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ラ・ラガス~創造魔法で異世界を生き抜く~  作者: タツノオトシゴ
水天一碧の広大な場を駆け巡る
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水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の三十四

 本当に海底都市に来てから一瞬の出来事のようだった。比喩でもなく好きなゲームをやっていたらいつの間に時間が信じられない位過ぎている。あれから色々と祭りを回っていたのだがアウェルとフィレグの二人に会うこともなく残ってもらっていたウェールと合流した後、二号艦があるグクェフにシャールペントに転移魔法に似た魔法で移動すると既にマディーさんとグリエさんも近くにいた。


「一応帰る算段はあるんだけど素寒貧になった魔力でどうこうできるような感じがなくてジェバル君たちにお願いして乗せてもらいたいんだけどいいかな?」


「自分達もオルフィットが所属している『アルチャー』の海上調査とかで乗っているようなものなんで別に気にしませんよ。こちらも二人の助けがなかったら危ない場面がいくつかありましたから」


 そりゃ良かった、グリエさんが笑って返事を返すとオルフィットにも了承を得てくるとその場を後にした。周りでは『アルチャー』の人間が慌ただしく走っているので突っ立っているのは邪魔になると思い少し離れた所で創造魔法で簡易的な椅子を作って休憩していると後ろから近づいてくる気配を感じて振り返るとミイラとその付き人が近づいて来ていた。


「だから、まだ安静にしておかないと!」


「ここに来る時と随分と姿が変わったな…傷の方は?」


「ゆっくりとだが着実に治りつつあるが聞いたところによれば『海の王』は『お星様』全員に回復魔法を掛けたらしいが…どうなんだ?」


「シャールペントは痛みがあった方がその分強くなれるんだから別にいいだろって言ってたけどちゃんと回復魔法は掛けたとは確認はとってあるから」


 ルウェーは溜息を吐き左手の包帯を外すとざっくりと切り傷が残っており見るからに痛々しい、魔力をそこに集中させて治していたのだが少しすると綺麗になっていた傷口もだんだんと開き始めた。


「魔力の使えない時に【血の権力者】と戦ったせいなのか魔力に多少の耐性があるのだろうな、今は身動きの取れない状態になってしまった」


「ウェールに言われたでしょ?魔力の耐性がなくなったのを見計らって一気に治した方がいいので様子を見た方がいいって」


「だが…この量の包帯の量は必要ないと思うのだが?!イプロといいシグマリといい色々と心配しすぎだ。自分の事くらいは管理できる!」


 隣で騒ぎ立てている二人を放置して椅子に再度深くもたれて足りなくなった分の魔力の補填でもしようとした時変な魔力の動きを感じるとその場に魔力が集中するとアウェルとフィレグの姿が現れたのだがアウェルが物凄く疲れているような印象なのだが…


「ジェバル、すぐこちらに戻ってこようと思ったのだが後片付けと都市の復興も兼ねてフィレグの手伝いをしていて遅れてしまった。共に『星海祭』を楽しみたかったのだが申し訳ない」


「私も『お星様』には物凄い迷惑をかけてしまって…」


「あれは【血の権力者】が面倒事を作っただけで…守護者フィレグが一人でやった訳じゃないんでしょ?自分よりもルウェーが一番被害受けてて…」


「それは『海の王』自ら終わりにした話だ、完璧に回復させなかったことには多少苛立ちはあるが気にはしていない」


 平然を装って今を乗り越えているのだが冷や汗が滝のように流れている。【血の権力者】との戦闘で【水天一碧】の前提条件のために上下前後全てを水にする必要があった為建物とかを変光星とかで吹き飛ばしたのだがそれをすっぽかして気楽に『星海祭』を楽しんでいた。守護者としての責任があるのかもしれないだろうけど…それについて何もアウェルが言及しないってことは気にしていないって勝手に解釈しておこう。

 でも、フィレグと一緒に現れたってことは二人だけであの量の瓦礫を片付けたってことになるよな?本当に申し訳ない…合掌をしているとアウェルも面白がって同じように合掌していたがそういう意味じゃないんだよね。


