町内攻防戦③
「今のも対処する?やっぱり人として戦うよりも魔物と同等の事をしないとあの理不尽すぎるあの魔法を突破する方法が無いんだよね…ルーナ、そっちは大丈夫?」
『かなり押されてる…!あの鎌使いの攻撃が一番危険で掠ったら絶対にやばい、ジェバルの仲間ってこんな危ない人達連れている印象無かったけど本当に何があったのか不思議に思うんだけど、そういうフリデップの方が…』
「ジェバルも大概危険視するのは賞金狩り全員が認めているからいいとして…一応こっちにはボス先輩が用意してくれた【靄】があるから大抵の攻撃は何とかできるけど、そのボス先輩が心配なんだよね」
『下級の魔物の部類に設定されているけど規格外な魔法を多用するウェールと名乗る死累人ね…』
以前、ジェバルの援護をしていた彼に言伝を送る程度しか認識が無かったがボス先輩は誰よりもその存在の事を敵対行動を取ったジェバル達の中でも一際素性を見せずに接敵した化け物と危惧しており監視員の中でも結構話題が尽きなかった人物でもあるのだ。詳しく聞けば魔剣を完璧に活用して迫ってくるし、弓兵である僕が接敵したら死ぬから気をつけろよ!と釘を刺される位だしどれほどの物かは理解できている。
さっきボス先輩だけがこの町の中に入ってこれていないと分かっているので恐らくそのウェールと戦闘が始まっていると思うがこっちも積極的に攻撃を仕掛けないとね、ジェバルが逃げたであろう細道に向かって弓を構えて力強く引き射ると矢は勢いを殺さずに壁を貫通し狙いを定めたジェバル・ユーストの元へと自然と引き寄っていく。
「【目標固定】、そのまま目標に近づいた所で【分裂】と【爆発】を…これも駄目かー」
「今まで通用していた手段が悉く使えなくなるのは結構トラウマになりそうだけど…まだまだあるから安心してくれよ、【隼】!」
細道を走りながら微かに残っている魔力を頼りに走りつつ取り出した少し特別な矢を装填してすぐに撃ち込んで空間魔法から取り出した三本の矢を引きながら【隼】の後を追うようにして初めに飛ばした【隼】がジェバルの元に辿り着いたのを音で、魔力で確認して一応当たったことが分かったから弓を【亜空間】に入れ込んで走り【隼】によって抉られた建物を飛び出すとフードを羽織っているのにどういう理屈で燃えているのか分からないジェバルがこっちを獲物を見つけたような目でこっちを睨んでいた。
「狙ってきている場所とは違って四肢から連続して貫き続ける初見殺しを飛ばしてきやがって…フィレグの【透過】の理不尽攻撃を彷彿とさせるな」
「マジで一年間ジェバルはどんな事してたの?」
小さく呟いた言葉はジェバルの剣から砕け落ちた真っ赤に燃える塊から溢れ出る炎の熱波が遮り、真横から大きく振られた魔剣を不慣れな剣術で抑え込み無理矢理弾き返してこの後、繰り出されるであろうジェバルの攻撃を避け、反撃するために【靄】に最低限の魔力を入れ込み準備をする。
「【煙霞】」
一時的に一帯を覆い尽くす靄に隠れてジェバルの攻撃をこちらに向かせないようにして【共有空間】から取り出した【隼】が付与済みの矢を取り出して手元に風魔法を集中させて爆風で靄が晴らされた所に反応が出来ないと判断してこちらに気付く前に発射する。
【隼】がジェバルに反応できない事を確認しつつ、【靄】を構えて先導して攻撃を行う矢を追うようにして走り出すが既に暴れ回るはずだった矢は目の前に現れた【水球】によって動きが制限されており内部に取り込まれていた【隼】が無残にもミシミシと音を立てて折り曲げられていた。
普通魔法の内部を動かすなんて見た事なんて無いし、不意打ちでの攻撃なのに難なく対処してくるし…小難しい攻撃でジェバルを錯乱させるとかは無意味なのか?バラバラになった【隼】を横目に見ながら構える状態にもなっていないジェバルに攻撃を仕向けるが振るった攻撃は空を斬り、さっきまでいた筈のジェバルはすでにそこにはいなかった。
「!?」
靄が完全に晴れて全体が見渡すことができる状態になったのだが、何処かに消えてしまったジェバルよりその場に残り続けている【水球】に視線を向けると物凄い量の魔力が込められたのが感じ取れたのも束の間、熱線のような何かが脹脛を綺麗に射貫き倒れ込むのと同時にその【水球】は姿を消した。
「あんなに殺傷能力高いような攻撃は異常だよ…」
自身を隠すために使った煙幕を上手いように扱われたし…さっきの水精霊みたいな奴一瞬で準備できるものなのか?それにジェバル精霊魔法なんて扱えるような物じゃないって言っていたから真に受けて信じていた自分が馬鹿だった…
「ごめん、逃げられちゃったし身動きが取れない状態になっちゃった」
『ちょっと…待って。こっちもかなり危ない橋渡っていて…』
仰向けの姿勢で射貫かれた箇所に回復魔法を掛けながら愚痴を吐きながらルーナに端的に失敗した事を伝えると、ルーナもルーナで話しかけるとタイミングを間違えたような気がしたので一旦黙って弓を準備する。ジェバルがどこにいるか分からないから狙う事はできないが現状把握位は【固定】を使えば可能だからね
