いつしか開拓された道に後から来る者も同じ事をするだろう:中
少し時をジェバルが影と一緒に火山の下に降り立つぐらいに戻して三匹の猫達に視点を移す。
「ジェバルさん!!」
「妹君!こちらの事に集中しなければ我々の身に危険が及ぶことになる!それにジェバル殿だったら何とかあの不可思議で何をするか分からない流体生物を倒すか身動きをしないようにするとか何とかしてくれ筈です…まずはこちらの方を止めなくてはいけない!」
「イオルンドの言った通りだ…兄ちゃんならあの影は何とかしてくれるはずだからこっちに集中して欲しいのは事実に近いのだが…ここまで強いなんてな…」
見た感じ機動力なんて存在せずただ宙に浮いてこちらに毒玉を吐いて牽制だけをするようなやつだからそこまで警戒をしなくていいなんて思っていた数分前の自分を殴りたい。
手に持つ斧を握り締めて隣で懸命に攻撃を相殺してくれているイオルンドの側に駆け寄り触手のように蔓延る波を跳ね返して軌道をずらして触手の根元に移動して魔力を筋力に変換しつつ断ち切る。
触れてしまったら重度の毒にかかってしまいそうなそんな自分の生命線の一つである『物質鑑定』が危険なものであると警報を鳴り響いている。
精霊達が俺とイオルンドに随時回復魔法や強化魔法を唱えて援助してくれているのだがここまで追い詰められてしまうなんてな…今も動き続けるなんて生命力さえも普通の魔物よりも超越しているだろう。
兄ちゃんに手伝ってもらいたいところなんだがここで踏ん張らなかったら誰がこいつを持たせてくれるのだろうか…隣で相手の分析をしているイオルンドに近寄って肩の部分に指を刺して合図を送る
「「“猫灼魔術”【天体観測】」」
二人の魔法のお陰で視界がどんどんと広がっていき先程まで見えていた二倍以上は見えるようになった。改めて海闊天空の暴蟲を見ると溶岩から這い出て来る歪すぎる姿が徐々に露わになっていた。
両翼は溶岩に浸かっていたせいかまだ半分が溶けている状態になっているのか、まだ完全に羽が乾き切っていないからなのか、自分が知る由もなかった。
それよりも、口から垂れている口吻は二つに分かれて先程断ち切った触手のように変わってこちらに向けて来たり完全に機能していないだろう両翼からどういう理屈で舞い始めたのか分からない鱗粉は麻痺や眠気を誘うようなもので非常に厄介だ。
イオルンドは毎回その被害を全身に浴びて行動すら困難だというのに全然疲れなんて見せずに動いて見せている。
「さっきジェスチャーした通りだ、後は絶対に空中に紛れ込んでいる毒玉には当たるな」
「兄者よ…私の特徴とも言えることの中に空間認識能力が飛び抜けて高いことをお忘れですか?もっと使いこなせれば次来る攻撃さえも分かるというのに…今は関係はないですね【剣鬼刀:星屑】」
こんな状況で次の攻撃がわかるなんていう夢みたいなことを言っているんじゃない…蝶がこちらに大量の毒玉と共に放たれる鱗粉がフワリと舞うように動くのだが魔力の動きを感じて身構えた時には鱗粉全体に火が灯されていた。
すぐに斧を横に振って人工的に風を起こして鱗粉がこちらに来ないようにする。イオルンドは鱗粉が無い道を器用に走っていき跳躍と同時に水魔法を辺りに巻いたと思ったら風魔法で蝶の元に移動して何度も斬りつけていった、いつ反撃をするか分からないがすぐに斧を地面に叩きつけて体を宙に飛ばしてすぐに引き抜く。
精霊達が残った鱗片を吹き飛ばして追い風のお陰で自分自身をどんどんと加速させてくれる、体に流れる魔力の流れがどんどんと回っていきこれ以上ないってくらい入り込む程の物だった、風の流れに身を任せて先頭で無心になりつつも攻撃に当たらないように動いているイオルンドの後ろ姿を見る
