死なる霊の王よ、同胞の屍の上に立つ 其の一
「ほら、ここに来てくれ…ワインはないんだが話すだけだったらいいだろ?」
入ってきて早々玉座から腰を上げて近くにあるソファに座り、自分に対しても座るように促してくる。
「どうした?我が親友よ…そんな顔をしてどうしたんだ?具合でも悪いのか?今飲み物を用意しよう。水魔法【水球】」
蜘蛛の糸が纏わり付いていたり埃がかかっているコップに【水球】の水を入れて差し出しこちらの反応を見ている…実際飲むことができないからどうやって飲まずにできる考えた。
「心配はいらない。大丈夫だ、それより俺に用があってここに呼ばせたのだろう?親友」
あれ?何も喋っていないのに口が勝手に動く、それに俺?僕なはずなのに…困惑しているが勝手に動くこの口は止められずにいた。目の前にいる死累人の王はコップを下げてゆっくりとこちらに顔を向けた。顔は肉がなくただの骸骨のようだった。見ていて何故か悲しみを感じる。
「そうだな…ここに呼ばせてもらったのは、昔話をしようと思ってな…最後に別れたのは…180年ぐらい前だっけか…あの後必死に動いたのに見つからなくてさ…何度も泣いてして逃げ出してしまいそうだったよ…あんなに皆から大切にしてもらったのに何もできずに終わってしまったんだから…」
目玉なんてないのに…涙が溢れているように感じているし体を捻るように動かしていて悲しみを表現しているようだった。というか180年前!?ちょっと待て、今は345年だから…引いて…115年?人間はそこまで生きることはない種族だ…というとこの骸骨は180年前以前も生きているっていうことか?それはおかしいだろ…そんなに生きているなんてことはありえないはずだ。骸骨はこちらの方を向きじっくりと見ていた。
「それで…もう、ここが俺の最終点なのかも知れない…もうギリギリだったけど何回もいろんな手段を使って延命していたけど友に看取られるのは…いいかもな…いや待て、お前の魂を視たが…お前何者だ?」
ゆっくりと朽ち果てるようにボロボロと体が消えかかる前に言ってきた言葉があった。その言葉から発せられる威圧感は自分でも押し潰されてしまう程のものだった。顔を見ることだって難しいほど強い負荷がかけられる。
「お前は誰だ?人の友を侮辱しにきたのか?それともあの忌々しい神の使いか?」
負荷が重すぎて何も喋ることのできない状態になっていた。だんだん骨も軋みだし内臓に刺さり口から血が吐き出始める。自分から垂れる血が服に染み込むが“闘気”と魔力を精一杯体を覆い苦しみながらも口を動かす。
「僕はジェバル・ユーストだ。他人扱いするようなことはやめてくれ、それに急におかしなッ!ブハッッッッッ!!」
自分のことを話そうとしたら突然竜が現れて尻尾で薙ぎ払われた。壁に埋もれて動けなくなっていたところに真っ黒な息吹が飛んできた。変光星で燃やして掻き消して難を逃れたと思ったら次は巨大な爪で引っ掻かれそうになった。ギリギリで抑えることができたが、どこから現れた分からない竜は後ろに下がり骸骨の隣に座っていた。
「よく、動いてくれた。ありがとう、 テト」
テトと呼ばれる竜は喉を鳴らし喜んでいるがこちらに向ける眼差しは厳しいものだった。骸骨にかけられた威圧と同じように動けなくなってしまった、素早く心臓の炉を動かし動きを早くさせて骸骨に寄ろうとするが竜に邪魔されて届かなかった。
「Gyurarurururururu…」
「僕は何もしていないはずだ!そちらの都合でここに連れてこられたんだ!」
「…遠くにいる友よ、聞こえているか?最後は自分の生き様をここに表すことができるのかも知れない…この蛮勇だけを持つこの子供がこの長かった人生を綺麗に飾ってくれる生け贄となってくれるそうだ…」
ぶつぶつと喋っている中でも必死に竜の重すぎる攻撃を受け流しつつあった。時々見えない攻撃に当たると怨念のようなものが体に張り付いて囁くように喋り続ける。例えばだが『殺してやるぅ…この恨みわアアアアアアア!!!』『この苦しみは…この生きている人間に必要なものだ。いつまでもしがみついてやる』などと脳に干渉してきて時々正気を保てなくなって自傷行為をしてしまうほどの重いものがのしかかってくる。正直反吐が出る、こんなことをして何が楽しいのやら…竜に向かって走り変光星を当てても何も傷がつかないことに多少苛立ちを覚えるがこれもいつしかの試練だ。
「Kyararururururururururu…」
口に自分よりも5倍は大きな波動弾のようなものを放ちぶつけてくる。その度に魔力を吸い取らてしまい体の脱力が激しくなる。くそ、どうすればいいんだ…?
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「ねぇ…私に用があると言ったけど…何かしら」
「えぇ…用があったのでここにお呼びしました。 どうです?王の持つ城のように豪華な部屋でこうして菓子や飲み物を飲むというのは気分が心地が良いでしょう…」
実際、本当に天国にいるかのようなことをトリュと言う死累人から受けている、菓子もちゃんと味がついていてとても美味しいし出される紅茶はなんともおくが深くて飲みやすい…この男がしたいこととはなんだろうか…
「気分が落ち着いたことですし本題の方に入りましょうか…あなたは神聖魔法が使えるのでしょう?」
「ええ…まぁ…あのジェバルだってそうだけど…それが何かこれから話すことに関係するものなの?」
お菓子や紅茶を堪能したところで急におかしなことを喋り始めた。何故、神聖魔法のことを?不思議でしかない、本当だったら教会でしか使われないマイナーな魔法であるため使えるものは限られていく、トリュは右手を出し詠唱を始めて少しすると神聖魔法ではないが闇魔法の反対である【輝矢】を手のひらから実物化してみせた。
「私は、元はここから北にある神聖国家ダベリギオのとある神父だったのだ…その昔話が【雪薔薇の高嶺】が持つ未完成な神聖魔法の礎になればいいと思って…ここに来てもらいました」
放たれる言葉は弱々しく…昔の思い出を語り出すようだった。