矢に【同調】を施して他の監視員達はどうなっているか…というかボス先輩はまだウェールと戦っているのかな?そんな疑問を持ちながら覗き込むと悍ましい姿になっているルウェーがコジロウと戦闘を続けているが、別の場所に視線を動かすとあの双子はかなりの機動性を持っている猫人族と交戦中だったり…ボス先輩の方を向くとボス先輩がとんでもない出血量で戦闘をしていたのだが、反して無傷の状態で立っているウェールがボス先輩の攻撃を弾き返した時に何かが矢に向かって飛んできて強制的に【同調】が解除されたようだ。
「遠距離攻撃使えるのか…よし、足も使える所まで回復できたから動けるから個人的に怪しい所に移動するか」
立ち上がり体の不調が無いことを確認して矢での偵察の中で気になる所に向かって走り始める、もしかしたらそこにジェバルがいるかもしれないし物は試しって昔の【勇者】様が言う位だから賭けてみようかな。あと、結構危なげだったルーナに向かって援護射撃を五発ほど打ち込んでその場から離れる。
◆
「おいおい、余所見なんて戦闘中に一番やっちゃいけないことだってジェバルに言われなかったかぁ?」
「もうじき死ぬ皮だけの存在がどう言われようと知ったことはないが…その体で断鎌の要求にたっしてはないだろうに」
「そんなもん知らねぇ!もっと詳しく聞かせろよぉ!」
とか言って突っ込んだ所であの空中で動き回る五本の短剣が気持ち悪いくらいに邪魔してくるし上手い事あいつの何でもお見通しのクソみたいな顔面を刈り取れればこの不自然に募るモヤモヤも晴れると思うし何かしら動きたいんだが…どうするかだがさっきから【贈物:受託】を試そうとしているのだが一向にこの鎌から姿を変えないからそれほど固執する何かがないと…
視界から姿を消した短剣を放っておき、そのまま連続して攻撃を仕掛けてくるウェールの野郎と激しくぶつかり合いながらこのままだとジリ貧でやられてしまうことは確定な状況を脱するために苦手な考え事をしていたが、馬鹿正直に武器を扱っている自分に今更気づいて呆れていた。
「どうせ未練タラタラの誰かさんが遺した遺産を今になってただ純粋に扱うなんて馬鹿げた考えでいたとはな」
「?」
「お前もどうせ何かしらが無いとこんな気味の悪い武器を引っ張り出すような事普通起きないよなぁ!」
どうせ碌でもない因縁に勝手に片足突っ込んだ俺も俺もだが、この『断鎌』の扱い方がやっと分かった。魔力でただ単に能力を引き出すんじゃなくてこいつ自身を極限まで削り出すことで真価が見出せると俺は自分勝手に結論付けた…この後俺がやらなくちゃいけない事は正式に借り物から所有物として定めないと根本的に話が始まらない。
「こんな戦闘しながらやるもんじゃないが、さっきからマジな目でこちらを睨むアイツが結構度肝を抜かれるなぁ…」
「【英雄の奇襲】」
「うおっ!?ちんたらなんざ許してくれなさそうだからな、手短にやっちまうぜ?お前さんは死んでもなお立ち上がる性懲りもない存在を断ち切る為だけの存在…力の片鱗だけで倒してくれる程優しくないのは俺以上に理解してるだろ?」
ウェールが放った死角からの攻撃は不思議と勝手に鎌の方から動いたようにも見え、光のような速さだった短剣を難なく跳ね除け後退しつつ追撃を繰り返す猛獣の攻撃を躱して再度言葉を語り続ける。途中から言葉に呼応して扱いやすくなったような気もするが、それでもこちらの言葉に肯定的だと判断し喋り続ける。
「ちょっと力を拝借させて貰いたいが…いいよな?」
『………汝、眼前に立つ―――を絶たんが為この身を捧げん』
聞こえてきた言葉は何故だかこの事を望んでいるように感じ取れたが『断鎌』との直接的な繋がりは直接的には感じ取れないが多分契約は滞りなく出来たと考え込んでおいて、目の前にいるウェールに視線を移すと変な靄が掛かって逆に見えにくくなったんだが?!
「契約を結んで自滅するのは自分自身、その未練に操られるだけだ」
「そんなの知ったこったねぇ!やられっぱなしは気に食わねぇんだ。第二ラウンドだ、テンポ上げていこうぜ!」
【隼】:別名、初見殺しと勝手にフリデップが名付けているがルーナはそんな安直な名付けにやや不満を述べている攻撃。
元々間接的に矢を操作して攻撃をしていたがボス先輩からの助言を受けて【目標固定】を使って狙い先を固定した上で、矢に大量の付与魔法を施して狙った相手の肉体を連続して貫き続ける仕組み、試し打ちとして大型魔獣に類しているブラドゥレーと呼ばれている見た目は猪のような魔物に放ったが四肢を素早く貫いた後、そのまま致命傷まで攻撃を続け穴だらけに普通はなるが人に向けていい物ではない。
フリデップは早々に【煙霞】でも使って目潰しでも出来ていれば【隼】とか当たっていたのだろうかと考えていたり考えていなかったり…




