タイムミリットまであと寸刻
こんな所で蛹に注目を動かせていたら一瞬で影に命を狙われるだろう…今も現に狙われているからよく身に染みて分かるよ…壁を駆け上がってから首に向けて飛ばしてくる斬撃を【氷結世界】で受け止めてから短剣を何十本も投げ飛ばしておく
「さっきに比べてとんでもないほどの質量のある攻撃を飛ばしてくるってことは溶岩に浸かっている蛹に眼中はないってことだな…それって一時的な育児放棄って奴ですか?成長がとんでもないと考えるけど生まれたてなんだから側にいてやれよ【超煌弾】!」
体も温まってきたせいで腕の応急処置が剥がれそうだがこんなことでウジウジしていたら体が真っ二つになるかもしれないので生きることを第一に行動しなければならない、目の前で身体が吹き飛びそうな爆発を飛ばすのだがうまいこと攻撃の隙を見つけて手でかき分けるなんていうとんでもない動きをしている
しかし、さっきまでの動きとは違う点がいくつか見える…蛹に配慮がなくなったことだ、これの所為で今まで庇うような動きが全くなく絶対に排除する…そんなような感情が自分に向けられていて徹底的に自分にだけ集中攻撃を始めてきた。それに影自身に攻撃を当てることが難しく受け流されるか相殺してくることが多いし攻撃のバリエーションが豊富で影から出てくる形も大きさもバラバラで危険なのにも変わらない刃や飛び込んでくる罠とかよりも特に危険なのは…
「足から伸ばしてくる影から飛ばしてくるその一本一本が魔剣並みの威力を持っているだろうと仮定できるし全方位攻撃ってことだ!」
さっきから対処するために広範囲にかつ強力な【深海】や【氷結世界】、【微塵嵐】を多用してなんとかしていているのだが…攻撃はそれだけで終わるわけではなく組み合わせて使ってくるのがとても厄介だ。全方位攻撃をした後でも接近して攻撃している途中で足元から棘のような罠を張っていて一瞬でも気を張り続ける状態であるしさっきから蛹が壁にぶつかりまくっていることもあり地面が揺れて足場が思ったよりも安定しない
「その横に跳ねて動いて魔法を躱すのが気持ち悪い上にその反動を利用してこっちに遠慮なく斬撃を飛ばしてくるのやめろぉ!」
体をスレスレに通っていく斬撃を最小限にするために【剣護絶:魔倒防】を利用してなんとかしているのだがどうにもできない時はすぐに後ろに下がってもう一度舞う為の魔力を身体中に回し出す。どんなに苦しかろうと死ぬよりかは断然マシだし戦いながら吐こうと問題ない!僕の三半規管必死に動いてくれ!
「ここまで必死に貯めてきた貯金をここで少しづつ使っていくぞ…試運転なんか全くしていないけど練習しても使いこなせないことくらいは分かる!それにできたとしてもこの緊迫感なんてそうそうないからな!いくぜ〔秘華の炎導〕!」
紅く煌めいている魔技装を力強く握りしめて貯めに貯めた炎を使っていくぞ、突如魔技装から溢れ出てくる炎に驚きつつも吸い込まれるように全身に纏われていく…影も何かを感じ取って追撃をしてくるのだが炎が生きたように影に襲いかかり後ろに下げてくれた、その間に体に優しい炎が体を癒してくれた。
さっきまで動かすのに必死だった変光星をこれで十分に振り回せる、それに今戦い始めた時よりも数倍の魔力回路が構築されて色んなものに動きにプラスされていく、飛び込んできた影に対して【超煌弾】をぶつけたつもりなのに変光星から引き出されたものは通常時の三倍くらいある【罅燎轟】だった。
「すごいな…流石は三人が協力しあって作り出されただけあるし逆に魔力を使いきれないほど余り切っているなんてとても素晴らしい魔技装じゃないか…これが終わったら取り敢えずお礼しておかないとな…」
『Porrrrrbbbbbbaaaaa!!』
