水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の二十一
―――――私の意志なく蹂躙し地を、思い出も、あの時の感動すらも押し潰した後、私は同じ空を見る。遠く昔に降り私に多くを教えてくれた彼は今どこに……
早く苦しいこの悪夢を終わらせてほしい、私はただただ願い続ける。
……
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………………
神殿の外に出て都市の方に逃げた、この言葉を聞いて動きが自然と足が止まったのは言わずとも分かるだろう。アウェルは多分果物を使って転移したルウェーを追ったかもしれないと言うがルウェーが果物を使って転移魔法を使えたなんて初耳だ。こういう所でちゃんと仲間に伝達しないから急な時に意見が食い違ってしまう。
「ルウェーがその果物?で転移したとしてその場所は?」
「ここパーラでルウェーが知っている場所としたら途中休憩していたあそこぐらいしかない筈だ」
休憩地点としていた場所ならここからはそう遠くないが…今手持ちにある転移魔法の魔導書を使ったとしても間に合うとは考えられない。
「私が影を伝ってルウェーの所にすぐ向かいますので二人は私の転移魔法で転移させますが数秒動けなくなるのでそんな状況で主とアウェル殿に危険な目に遭わせたくないので遠くに転移させますので面倒ですが合流するようにしてください」
流石自分が召喚しただけある死累人…できる奴だ。感心していると自分の伸びていた影の中に入ってその場から姿を消し流れるように転移魔法が発動する、長く続く廊下から崩れ落ちた建物がまず初めに視界に入った。辺りを見回しながら魔力感知をすればかなり遠くにいるのに【血の権力者】を認識できてしまうのだ。取り敢えずデカいのは分かった。
ウェールの言った通り少し距離はあるがすぐに走れば問題はない。手に持っていた変光星よりも今は新星を【宝物庫】から取り出していると横では魔導書を使って氷の刀を生み出していた。
「それにしても…【血の権力者】は何がしたいんだ?急に神殿に入ってきた我々を襲うなり場面を掻き乱してすぐに逃げたりと行動に一貫性がなさ過ぎる…ただ私はフィレグを取り戻したいだけなのだが…」
「こっちも火付け人として動いていて守護者に合格認定貰わないといけないから何とかしてフィレグの救出をしたいんだけど…」
アウェルがポツリと呟いた言葉を拾って喋るがこっちも『海の王』直々の試練だからな、それに死ぬ気で動くのは今まで通りでいいんだろうが…そもそも【血の権力者】がフィレグを取り込んでいた経緯が良く分からないんだよな。アウェルが言っていた一時期姿を消していた間にあるのは確定っぽいが…あー止めだ、走りながら考えるがうまく纏まらないので一先ず後回しにしておこう、今はウェール達との合流が優先事項だ。
そこを右だ、アウェルに従って右に曲がると一本道とは言えないがさっきよりも良く見える場所に移った。ルウェーのいる場所では既に戦闘が始まっておりウェールが軸となって攻撃の手を止めていなかった。
時々目で追えないぐらい素早い攻撃みたいなのがあるみたいだけど魔法で自身を強化しているようには見えないから他の何かなんだろうけど…見惚れていないで自分の方も準備をするのだが遠くの方で見えた【血の権力者】の体が本当にくの字を体で表した吹き飛び方をして建物にしがみつこうとしていたのを阻止していた。
あれほどの火力を出せるのは多分ウェール位かなと思ったのだが直後グリエさんが大鎌を持って攻撃しに動いていたのを見えたので多分さっきの奴はグリエさんだというのが分かったのだが…吹き飛ばされた【血の権力者】の形状が悪食ではなく
「一、ニ、三、四、五…八?」
八つの頭を持つ大蛇へと変わっていたのだ。確かに遠くだから見間違えたのかもしれないし魔力感知じゃないから正確じゃないのは有り得ると思いもう一度目を凝らした後に魔力感知を使用してみるとあら不思議、やっぱり頭も首も八つだしそれまで胴体だった悪食の面影がないしヤマタノオロチとかいう御伽噺に出てくる類の奴が今パッと頭に思いついたのだが
短い冒険者時代に混合種とかいう鶏と蛇が合体したような魔物は見たことがあるけどこれはこれで目を疑うような光景で自然と足も止まってしまった。それでも攻撃しに動き続けるのは勇気あるなぁ…などと思っていると不自然と動いた瓦礫に魔力を感じ遠くで暴れている【血の権力者】を見て固まっていたアウェルを警戒するのだが緊迫している状況から瓦礫から飛び出したのは…
◆
「すいません、足止めすると言ったのに逃げられてしまいました」
「自分も抑え込むことができなかったんだからそこまで気にすることはないだろう…何もできなかった自分が言えることでもないんだが」
