“蛇の抜け殻”との戦い③
「前はどうなっている!?死累人の数は?!」
戦況の確認をするために緊急対策を近くの村を借り目紛しい量の情報が飛んでくる…大抵の力を持っている冒険者が何人もやられどうしようもない状況が続いていた…まさかそんな中、一人の死累 人がテントの中にやってきた…
「私はトリュ…主の命令からここにやってきたのですが…貴方は素晴らしい肉体ですね…もう少し で“闘気”が練り上げられそうですが惜しいですね、それはそれとして我が主からとある男を連れてこいと呼ばれてここに参上しました」
今の手負いがなかったとしてもこいつには絶対に勝てる感じが見えない….最近何度も負け続けていたがあの男よりもこいつの方が倍以上に強い!そう確信できる。周りは自分のことを信じているが皆恐怖で手が固まっていた。
「こんなに強いお方が探す人とは誰ですか?」
「すぐに分かると思いましたが…あの【水浪の泡沫】ですよ。えーと名前はなんて言うんでしたっけ…そうそう、ジェバル・ユーストでしたっけ?彼という人物が主が呼んでいる人らしいです」
「らしい…ですか?」
らしいだけで最近の冒険者の中でズバ抜けて強い奴を当ててくるなんてその死累人の王は何を考えているんだ?
「えぇ…我が主は昔の友を探していまして、かなり強い人物とおっしゃり各地を探すにここにいるジェバルという人物に当たりました。それで?彼はどこにいるのですか?」
「すまないが…こちらもジェバルのことを把握できていないんだ…朝からどっか行ったっきり帰ってこなくてな」
トリュは不思議そうな顔をしてこちらを覗き込み嘘をついていないことを確認すると手を叩き周りに放っていた威圧するようなプレッシャーを解かした。職員全員が息をやっと吸えた感じで呼吸をしていたのを確認しトリュの方を見る。
「こちらこそ、申し訳ございません…とんでもない無礼をしてしまい申し訳ございません。今、私の怨霊に探させたところ昔暴れていた【暴食の乞食】と戦っているようですね、そちらの用事が終わったら迎えにいきます。それでは…」
「貴方様が今来ている死累人を止めることはできないのか?」
首を180度回転させて自分の方へ向く、少し気持ち悪く思ってしまったが我慢して相手の言う言葉を待つ。相手の気を触れてしまってはこちらがどうなってしまうか分からない。
「残念ながら…私には王の探す者を探すまで進撃を止めないとおっしゃっていたのでそれは無理ですね。それでは」
トリュは地面を器用に掘っていき姿を消した。なんてこった、ジェバルの野郎危険を感じず“蛇の抜け殻”の方を片付けに行ったってことか…となるとマディーもついていったということか…それにまだ死累人の進撃は止めることができない…どうすればどうすれば…頭を抱えてどうするかを考えていると肩にポンと手が乗っけられた。
「この場は私が止めよう…そうすればいいんだな?」
「あなたは…」
手をかけた人物は冒険者の中の冒険者。特級の【煌なる翼望】シャガルド・ボリアスだった。
■
気絶している間だったけど少しだけ夢を見ていた。昔あったことを思い出させる夢だ、少し前までは貴族として振る舞っていたのに誰かが引き起こした“ある事件”…市民に対する税金の増加をさせるという国からの命令のせいで市民の反乱が激しくなりリルデリー家という貴族はなくなり逃げる際に家族はバラバラになってしまった。貴族として誇りのある名前もあった…だけどこの一件で儚く消えて無くなってしまった…
「お父さん?お母さん?」
両親の後ろ姿が映るが触れようとした瞬間氷が砕けるように消え去った…それは目の前にあった同じ人生のように消えてしまった。お父さんもお母さんももうどこにいるかもわからない。 死んでしまったのかもしれない、だけど私が出す手を取ってくれる人間はいなかった。ここでもう私は一人でこの世界を離れてしまうのだと…そう思い最後に手を伸ばした…その手を取ってくれたのは…