「それにしてもこれが船というのか…これを使って移動するなんて想像できないな」


「懐かしいなぁ…地上にいる船大工のルーダは元気にしているのだろう。彼もこれほどの船とは言わずとも立派な船を造っていたんだ」


「フィレグの昔話はまた今度にしておいて…ジェバルに『お星様』としてもう一つ贈り物を最後に渡そうかなと思って急ごしらえだが用意してきたんだ」


「もうアウェルからは【縮微の水琴鈴】をくれたからこれ以上は…」


 土魔法で水平に保たれている大きな船を見て真反対な反応をする二人、アウェルとフィレグが自分の元に近づいてフィレグが持つ【宝物庫】のような収納魔法から一枚の布を取り出した。

 鈴の音色が聞こえる範囲の魔法を全て何事もなかったようにできる強力な魔法道具をアウェルから友として既に貰ったのに追加で渡そうとしてくれる物は一体何なのか


「これは私の【透過】をお父さんの力で移した外套(コート)、【空疎の外套】です。私が地上だと色々と制限が多くてあまり行動できなくて隠れながら生活していたからこれをうまく活用してほしくてこれを…急いでいたので『お星様』全員分は作れなかったので一つをジェバルさんに」


「試しに着てみるとして…」


「フフ…ジェバルの首だけ浮いてるのが想像よりも面白いな」


 フィレグが手渡してきた布…自分の手に持つとまず驚いたのはそれまで青色だった布が自分から見える【空疎の外套】は灰色の地面と同化していたのだ、体をすっぽりと覆うことができるほど大きく羽織った時は全く重みも感じなかった。

 外面だけみると首だけが浮いているように見えるらしくルウェーには笑われたがこれを最後にフィレグが言っていた全員分用意できなかったという言葉に驚いているとフィレグはそれくらい『お星様』に迷惑かけてしまったと言っていた。


「あと私から最後に一つここには来ないお父さんから『海の王』からの言伝…『為せば成る』これだけ」


「為せば…なんだって?」


 『海の王』の言伝に首を傾げるイプロとルウェーは言葉の意味を知らない様子だったがアウェルは納得した顔で腰に掛けていた【千羽戯楽】を触れていた。『海の王』は行動すれば出来ないことを可能にできると言いたいんだろうけどイプロ達にとってはそんなに難しい言葉だっただろうか、少々突っかかるが言葉は受け取っておこう。


「ジェバルさーん!船の準備が出来ました少ししたら『海の王』が転移させるって守護者が仰っていて!」


「分かった!今行く!」


「時間だな…また逢おうジェバル」


「それじゃ元気でなアウェル」


 フィレグから『海の王』の言伝を貰った後船からオルフィットが小さいながらも拡声器みたいな魔法道具を活用して声を掛けた。先にアウェルとフィレグに挨拶をしていたルウェー達は船に移動し始め、自分も二人に別れの言葉を掛けて船へと歩き始めた。

 『アルチャー』の人たちに船の上へと手を引っ張って貰いさっきまでいた所にいる二人の姿を見ながら『海の王』の魔法なのか理解できない何かに吸い込まれ誰も認識できない内に大海原へと転移していた。


「ジェバルさん、海底都市にいたのがあっという間でしたね」


「そうだなぁ…港に着いたらゆっくりと休憩したいし色々とやる事があるだろうけどまずはガドマに武器とか諸々見てもらわないとかな?」


 身体が大きく揺らされるが『アルチャー』の各々が持ち場で慌ただしく移動しているなか船尾に回って何もない水平線を眺めていると後ろからシグマリが声を掛けてくれた。船が着いたとしても『アルチャー』のお偉いさんと海底都市について事情徴収とかありえそうだからな…その時はオルフィットを肉壁にして逃げるとするか


「前方に島を発見しました!このまま波止場に停泊します!」


 船内にとてもよく響く声の後、無事船を停める事ができて船に降りて体を伸ばしながら休憩できる所か座れる場所を求めて歩いていると先に降りて確認を取りに行ったオルフィットと『アルチャー』の職員の数人が戻って来たのだがどうも様子がおかしい。