「色々と縛りの中で動けた方だと思いますよ、それじゃあ私はここで【血の権力者】の攻撃と防御に徹しますのでお二人はできれば攻撃の手を止めないようにお願いします」
だんだんと近づいてくる悪食を睨みながら戦う準備をしている中自分のすぐ真横にウェールが転移してきてすぐ謝罪の言葉を言い始めた。ウェールが自分から任せてきたことだったし自分が戦っていた【血の権力者】さえまともに戦うこともできなかっ他のに耳が痛い。
直後足元が大きく揺れて足元が覚束なくなるが接近してきた【血の権力者】が図太い腕が突っ込んできたが前に出ていたウェールが前に出て弾くとカウンターとして連続して斬りつけていたが全く怯みもしなかった【血の権力者】を吹き飛ばしたのは大鎌を持っていたグリエだった。
「ぼーっとしてないですぐに追撃!容量的には神殿に行くまでの悪食と同じ感じで大丈夫なんだよね?」
「手数が増えているのでそこの所は警戒を続いて叩き込んでください」
グリエの手に握られていた大鎌が再度壁を破壊しながら迫ってくる腕のような形状をしている血を断ち切るとすぐにマディーが氷魔法で相手の動きを止めて攻撃をしていた。【闘志の果実】を生み出して動きはいつも通りに戻してマディーの後を追うように攻撃をする。
「【朱雨】!!」
瞬時に込められた魔力が攻撃へと変換されて放たれた魔法は近くにまで迫っていた【血の権力者】の腹を抉るようにして攻撃が当たった。強烈な一撃に耐えられないのか保っていた体が粘着生物のようにうねり続けるとそれまで悪食の姿から一変して八つの首を持つ蛇になっていた。
「全部の頭数を集めてこの巨体って凄いな…元の姿がこれってことは数えやすいってことか」
「【緋岸竜の大鎌】…?まだ暴れ足りないだろうからもう一度起きて仕事しようか。君は暴れる事しか脳がないんだからこれくらいは得意分野でしょ?」
突如として気配自体が変わった【血の権力者】だがそれまで三つ首で暴れ回っていたのが八つの首になってこれ以上に暴れ回ることを想像すると少し不安だがそんなことを言っている程余裕はない。体に鞭を打ちすぐに建物から降りると突然の襲撃に戸惑いつつも武器を構えて迎撃を始めるマディーがいつでも魔法を放てるように魔力を練っていた。
そんな時だった。
『もう少しで記憶が辿れる時間が来る…それまで嬲り殺してやる、血は全てを牛耳じ摂理はこの不安定な盤面を成り立たせる血縛則【混血調】』
低く、その上籠りに籠った声が辺りに木霊する。その言葉の後【血の権力者】の真後ろから先程までいた建物以上の高さの血の波が押し寄せていた。魔力感知をしてみるとその波の中に小型の悪食がいるというオプション付きだった。血の波がだんだんと小型版悪食へと姿を変えていくのを見て冷や汗が止まらない
「ねぇ、マディーちゃん。あれって広範囲の魔法を最大限に高火力に仕立て上げました!って言うのを見事現在進行で見せつけられてるんだけど…あれってマウントだよね?」
「…足止めとか足場造りの【氷結世界】が常時発動している中大量の【雪泥鴻爪】が暴れ回る的な…?でもグリエそういう系統の魔法使えるって自慢してきた記憶があるんだけど」
「あれはただカッコつけたかっただけで…!」
「その広範囲の魔法の対処は私がやりますのでマディーさんは【血の権力者】を…それと安定した場所が欲しいので【雪牡丹】」
冷や汗を掻いていた自分が馬鹿馬鹿しいと思えるような会話が隣から聞こえてくるがその中でも冷静さを保っていたウェールが作り出した一つの花を中心に冷気が垂れ流し続けて足場が凍っていった。
「これ【氷結世界】と同じ奴…!?え、使っていいの?あ、ありがとうございます…【雪泥鴻爪】」
「それじゃあ…一点集中で波に穴空けて走って優雅にマウント取ってくるあの八つ首の蛇の邪魔をしようか」
ウェールが生み出した一蕾が少しづつ開くにつれて冷気が強くなっていきその分【雪泥鴻爪】…氷の剣が生み出されてき勢いよく目の前に迫る小型悪食を蹴散らしていき波に穴が出てきたタイミングを見計らい全員で突っ込んで抜け出すとマディーが大鎌を振り上げて波動のようなものを飛ばし近づいて斬りかかる。
『その大鎌…!』
「その様子は緋岸竜って分かるってそうだねぇ…!マディーちゃんはすぐに援護に回ってね!こっちは死ぬ気で畳みかけるよ!」
グリエが攻撃をした後すかさずカバーに入りに動いたのだが払い除けるようにして視界外からの攻撃を【淵明闘竜】が防御しすぐに安全な場所に後退するように服を噛んで移動する。【闘志の果実】を砕き喰おうと突っ込んでくる一本の首の前で地面を叩きつけて跳躍し【血の権力者】を足場にしながら剣を差し込みながら前進する。
走りながらも他の首が押さえつけるようにして来るが氷の剣が連続して差し込んでいき行動自体を止めた。多分危険だと思ってくれたマディーの援護だろう、【淵明闘竜】がすぐに再度走る体勢に戻してくれた。
「良くて二本…できれば三本!」