「なんでイオルンドの奴がなんで世界から剣鬼なんていう大層な称号を送られた意味がやっと分かった気がしたな、やっぱり覚悟で決まるもんなだろうか…それよりも毒から生えてくる植物みたいなのを片付けて貢献しておかないとな」
毒玉が自分の顔スレスレを通り過ぎて地面に着地するとそこから生命を宿したように赤黒い木が成長してこちらに枝を伸ばしてくるが斧に魔力を通して根元まで届くまでの斬撃を飛ばして断ち切っておく。
横から飛んできているのに対処できずに壁にぶつかってしまったが精霊達が危険察知して体を起こしてくれた、枝には触れても毒は無いという事が分かればその分楽に行動ができるということだ。
足に魔力を回して壁を踏み締めて飛び込んでくる見えている範囲ではビッシリと絡まっている枝達が餌に群がる獣のように飛び交っていく
「【破錠撃】…ヌンッ!」
勢いよく振られた斧にぶつかった枝が他の枝に振動を伝えていってどんどんと朽ち果てていった。【破錠撃】の効果は名前から想像できるように必ず存在する綻びを強制的に攻撃を当てた部位に移動させるという効果を持っていて例え全身にプレートアーマーのような頑丈そうな造りをしていても無意味になる。
枝も必死に生き残るために接ぎ木の行動をとりつつ生命を保ちつつこちらに鋭利のある先端をこちらに飛ばして攻撃をして来たのだが【破錠撃】の反動で身動きができなくなっているところでの攻撃は防ぎようがなかったのだが自分の周りに炎が展開された
「私が…守る!精霊ちゃん達お兄ちゃんに危害が巡る際には補助としての風魔法と炎魔法の展開をしつつ足場を増やすために地魔法を利用して身動きが取りやすいようにしてください!」
「助かったシグマリ!そのままお前は後ろに下がりつつ俺とイオルンドに援助魔法を掛けてくれ!」
援助魔法がすぐに体に入り込み体の動きが楽になり鉛のように重かった体が動き始める、斧を力一杯地面に投げ込んですぐにそこら一帯の植物を根耕しにする。これくらいやっておけば大丈夫か?そう思いながら遠くで閃光を生み出す一人の弟とそのスピード以上の加速をしながら攻撃をしている蝶を遠目で見る
体スレスレに通り過ぎる鱗粉と目に見えないほど微小な毒玉がそこら中に蔓延しているのだが自分の『空間察知』が常時動く時が来るなんて思っていなかった、前に一番動いていた時は剣流の里で唯一剣豪に成った者と戦った時ぐらいだと思う。
それに動きが早くなっていく中でも目の前で踊るように、戦いを楽しむように…どんな心境で動いているのか分からないのだが生きる為にはどんな犠牲を払おうと生きようと思っているのが攻撃を与えたり与えられたりしている中で感じられる
「主は…この戦いが終わったらどうするつもりなのだろうか?」
『Pyaaaaaaa!!!』
「こんなことを喋りかけても元々話が通じているという訳では無いからな…こちらとしても引けない理由があるので覚悟をして欲しい…【剣鬼刀:流星群】」
流れ星を象るような連続して永久性のある剣撃が空中に舞っている鱗粉を溶かして進んでいき蝶のすぐ側まで近づいたと思ったのに体を貫通して通り過ぎていったのだ。
不自然すぎること驚いて足を止めてしまいその晒してしまった隙を狙うように攻撃をして来ると思ったのに後ろに下がって距離を取り始めたのである。全く攻撃をする様子がなくただ何かを待つようだった
「イオルンド、そいつは今は動かない!一旦後ろに下がるぞ…じゃないと兄ちゃんと影の戦いに巻き込まれるぞ!」
兄者の言葉で止まっていた体が動いて天井から降り注ぐ真っ黒な雷が降ったと思ったらそこにはジェバル殿が片手で大剣と槍を手に持っていた…すぐに壁を蹴り込んで目に見えないほどの速さで竜に何度もぶつかり合っていたのを見た。
「何あれ」