そう熱いのを喰らって怒るなって、それよりも影の質量が増してきたし連続しての攻撃が多くなってきた…今も飛ばしてくる攻撃は掠りさえすれば腕が吹っ飛ぶ可能性もある。影からチラリと見えた真っ黄色の眼がこちらを睨んでいると思っていたら背後から尖りに尖った岩をこっちに引き寄せていた、変光星を自分よりも前に出して空に十字を描くように切り込みを入れて大蛇へと変わったあの人間と戦ったようにあの技を繰り出す
「【剣斬豪:辻斬十屠鼇】!!これくらいの壁なんて吹っ飛ばしてやる!」
壁は破壊することができたのだが足が影から発せられた何かに足を引っ張られて身体が崩れそうになった所で地面から頭に刺さるところを掴んで止めることができたのだが止めた所で手に無数の穴が開けられる。こいつ見えない攻撃をし始めたのか?こんな土壇場でこんなことをするなんてかなり性格が悪いぞ!痛みですぐにでも手を離したいのだがここで手を離せば頭に飛び付こうとする棘が突き刺さることが目に見えて分かる
『私ハ、生きるだけのただの影…だ。生き甲斐もナク子守を続ける…同じ体を持つ存在ハ今も多くの魔力ヲ吸い取り養分として…成長をする、それを邪魔をスルのがどんな高貴なる存在であろうと使命を全うするためだけに始末するダケだ』
こいつまたほじくってきた壁でプレスしようとして来た…喋ってくれることにとても驚いているのだがこんなギリギリの状況だと全く話についていけないんだ…【宝物庫】から菫鉑蟷螂の鎌の部分を迫り来る壁に食い込ませて置いて次に首に攻撃をしてくる影を足で蹴り飛ばしてすぐに間合いを取る。ミシミシと鎌は悲鳴を上げた最後にはそのまま壁に押し潰されて溢れる破片が落ちていく
今のは本当に危なかった…【宝物庫】という切り札がなかったら今頃お陀仏になっているはずだ、影はこっちに目線を向けると自ら溶岩の方に降りていき代わり代わりにやってきたのは壁を這うようにやって来た蛹だった
「こっちに来るぐらい生きるために動いたってことだよな?だったらさっさとその殻剥ぐくらいしてこいや!」
【宝物庫】に入れ込んでおいた変光星を再び取り出して【起爆】する、命を吹き込まれたように炎を灯して飛んできた影を燃やし尽くした。さっきまで気づかなかったけど何気に影を置き土産としていてこんなにもそこら中に振り撒いている事が分かる…これもそうなんだろうな
体で反応できた影はすぐに焼き払うか躱すかしてなんとかやり過ごしているのだが時々浮かんでくるこの丸い紫の球体がそこら中に展開されている…試しにゴロついている岩を投げたら溶けた。球体がこちらに飛び込んでくるのだが躱せば破裂して液体を振り撒いてくる
「この球体自体が毒か!それに球体に近付くと思いっきり破裂して攻撃範囲を増やしているのなんて結構な外道行為だぞ!」
自分も球体に覆うような【水球】を展開して毒の球体に対して覆い被さるようにする、まだ影も倒したわけではない…消えただけだまたどこかに出てくる可能性だってある。影に比べて幾分楽だ、うまくこのまま時間を使って逃げれれば十分なんだが…そう簡単には行かなそうだからな…
『本体が動いタ…私はこの時は後ろデしか動けない…だけどまだ首を切り落とすことを頭に入れて戦えば問題ナイ』
背後に現れた影は遠くにいる蛹を見て微笑んでいるように見える…本当に子守をしているつもりだったのか?さっきまで溶岩にほっぽり出して育児放棄しておきながらよく喋る口だこと、創造魔法で創り出した短剣を影に飛ばしたのだがいきなり姿を消した
影を伝ってどこかに移動したのか?さっきまでそんなことをしていなかったしそんなに動きを見せる素振りをしていなかったのだが全速力でこっちに向かってくる蛹を押さえつけることが今やるべきことだ!