「どうした?支部拠点が留守中に無くなってたりとか?」


「いや違うんですけどあまり縁起の悪いこと言わないでください!えっと確かに支部はあったんですけど最後に訪れたあの港の支部じゃなくて商業国家ファークトの支部らしくて…本当に我々も知らない支部でして他の職員が今事情を説明するから待ってくれと…」


「ジェバルさん…」


「商業国家ファークトは記憶だと技術帝国ドモヒュリルの南にある国家な筈だぞ」


「ルウェーさんまで何言っているんですか…そんな国名知らないですよ。ジェバルさんだってそんな国知らないですよね?」


「ルウェー、技術国家(そこ)ってアストラル王立国家の隣だよな?」


 オルフィットは知らない国名を連発する自分とルウェーに終始疑問が絶えない表情を続けており小さくブツブツとこれは夢なんだ、これは夢なんだと連呼するようになってしまった。確かに海底都市から自分の知る所に戻ってきたらそういう状況になるのは分かるがまさか辿り着く島を間違えたのか?で海上調査をしていた段階だった『アルチャー』が海を越えてこっちで支部団体を持ってきたのはおかしいだろう。


「船が来る場所を間違えた感じ?それも『アルチャー』の本部があるほうじゃなくてマディーちゃんとかジェバル君達の故郷に来たってこと?」


「そういうことになりますね…自分とルウェー、マディーさんはこっちの人間なんで場所というか理解できるんですけど…こっちになった原因としては…」


「十中八九『海の王』の仕業だろうな…怪我の治癒も中途半端にしておいて次は行き先を勝手に決めつけて面倒なことを続けざまにするとは…」


「まずはここにある『アルチャー』の支部団体から情報収集することにしましょうか」


 心配そうにするシグマリに大丈夫だ、と声を掛けて今後どうするかは取り敢えず取れる情報収集からしていくことにするしかないようだ。港に豪華な宿泊施設があったからそこでゆっくりしたかったがそんなことは言っていられない状況になってしまったからやる事やってからゆっくりとしようか

 情報過多でおかしくなったオルフィットを再起動させてまずは味方である『アルチャー』の施設に足を運ぶ。





「行ってしまったな…」


 また逢う約束をしたジェバルはまるであの日のレルトのような端的な言葉を残してこの海底都市を離れていった。去ってしまった我々もまた動こうと足を動かすとずっと隠れていたシャールペントが笑って近寄って来た。


「【勇者】様とあいつはよく似ているからな、寂しくなったか?」


「レルトと同じようにまた逢うと誓ったんだ。それなら私も何があろうと何でも動く」


「ならどうするだ?」


「まずはパーラの瓦礫処理と復興の手伝いを…と言いたいところだがまずは『海の王』と話すことがある。フィレグ、『海の王』の元へ連れて行ってくれないか?」


「いいけど…大丈夫なの?」


「心配するな、今も『海の王』はどこかに耳を生やして話を聞いているはずだから気にすることはない」


 自らを造った『海の王』にここまで豪語するのは初めてだがこれからこれだけで怯えていてはいずれジェバル達に強く自分を見せることはできないからな。震える左手は【千羽戯楽】に添えて行き場のない右手はまだ強く握り締めておく。


「アウェル…話は素早く済ませたい。私に何を望むのだ?」


「『海の王』…私を――――」


 予想通り姿を現した『海の王』にたった一言、この言葉が遠い未来彼らの隣に立てると私が思いついた唯一の考えだ。

 ピッタリ一年間海の底で時間を過ごしてもらいました。【血の権力者】とか色々と書きたいことが盛り沢山だったんですけどしっかりとこの章を書き終える事が出来て本当に本当に良かったです。

 次章は再び故郷とも呼べる島に『海の王』によって辿り着いたジェバル一行が商業国家ファークト、国家全体で始める壮大な計画に巻き込まれる…そんな章を予定しています。


 次回はプロローグ込みの間章を挟みます。

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