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ラ・ラガス~創造魔法で異世界を生き抜く~  作者: タツノオトシゴ
序章
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とある男

 コツコツと部屋に入って来た人の足音が鳴り響くのだが、それまで目の前で話してくれていたヒーラさんの声しか耳に届いていなかったのにゆっくりとソファの横へと歩いただけなのに押し潰されるような圧に体は強張って動かなくなってしまった。青髪でスラッとした体型の美顔の男性は僕の方を見ると成程…と何か考え事をし始めていた


「何故、貴方様という御方がこんな所に!」


「この番室に呼ばれたということをアグーから連絡を受けて来た。ここに魂が来るという事は…言わずとも理解しているでしょう?」


「ですが…」


 今の会話で上司と部下の関係が目に見えてハッキリしており、さっきまでソファに座っていたヒーラさんが慌てているのも分かりやすかった。そんなことよりもこの何もない部屋に自分が呼ばれるって相当不味い事なのだろうか、さっきからヒーラさんの反応からして不穏な感じもしていたがいざ口から言われると安静になんていられなかった。


「まずは自己紹介をしておこう、僕の名前はスウォー・ロー。隣にいるヒーラと同じ神様って認識してくれれば大丈夫だよ」


「気にしていると思うけどここに呼ばれる魂は特殊な魂が多いんだ。それに該当する君に僕らは最適な道を見つけ出すお手伝いをしようと思っているんだが…聞くかい?」


 あたふたしているヒーラさんを落ち着かせたスウォーさんはヒーラさんの隣に座らせって顔をこちらに向いて喋り始めた。さっきまで重く押し殺すような圧は知らず知らずの内に消えていて目線を合わせながらどうかな?首を傾げて優しく声を掛けてゆっくりでいいから答えを出して欲しいとも言われた。


「せめて、残酷な内容の提案はちょっと遠慮させてもらってもいいですか?嫌な思いは流石にしたくないし、そんな範囲でいいのでお願いしたいのですが…」


 悪い物が抜け落ちるような程すんなりと言葉が出ていた、さっきまでの自分だったら絶対に言わないであろう言葉を思いがけずペラペラと喋っていたのだ。言葉が詰まりどうしようと頭の中が真っ白だったのだがそれまでほんわかした空気が急に引き締まったような感じがしてさらに心の中が焦り始めていく。


「アハハ!!」


 急に静まり返った二人の神様は零れた言葉を聞いてビックリした顔で見合わせた後生まれたのは笑いだった。さっきから何が起きているのか理解できなくて手は濡れていないのだが手汗でビチョビチョになっている感じがするしこれ以上焦らせるような事は止めてくれ、と心の中で叫んでいるとそんな反応も面白く思っているのか笑い続けていた。


「いやーそんな考えに至るなんて思いもしなかったよ…君の想像しているような事は多分起きないから、そういう心の持ち主だから尚更ね」


「スウォーさんの言う通り、上位の神様がここにやってきて話をしている時点でもかなり特殊な事なんだし貴方が思っている事には到底ならないわよ」


 心配はそこまでしなくていいと言われて心の平穏を手に入れた感じがして生きた心地がしなかった、ここにいる時点で死んでいるのか?曖昧過ぎて分からないことだらけで頭がパンクしそうだが目の前の二人の言動から見て完全に信用してよさそうだ。それを見越してなのかスウォーさんは何処から出したか分からないが緑八面体の石を取り出しテーブルの真ん中に置くとそこから地球に似た形の惑星を照らし出すホログラムが現れた。


「これがラ・ラガス…君がこれから進む道だよ」


 たった一言の話なのに情報量が多すぎて完全に脳がシャットダウンしていた、頑張って頭を動かし宙に浮かぶホログラムに顔が当たる位近くまで寄って見ると細かくだが森や海、どれくらいの規模か分からないが町のような物もハッキリと分かるくらいかなり細かく作られていているのだが所々点が打たれていてそこから線が引っ張られそこの場所の説明なのか文章が長々と書かれていたが日本語や英語といった自分が知っている言語は存在していなく何て書いているのか分からなかった。


