対面
王の言った通りに自由の追跡者と“鉄の森林”の境界線に遠目だがジェバル殿を見つけることができた。その刹那、圧倒的な魔力の波長を感じた。
「オーウェン!避けろ!」
すぐに目の前に水魔法の上級【水嵐】が飛んできた。隣にいたオーウェンは急なことで見るからに動けていなかった。ならば、俺が守らなくてはいけない背中に掛けていた大剣を鞘から取り出し大魔法に向かって思いっきし縦に振る
「【暴虐剣】」
剣から出る禍々しい魔力がジェバルの放つ 【水嵐】を食い尽くす。普通にあの大魔法を一般人に向けられたらひとたまりもないだろう。上位の冒険者でもないと無理だろう…
「オーウェン!大丈夫か?」
ギリギリ避け切れたオーウェンに声をかけると「こっちは大丈夫です」という声が聞こえた。 それよりもジェバル殿を優先するべく馬を動かす。
◆
やばい、ゴリラみたいな男がやって来る。
一応他の魔法を打つことができるけど他の人の迷惑になるかもしれないのでやめておく。馬に乗ってやって来た人は大剣を背中にかけていた。
「お久しぶりです。ジェバル・ユースト様…もう覚えてはいないかもしれませんが….アストラル王立国家騎士団団長のドゥーン・スペリスクです。
赤ん坊の頃の記憶は流石に掘り返せないがそういう人なのだろう…まずは話をしよう
「覚えていないのですが…父の知り合いでしょうか?先程は魔法を打ち込んでしまい申し訳ございません。急に視線を感じたのでつい…」
その言葉を聞いて口を大きくして笑い始めたのだ。この人大丈夫か?さっきのでおかしくしてしまったか?
「大丈夫ですぞ! ジェバル殿が放った魔法は素晴らしい魔法ですぞ!これなら私のように貴族で はなく冒険者としていくのもいいかもしれませんな!」
ほう…そういう生き方もあるんだな…確か家には弟がいるし、面倒な領地云々やっているとローさんの約束が果たせないのなら丸投げしてしまおう。はい、これで解決。
「それじゃあ、父親に言っておいてください“次男のルドゥレに跡継ぎをお願いします”と言っておいてください」
「その理由は?」
まぁ…聞かれるよね…ハハハ。なら、正当な答えを言ってやろうではないか!胸を張って喋る。
「自分には大きな試練がありますのでその試練が終わるまではドゥーンさんが言うように冒険者として生きていこうと思います」
ドゥーンは少し驚いたような顔をするが納得するような顔をしてまた笑い始めた。この人笑いすぎじゃない?と心配になるくらい笑っていた。
「これもジュダー殿もいつかはそうなると思っていたことだと思いますのでお気にな さらず…その道を選ぶならこれを」
巻物を渡してきた。なにこれ
「これを冒険者の街“自由の追跡者”の冒険者ギルドに持っていくといいことがありますので、ここら辺で私はお暇させてもらいます」
「あっはい」
魔法ぶつけたのに怒らない人でよかったのとなんか父さんに縁のある人みたいだった。勝手に伝言頼んじゃったけど大丈夫かな?あとこの手紙みたいなのはなくすといけないからちゃんと管理しておこう。
ドゥーンさんと別れた後、やっと道がわかったので近くの冒険者の都市の自由の追跡者に向かった。
◇
「騎士団団長…多分領主になるはずだったのに冒険者の道に進ませちゃってよかったんですか?」
「ジュダー殿も分かっていたことだ。そんなに心配しなくても大丈夫だ、ユースト家に寄ってこのことを話にいく」
「わかりました」
今、我等二人はユースト家に馬を走らせる。
少し昔の事を思い出しながら…
◆◆
近づいてくる都市の門では持ち物検査かつ犯罪者かどうかのチェックがあるらしく素直に並 んでいるとチンピラ三人組に絡まれました。もうなんなの?この世界…
「おいチビ!聞こえているんだろ?返事しろよ!」
はい、こいつがチンピラAとします金髪で髪を上げて如何にもヤンキーみたいな格好をしている。 実際自分は18歳の成人であり身長は知らないけど170くらいはあると思うし相手も同じくらいなのだがチビなのか…
「兄貴…こいつ耳があるのに聞こえていないってことは相当な馬鹿ですぜ」
こいつをチンピラBとする。こいつはこいつで髪はまともなのだがどこにても脇役な感じの人間だ。さっきからAのことを兄貴と呼びまるで893みたいな関係なのだがどうでもいい。しかし、このなかでもチンピラC (フードみたいなので顔が見れない) だけなにも言わずにこちらを睨んでいる。
