閑話:アストラル王立国家騎士団団長
今、競技場で模擬戦という名目で行われている試合が熱を帯びていた。剣と剣がぶつかり合い甲高い音が周りに響く。
「【身体強化】」「【身体強化・加速】」
髪を束ねている痩騎士と国を背負う騎士団団長が小さく魔法を呟き互いに力を込めていった。
痩騎士は特技の関節を外しながら剣を持ち体勢を屈みながら走って進み首を狙って動き、騎士団団長は大地に足を踏みしめ瞬時に姿を消し気づいた時には痩騎士の正面に立ち塞がり大剣を振りかざした。
一閃、素早く剣を相手に当てたのは…
◇
団長室で話している人物が二人いた。
「それでどうしたんだ痩騎士よ」
手には好物の酒の入ったひときわでかいコップを持って飲んでいるのと対照的に水しか飲んでいない痩騎士が空笑いをしていた。
「それはないでしょう騎士団団長様。俺にはちゃんとオーウェン・ジッポスっていう名前がありますんで…その痩騎士は止めてください…」
「それもそうだったなオーウェン。昼にやった模擬戦は心が踊るように楽しかったぞ!またやろうではないか!」
「また、兵士の前でボロボロに負けるとこなんて見せるの嫌ですよ…それにいつもだったら関節外して戦うことなんて滅多にないんですから…」
声の大きさも対照的な二人は昼に行われていた模擬戦についての話を続けていた。
「ガハハハ!!そんな謙遜しなくてもオーウェンは強い!この俺が認めよう!」
騎士団団長は笑いながら話をしているが痩騎士はこんな人が剣の中の王である。【剣王】という二つ名を持っているなんて中々に見えない。
しかし、その剣の力は本当でありアストラル王国の中で上位にいる程である。
噂では彼より強い鬼の様な強さを持っている人間がいるらしい…
痩騎士は自伝を長々と話す【剣王】を見ながら思っていた。
「まぁ!俺より強い者は多く存在するからな!」
「あなたに勝てる人なんて中々見つかりませんよ…」
声を小さくしながらブツブツと喋る痩騎士の背中をバシンバシンと叩き「大丈夫だ!」とでかい声で励ましてくる。
まぁ…こういう人だからね…
「お楽しみのところすいません。団長様宛に手紙が届いています。」
「何処からだ?」
配達員から手紙を手にしてそこから手紙の中身を見ると酔いが消えたのかすぐに立ち上がり身支度をする。
「どうしたんですか?」
オーウェンは急に動き始めた騎士団団長を心配するように声をかける。
「ユースト家の長男のジェバル殿が失踪した」
返ってきた言葉は驚きだった。
少し前に活動報告にこれからの活動を載せました。見ていただけるとありがたいです。