「すごい神秘的ですね」


「君にはそう見えるのかい?」


「それは良かった。本題に入るのだがこのラ・ラガスには団結するとか信用するって言うのが無いんだよね…極度の人間不信でもないし互いに互いを尊重し合う所は少なからずあるから安心して欲しい」


「そこまで低く言うほど何ですか?」


 繊細に作り込まれたホログラムに魅入られながらただ掛けられた疑問に返答をする。純粋に美しいと感じたそれは不思議と僕を誘い込んでいるようにも感じられたりしたが、途方もなく続く広大な大地を眺めているとスウォーさんの安堵の言葉と少し疑問に感じた言葉が耳に入った。


「いや、全く無いという訳では無いんだけどラ・ラガスに住んでいる人達はちょっと慎重すぎるというか何というか…気難しい?簡単に割り切れる物ではないから上手く表現しづらいね」


暫くローさんは黙ってしまい考え事をし始めてしまった。


「まぁ…国同士で小競り合いが頻繁でそういう部分が乏しいだけなのよ、実際根の部分は一緒だから分かり合いさえすればそんなことは無くなるんだけど」


「そこで君にこの信用もクソもない世界であるラ・ラガスで信頼と団結という言葉を広めて欲しい…君は悪に手を染めるも良し、英雄として地を統べるのも良いし自由奔放に旅をしてもらっても構わない。これだけは覚えて欲しい」


 始めから断るような立場でもないからスウォーさんの言った通りに動くことは確定しているが流石に何にも持たずに生身でいくのは気が引ける、ましてやこんな弱い自分に出来ることなんて無いに等しいだろう。


「そこの所は安心して欲しいこちらも惜しみなく協力するよ」


 心の声をまるで聞いていたような回答が帰って来てビックリしたが相手は神様だからそういうのは何でもできちゃうか、と割り切ったがそれでも不安げそうな顔をしているとローさんは微笑んで指を鳴らすと目の前で光の玉みたいなのが二つローさんの体から生み出された。


「これは?」


「これは【創造魔法】と【統治】の技術(アーツ)だよ。技術は僕らが勝手にそう言っているだけでラ・ラガスにしたらただの魔法として認識されているからどっちで解釈してもらっても構わないよ」


「今目の前にある【創造魔法】は大抵の物ならなんら関係なく創れるし…もう一個の【統治】はこのラ・ラガスでの重要になる一つ、これは君が意識しなくてもずっと働きかけているから一番扱うのは【創造魔法】の方かな」


 確かに【統治】なんてものは自分には縁がなさそうなだけどどうなんだろう…と考えていると二つの光の玉が自分の中にスッと入っていった。


「よし、これで準備は完了だね。それじゃあラ・ラガスで信頼を作り上げてくれ」


 ローさんが話を終わらせた途端座っていた椅子が体をすり抜け自分の周りに穴が出来ていた。急に現れた穴に驚いたが何もすることが出来なかった自分はただ真っ暗な穴の中を落ちていくことしか出来なかった…






「あんな終わり方で良かったんですか?」


 隣に座っていたヒーラが話しかけてきた。急に入って話をどんどんと進めている中でも話を巧みに合わせてくれたお陰で綺麗にラ・ラガスに送り込むことができた。あとで感謝の気持ちとして何かしなくてはな


「君も彼にかなりと言っていい程可能性も感じられたのは事実だろう?多くの人間に認められてここにやって来た人間なのだからもしかしたら核に近づけることができるのかもしれない」


「例え何か不具合が起きたとしても私達に全くと言っていいくらいに問題はないから気にしなくていいよ」


 ソファから立ち上がり身だしなみを整え歩き始め手を耳に当てて他の部下に呼びかけを行う。


「どっかにいるアグーに至急召集してこちらに連れて来させろ。一応今回は魂は本物だから用心深く見張ってくれ」


どんなに強かろうが人に何か貢献できなくてはただの木偶(デク)だ。しかし人は気持ちや感情だけで物事を動かし意図しない何かを生み出すから辛抱強く見守らなくてはいけない…確か前の上司がそう言っていたが誰だっただろう。

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