「お前見たところ仲間もいないソロの人間で剣もボロボロで戦うことができないはずだ。俺たちは優しいからよ、お前の持っている手荷物さえ渡せばこの魔剣を渡そう…いい条件だろ?」
魔剣と言う言葉には興味があるが素直に手荷物を落とすバカがどこにいるんだか…それにメリットがないしやるならもっとマシな取引をしろよ…初対面の人間に信用なんてもんはあまりないので【鑑定】をする。
鉄の剣
何の変哲もない鍛治氏が造った剣。
はい、嘘。魔剣でも何でもないじゃん。怒ったことを強調するために【水嵐】の魔法陣を足元に広げ魔法を打つ用意をする。
「なっ!」 「ゲッ!」 「…ッ!」
三人とも驚くような素振りを見せて後ろに逃げていった。本当は背中を見せるなんてあまりにもチンピラやっていなさそうだが面白い反応を楽しませてくれただけでも良しとしておこう。切り替えて列に並び直すが門にいた人が注意をしに来た。
俺悪くないのに…
急いでやって来た人はとりあえず門の横にある相談室みたいなところで事情聴取を受けている。
「それでお兄さんよぉ…あのユースト家の人間がこんなところに来るんだぁ?」
終わらないからドゥーンから貰った巻物を机に置く。
「これはなんだ?俺も忙しいんだからよぉ…こんなオモチャなんか…んあ?!小僧!少し待ってろ!」
門番の人はさっきまでのんびりしていたのだがドゥーンからもらった手紙は門番の人の目を覚ますいい薬だったようだ。部屋にいるのは俺だけなのでステータスの確認でもしようと思う。
「ステータスオープン」
ジェバルユースト
LV. 30
称号:【水の化け物】 【???の子】 【妖精と対談した者】
技術:【創造魔法:神】 【統治】 【???】 【精霊魔法:神】
魔法 【風魔法:初級】 【地魔法:初級】 【水魔法:上級】 【鑑定:中級】 【炎魔法:初級】 【身体強化】 【静寂】 【探索】
体術:【剣術:中級】 【闘術:初級】
加護:【水の神ウンディーネの加護】【観測者???の加護】 【妖精の加護】
観測者???の加護の影響により相手からの鑑定に干渉されません。また、試練の強化が施されます。
【妖精の加護】により■■■と■■■に行けるようになりました。
何なの?文字化けみたいに見えないのが気がかりなのとあの妖精から【精霊魔法:神】を貰ったのか…あの妖精何者なんだ?
とりあえず使わない理由はない。すぐ使おう
「【精霊魔法】」
発動しない…何だこれ使えないぞ?!何回やってもできないことに苛立ちながら魔法を唱えること数分、【精霊魔法】を使えることはなくその前にさっきの人と顔に三つの傷をつけている人がいた。
「おい坊主、この方はギルドマスターのグレン・リチューさんだ。無礼の無いようにな」
先に小声だが耳打ちをしてくれた。そのまま門番の人は部屋を出て行ってしまい。部屋の中にはギルドマスターと自分が残った。
「それで?お前があのドゥーンにこの手紙を書かせるほどの力があると書かれているが本当なのか?」
グレンさんからオーラみたいなのが溢れてた時は驚いたけどドゥーンさんとはちがってなんかあったら対処ができる。
「手紙の内容は把握していませんが水魔法なら自信があります」
「まぁ…あのかなりの被害を出した【水の化け物】って呼ばれる位だし、ドゥーンの野郎もこうして手紙を送るのだから信じよう」
こんなあっさりでいいの?もっと聞かれるかとかと思ったけど案外身を硬くしていたのが杞憂だったようだ。
グレンは懐から一枚のカードを取り出した。 そのカードは透き通るような白色だった。
「ドゥーンの書いてあった通りにお前のランクをAにしておいた」
「Aですか?」
冒険者にはランク付けがあるようだ。まぁ…強い人間が低ランクにいたら国が滅ぶだろうしな…
「ランクは下から順にG、F、E、D、C、 B、A、 Sになっているんだが…同じ事を言うが一時期騒がせていた【水の化け物】だからな」
カードを受け取りその後冒険者とは何たるものかを教えられた。一時間も止められた。長げぇよ…ギルドマスター
□+
あるニンゲンに近しいものが深い深い洞窟の中で天を見上げる。
「この懐かしさ…友か?なら、尚更だ…」
ニンゲンは地中から人を呼び友のいる場に向かわせた。
「話がしたい…」