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氷の壁は中にいる人間を守るために作られた…その壁を意志を持って開けたのはマディーだった…体を起こして辺りを見渡すと右腕を止血をしている【暴食の乞食】が座っていた…
「お?やっと開いたか…その壁をこじ開けようとしたのに全く壊れないしよぉ…右腕は痛むし色々と多すぎてなぁ…」
【暴食の乞食】の右腕が奥にある壁に張り付いていて逆に後ろを見ると口からものすごい量の血を吐いて気絶しているジェバルがいた。【暴食の乞食】の方を睨む。
「オメェもあいつと同じことをするんだなぁ…まぁお前を殺すかなんかすればやっと食事にありつけられるんだ。悪く思うなよ」
一瞬消えて気付いた頃には遠くにある壁に埋もれていた。激痛が走りあちこち血が滲み出る。もっとジェバルみたいな力があれば…そう思いながらも壁を崩していきふらふらになりながらもなんとか立つことができている。
「まだよ…まだ戦えるわ…」
満身創痍の状態でも【暴食の乞食】は構わないで進み続けてくる…自分の中にある魔力を練りに練って作り上げた【白銀世界】をぶつけるが棍棒で弾き飛ばされてしまう。壁を蹴って相手を迎え打つ際に力を入れて叫びながら魔剣である【雪の孤独】を構えた。
「うおおおおおおおおお!!!」
その叫びは遠くにいる生き物の耳に聞こえた。【暴食の乞食】の影から出てきたのは黄金に光輝く犬だった。犬はあいつの左腕に噛み付いていた、急なことで判断が鈍ってしまったがこの犬は何故か【暴食の乞食】に用があるようで敵意はあちらの方へ向いていた。それに追撃するように手にもつ魔剣の【雪の孤独】に魔力をふんだんに入れ込んで魔法を成り立たせる。
「ぬぅぅぅぅ!!」
【暴食の乞食】は後ろに下がろうとするが足が凍ってしまい動けなくなっってしまった。冷気は体を包み込みだんだん霜をつけていった。【暴食の乞食】は右腕の中から魔術書を取り出し炎を生み出し体につく霜を溶かしていった。
「オメェ…隠し球持っていがって…かかってきやがれ犬ころと【雪薔薇の高嶺】!!」
私は謎の高揚感を感じている、急に現れた犬がこちらに合わせて連携をとりつつ攻撃を確実に合わせて動いている。犬の方は噛みつきだけでは無く見たことのない特殊な魔法を使い攻撃を行なっていた。金色の炎の玉が空中にとどまり数秒経ったら小さな米粒の玉が一斉に飛び出して人間の急所を連続で当てていった。
【暴食の乞食】は壁に張り付いていた棍棒を取り戻し魔法を弾き飛ばそうとするが棍棒に纏わりつき少し溶かしていった。
「うぉーん!!」
犬が大きな遠吠えを【暴食の乞食】に向けた瞬間何度も避けていたのにも関わらずに立ち止まり地面を大きく叩き体を中に浮かせた。犬は険しい顔つきをしていたところ影の中に潜り何処かへ行ってしまった。それでもここまで奴を追い込めたのはありがたい。後ろを向いてジェバルの確認をすると血が元に戻っていた。なぜ血が戻っているのかわからないが無事そうで安心だ、すぐに振り返ると棍棒は目の前にあって顔面を強打される。
「他の奴の心配なんていらねぇんだよぉ!戦いは一対一の方が楽しいからなぁ!」
思いっ切り頭を揺さぶられたことによって脳震盪によって体がふらつく。小さいからラステル先生から貰った高位治癒瓶を取り出し体にかける。頭から垂れる血が元に戻り段々と体の調子が元に戻る、体の怠さは残っているがまだ動ける…動けるわ…足を進ませ重い一撃を与えようとすると目に見えない剣撃が襲いカウンターを喰らってしまった…しかし、剣撃途中で止まり相手が自ら後ろに下がった。
「起きてきやがったか…【水浪の泡沫】!!」
ゆっくりと手に持つ紅い剣を地面に刺しながら立ち上がる冒険者は燃え尽きぬ闘志を抱き続けていた…
「【暴食の乞食】…お前との戦いはまだ終わっていない…始めから喰らい尽くしてやる!!」