槍には槍の長所があり剣には剣特有の長所がある。それもまた他の物もそうなのだが何かが得意であれば必然的に逆の事ができないということが発生するはずだ。自分は何の問題もなくあらゆる物を大抵器用に動かす事ができる、自分が前の世界で何かやっていた訳でもなくこの世界で自然と体に身についていた物であったのだ。
相手の動きから予測して動くことは難しいことだが慣れれば然程難しくはないはずなのだが…技量が自分と近い敵と接敵してしまった場合どう対処すればいいのか…自分の持論になってしまうのだが“ヒットアンドアウェー”が最適解だと思う、今は自分のターン相手のターンと区切りよく動いている中で相殺などが起こると必ず一瞬誰のターンではないところが生まれるそれをフリーゾーンと呼んでいる。
フリーゾーンでの主導権は必ず椅子取りゲームのように争奪戦が起きるはずなのだがそれをしようとしないやつがいた…
「本当にこの竜の姿をしている影は戦いの最中に考え事なんかしているのか?攻撃を連続してやっているっていうのに全く攻撃が入っているように感じられない!」
『Guraaaaa!!この全てが見渡せるような超越感こそが竜としての本能だと言うのならそれを捨てて戦いという物だけに自分は欲張ろうじゃないか、それに溢れる魔力はすぐに貴方を…敵を殺す為の糧にしましょう!』
ずっと敵のターン…そんな言葉が頭に横切るような状況だ。こんなにも主導権を受け渡さずに体張って動いていられるのは指名である“子守”からきている物なのか?よく分からないけどこれ以上相手の思うように動かされるのは御免だからな…
相手には負としてもうⅢぐらいにはなっているはずだし表面上の問題ではなく内面的な効果になっているはずだ…実際に負を受けた訳じゃないからどうなっているかなんて分からないからそこの所は手探りな部分になってしまうのだが効果が上書きされるのなら十分だ
壁と足を氷で固定しながら行動しているというのに理不尽に、確実に敵を殺すという感情を全体的に出している影の攻撃を手に持つ黝危槍がぶつかり合って拮抗するような感じで留まる。
感情的になると自ずとボロが出るはずなのに平然と動いているのを見て笑ってしまう、変光星で影を薙ぎ払いつつ相手に攻撃を加える中槍を首の部分に目掛けて投げ込もうとするのも見透かされるように影と迫り来る巨大な手で阻害されてしまった。
「こんなの初めっから使っていれば子守なんてすぐに出来たのはずなのにな【三穿跳】!」
『そんな攻撃はただの突くだけの味気のない無意味な攻撃だ!まだそんな物ではない事ぐらい分かっているはずだ【影剣の舞踏】!』
この周りに弾け飛ぶような魔力の塊のようでさっき見たような攻撃に近いと思ったのだがそれよりも視認できる大きさとと迫力が段違いに感じられるのだが…やはり無意識で使っていたやつよりか認識して利用していた方とここまで違うのなんて結構驚きである。
変光星の回転で無理矢理跳ね除けて攻撃を弾いているのだが全く影は疲弊しているように見えないし寧ろ良くなっている。ゆっくりと大きな体を動かして目線が合うようにした影はこちらを見て火山にある魔力を吸収し始めた、【宝物庫】に手を伸ばして魔石を砕いて魔力の補給は十分だ…どっからでもかかってこい。
気持ちが通じたのか急激に今まで飛ばしてきた影達を集め始めて朧げで所々抜けていた竜の姿が完全となって目の前で顕現したのはまさしく竜そのものだった
「こちらも準備満タンだ…こっからが本番なんだろ?お前が見せる心を見せてもらうぜ」
変光星の型を変えて【爆発型】に切り替えて【起爆】するとそれに反応するように〔秘華の炎導〕も燃えるように紅く煌った。
目の前に聳え立つ竜は小さな足場に立つ一人の人間に目線が固定されていた




