにしてもいつ見ても遠くから見ると巨大に見えてしまう所と柱に見えるのにはジェバルと同意見だ」
ここからだとどこまでも高く聳え立つ塔をずっと見ていたのだが何も変わらない塔を見続けるのはできないのでアウェルに声を掛けて残った時間を最大限利用する為に海底都市キードゥにある共同書物庫と称されている場所に向かうにした。
共同書物庫についてアウェルが歩きながらだが教えてくれたのだがアウェルにとって膨大すぎる知識が山積みになっているような場所らしく自分以外の魚人族だったらそこまで使うことはないらしいのだが逆にそこから得られる情報はどれも実用的だったと言ってた。となるとそこから拾った情報を自分に横流ししてくれていた可能性もあると言う訳なのかもしれないが実際に行ってみれば分かることか
ジェバルと吹き飛ばされた魚人族がキードゥに残って色々すると聞きシグマリとグリエから情報共有をしてから間を空けて離れ離れになっているシグマリの姉であるイプロルン、それに『アルチャー』とかいう大きな団体の合流をすることになった。私からしては途中で切られてしまった話の続きをジェバルと一緒にしたいのが一番だが周りとは違う行動をするのは不自然すぎるからしょうがなく諦めたが次はないようにしたい。
ジェバルと別れてから海底都市キードゥからグリエの転移魔法を使って数回転移してシグマリとグリエと私は『星海祭』で必要になる物資の運搬作業の手伝いに向かっているのだが…グリエは出会って間もないというのに平然とコンタクトを取っているのだがシグマリの隣にピッタリとくっついて話をしているのを転移をしてからもずっとそんな感じなのだが気が合うようでずっと魔法のことについて話している。
「急に起こったあの騒動で外が気になって酒場から出て戻ってくる一瞬で中にいたイリューフさんを守護者が攫った後に人質に仕立て上げた挙句私でも苦手とする領域魔法を展開するようなことを言われればあれはしょうがないよね?」
「グリエさんって難解魔法の一種に入る領域魔法が使えるんですか?あれって習得するのにも時間がかかるし結界を張るために魔力の均等を永遠と意識づけないとあれってできないじゃ無いでしたっけ」
「シグマリちゃんはよく知っているねー確かにあれは魔力を均等にするって言うのも重要なんだけど重要なのはどれだけ魔力を少なくして強力な物にするって言うのが私個人の一番なんだよね。私はそういう体だから応用とかになると少し手こずるから最後は努力がものを言うんだけどね」
「なるほど!勉強になります!」
一通りの会話をずっと聞いているがグリエの言葉には見抜けないような嘘が張り巡らされていてそもそも領域魔法なんてなんの苦もなく使っているのをここ海底都市に来る際に平然と扱っているのを見ているし魚人族のイリューフが人質に取られた際での魔法の展開に関してはジェバルが見せてくれた【深海】の時と同等の速さだった気がする。
目の前では仲睦まじく会話をしている二人が目に映っているというのにシグマリという純粋すぎる子が可哀想に見えてくる…そんな後ろ姿を見ながら街の中を歩いているのだが外見が違うという理由もあるのかもしれないが周りからの少し目線が気になる…
「マディーちゃんは周りからの目線が気になると思うけど苛ついて斬りかかっちゃったら駄目だからね?こんなことで神経使っていると疲れちゃうし私達もお祭りに参加することの方が正直言って大変だから、準備とか諸々のことは私が全部やっておくから安心してね」
嫌味を言うような事を言う割には緊急時のことは心配させないために色々と手を回しているのには想像外な回答が返ってくるとどう反応すればいいのやら…軽く話を聞き流しつつ足を進めていくと大通りの奥の方に列を成している並んでいる数々の荷台が見えた。それを見たグリエはシグマリとの話を一旦終わらせた後そそくさと先に行ってしまった。
実はグリエよりも働いている人がいたり…