「影が足元から出てきた?!この蛹野郎どっかに移動させたのか?一先ず後ろに下がって炎を使うタイミングを見計らないと無駄になってしまう」
『成程…その魔剣から溢れ出る生きた炎が首にぶら下がっている飾りに吸収されて効果を発揮されているのですね…それを断ち切った方が良さそうですね』
どこからか飛んでくる影に首にかけていた〔秘華の炎導〕の紐を狙われホロリと落ちるが右手で拾ってこの効果を途切れさせなようにする、少し首も削れたが致命的な傷ではないだが軽い振動の中で突進してくる蛹に気づかずに押し込まれてしまう
「タッグでここまでいけるなんて流石だな!畜生!お前だけでも吹き飛んでくれれば万々歳なんだけどな【罅燎轟】」
押し込まれる流れの中で変光星を殻に差し込んで【罅燎轟】を中身に撃ち込む、自分にも炎がかかるがこんなの自分のエネルギーに変換さえすれば大したことはない!大きく亀裂が入ったと同時に動きが止まった所で蛹の上から飛び込んできた影が必要以上に右手を狙ってくる
多分、〔秘華の炎導〕の効果を取り除くためにやっていることなんだろうな…体の形をした影は蛹を擁護するような形で自分の全方位に影を展開して目の前にやってくると同時に首を狙う鋭い攻撃が飛んでくる
「こいつに武器を持たせたら駄目でしょうが!」
『これで私も貴方と対等な関係になりました…いや元々対等ではないので意味がなかったでしょうか』
足場が垂れ込んでくる影の所為で覚束無い…なら自分もそれに対抗するための魔法か攻撃なんかを利用というか使い方次第でなんとかなるはずだ。足元を掻っ攫われる前に魔法を大抵…反射してくれるあるものを地面に刺しておく、あれだけ乱獲して余るほどの死骸だそんなもの【宝物庫】にいくらでもある。すぐに【宝物庫】に手を伸ばそうとするも腕に短剣が三本刺さる…でも関係はない痛むが引きずり出した蟷螂の死骸をこれでもかと辺りに散らばて足場を作っておく
影が取り込もうとしたのだが魔法を弾いたのか寄せ付けなかった
『この魔物の死骸でしょうか…とてつもなく魔力伝達が凄まじく触れるだけでも体を保つのに難儀しそうですね、これで貴方に足場という自由を与えてしまいましたがこれからどう行動するのでしょうか…ここから動こうにも私自身がそうするわけでもないことは戦っている貴方だったら分かる筈です』
「そのくらいこんなに傷付けば分かるさ…今だってこんな酷い傷が至る所にあるこの体を治癒するのに結構必死に魔法回路を回しているよ」
『…治癒魔法は使わないのですか?私の変幻自在の体に対して抗うために繰り出される魔法がとんでもなく才があるというのが貴方自身がよく分かっていて何故です?治癒魔法は基本中の基本な気がしますがね』
不思議そうに首を必要以上に曲げてこちらの非常識さを見てくる。自分は全くと言っていいほどこの世界の基準なんて知らない、全部が目新しい事ばっかしで頭がいつも追いつかないから必死にいろんなところに足を動かしているんだよ。それよりも治癒魔法…基回復魔法は自分には使えないことはこっちでのジェバル・ユーストがすでに把握しているから分かる、これのせいで必要以上に親とか友達が過保護だったのが蘇る…
「基本が分かっているからこそ応用が使えるってわけなんだからそこまで文句言うなよ…体の調子も戻ってきたし狙っていた魔技装を掛け直すことだってできた」
『そうですね…これを互いにこうやって話をしているってことは貴方も同じように何かをするために時間を稼いでいるってことですよね?その魔力の激しい回転は…準備をしているということでしょうね、とても人間が出せるものではない気がしますけど』
急に動かなくなって隙を見せた瞬間からそれくらい分かってしまう自分もここに慣れてきたと思ってしまうがお前もお前で後ろから何処となく怠慢そうで勤勉を表しているようなこの威圧からはその言葉を覆すような物を見せつけながらよく言うよ…自分も生きるために必死になって体の再生を促している中で体を貫いている影を一本一本取り除いていく、その度に神経を擦り減らしていく。最後の一本を取る前に一つ言葉を影に贈ってやった
「ここまで待ってくれ他ことにはまずは礼をしておかないと気が済まないのでありがとう、そしてここからは感謝ではなくなるけどな…ここで戦え抜くことを今現状の目標として頑張ろうかな…ここからは体も燃え尽きてしまうほどの炎天の中での戦いになりそうだ」
〔秘華の炎導〕がとてつもなく燃え盛り体を覆った炎が蟷螂の死骸を少し溶かしていきジェバル・ユーストは今どんどんと加速していく。影も言葉を受け取ると隠し持っていた細剣を撓らせてから攻撃を始めた
ベビーシッターさんの方が蛹よりも張り切っているようになってしまった…これくらいが丁度いいのかもしれない