【竜闘刃】を体に巻きついていた【淵明闘竜】に預けて空けることができた自分の手をズボンのポケットに突っ込んでただの石を取り出し何もしないで様子を見ている二つの首に向かって力一杯投げ込む。綺麗な放物線を描きタイミングを見計らい紫色の果実…【招致の果物】(ヴェント・プレッグ)を砕き先程投げて高く飛ぶ石と自分の位置を交換する。二匹の蛇と目が合い目の前に現れた自分に驚いた表情をするがすぐ【竜闘刃】を引き抜きながら握り締め横に薙ぐ
「【円天なる光導】」
数秒だけしか魔力量に依存するこの魔法に近い剣術は一つの蛇の首を綺麗に断ち切ってそのまま地面に滑り落ちていったのを確認したのだが…狙っていたもう一本の首は間一髪の所をうまく避けられてしまったのだが半分は斬る事ができたのにあと少しで斬れなかった。斬り込みが入った首がゆっくりと繋がっていくのを見ながら自然の摂理に従い落下して行くのだが生憎ジェバルのようにそれを無視して空を移動することはできないからな、叩きつけるために物凄い勢いで極太の血の塊がうねったが根気強く【竜闘刃】を振り断ち切ることに成功した…
『グァアアア!!よくも首を落としたなぁ…!散れぇ【瀉血】』
「目は覚めたんだからここからは全速力【朱穿】!」
三つ…いや四つの首がこちらに向けて息吹の準備をした瞬間にすぐに吐き出される血反吐が燃えて飛ばしてくるがそれすら振り切った大鎌が瞬時に形を変えて槍へと構造が変わりすぐに身体に向けて投げた。槍は【血の権力者】の腹部を穿ち一瞬動きが止まったのを見て【淵明闘竜】の尾を掴んで近くにある建物に避難して使い切った魔力をすぐに回復させるために【闘志の果実】を砕いてすぐに動けるようにする
「【解朱】!」
さっきまでいた所では手から離れた槍がグリエの声を聞くとすぐに彼女の手の元に引き込まれるように戻っていき槍から大鎌に戻っていた。深呼吸して入ってきた窓からもう一度攻撃をしようとすると隣にウェールが転移していた。
「私が最低でも二本は落とすので続くようにして攻撃してください【火星】」
「おい、ウェール…お前明らかに身体から火が出て燃えているが…魔法なんだよな?」
喋りながら魔力の回復を促すために【闘志の果実】を砕いている中急に体から火を吹くようになった奴が目の前に出てきたら驚くのは当然の反応だと言うのに何でそんな過剰反応するんですか?と表情で訴え掛けてくるのはどこぞの阿呆とよく似てるもんだな
「一応これは魔法ですが元より死んでいる身ですからそこまで気にしなくても大丈夫です、服に関してはとても大事な物なので魔力で守っているので燃え移る心配はないのでご安心を…それより確か【血の権力者】には炎がいいんですよね?」
「魔力で守るって相当…あぁ、そうだが何で今それを?」
「今から焼き尽くしにいきます…それだったら他にもいいものがあるんですけどさっき叫んでいた『血縛則』がどんなものか分からないのでルウェーも気をつけてください」
「焼き尽くすって…お前あんまりそういう系統の魔法使ってるの見た事…いや何でもない」
半分は崩れている部屋の中を照らすことができる程燃えている訳だが黒で統一しているウェールの姿を見続けているせいかすごく違和感が働いている。そして、ウェールの言った焼き尽くしに行くと言った言葉から止めようとしたのだが頭の中で常に燃え続けて変則的な移動をする奴が浮かび上がって諦め再度戦闘に戻ろうとすると体に違和感を感じた。
「成る程…これ極力【血の権力者】から離れない方がいいのと攻撃も受けない方がいいですね」
「…何でだ?」
「さっき転移する時に判断ミスで擦り傷程度だったんですけど今になっては止血して何もなかったんですけど急に傷が開き始めました。それにさっきまで近くで暴れ回っていた【血の権力者】ですがマディーさんやグリエさんがここから離れてから効果が発揮したのかと…」
確かに準備をしている間ウェールには何ともなかったのに急にこんなことを言うのだから本当だろう…自分だって変な感じがするからな。ポッカリと空いた壁からは近くに【血の権力者】が見えるのを確認して飛び出そうとしたのだが燃えている手が肩に掛けられるが熱は感じなかったのも束の間視界が変わって目の前に【血の権力者】が立っていた。
「そっちは大丈夫?さっきから私もマディーちゃんも体が変な感じがするんだけど……えっと、何でウェール君燃えてるの?」
【雪牡丹】:ウェールが【氷結世界】をアレンジしたオリジナルの魔法。
氷魔法の専門家「こーれ頭おかしいです、かなりの魔力を消費して凍らせることに特化した魔法なのに少量の魔力で近しいのができるのおかしいでしょ!」
ウェール「主も理想に近い【氷結世界】使ってるし主の仲間も同じようなに使っているんだし自分好みにアレンジしてるから関係ないね」
血縛則【混血調】:広範囲で常時弱体効果を放つ、機能を失って害を齎す古血は鮮血に混じり合い平常そのものを狂わせる。
実はこれを乗り切る方法はもう出ていたり




