水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の二十
―――――雨が降っている。深海に存在する五つの都市全体を覆い尽くした魔法は足止めをするための準備には十分過ぎたのだ。
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自分が先頭に立って攻撃と防御を変光星の二つの型を多用してこなしていて、攻撃が激しくなって対処ができなくなった場合に後ろでサポートとして動いてくれているアウェルとマディーさんが援護してくれている。うまく戦況を運んでいたのだが…
「少しずつだけど大きくなってる…?」
自分と入れ替わるようにアウェルとマディーさんが戦いに向かってこっちに攻撃が来ないことを確認して休憩を挟んでいる時にふと気が付いてポツリと喋ったが…
戦っている時には分からなかった、というより気付かないような戦い方をしていたので周りを見て戦うようにしておかないと連携なんてクソもないから一応反省会はしておこう。
しかし、大きくなっているのでは…?と考えてしまったためかそう見えてしまう思い込みに繋がってしまうが理由を考えてみるとさっき逃した二本首の【血の権力者】がアウェルの戦っていた三本首の【血の権力者】に吸収されて五つ首の形状になり時々面倒な戦闘をしてくる所からその分身体を支えるために体を肥大化させている可能性もあるしこれだ!と決めつけるような考え方はできないけど今考えた仮説が正しければ大きいと感じた理由が付く。分からんけど
大きい小さいの差異の流れで少し変わったと感じるといえばアウェルの持っている刀…確か【千羽戯楽】っていうすごく大事にしている刀から魔力とは違った物が感じられる時が何回かある、アウェルは気づいていないのかそのまま放置しているか分からないけど魔力感知が使えない状況だから変に感じてしまうところがある。
【血の権力者】との接触を繰り返すごとに感じやすくなっているのにも関係があるのだろうか…そもそも海底都市で武器と言っても大抵が石製、稀に鉄みたいな物もあるけどそもそも武器自体耐久性はほとんどないものが多いのを理由に魔法が発達しているのだろうけどそれだけで成せるものじゃないからなぁ…
(アウェルの刀にも何かしら…何かしらあるはずなんだが…)
「ジェバル!そろそろバトンタッチ!」
「……了解!」
変な方向に考えを進ませるよりもまずは【血の権力者】をなんとかするのが第一目標…前に立って戦っていた二人が目の前を覆い尽くすような攻撃をし終えて下がり自分が前に出ると同時に攻撃を打ち消すほどの攻撃を放つのを見てすぐに変光星で弾き飛ばすと【血の権力者】は気色の悪い笑い声をしながらこちらを見ていた。
『二つの機能を持つ魔剣を起用に扱う人間!あの氷魔法を使う小娘とアウェルも普通ではあり得ないほどの攻撃方法だがお前…ジェバルと呼ばれる人間がこの中では一番脅威だ!』
「嬉しくない褒め言葉いらないね、こちとらお前に構っているほど暇じゃないんだよね」
すぐに後退して【血の権力者】の腕が近づいていたのを確認してすぐに【回転型】に変えて対処するとまたも変な笑みをしながら攻撃を繰り返してくる。とはいえこいつも連戦続きの長期戦…疲労とか溜まっているとは思いたいがそんな片鱗見せてこないってことはまだまだ余裕ってことなんだろうな
足元に狙いを絞った斬撃が連発して飛ばしてくるがこっちに飛んですらないものは優先的にこちらが動く、踏み入れた足を動かすが床に飛び散っていた血痕から血痕に向かって赤黒いビームを飛ばしてくるので大きな動きは抑えてこれも同じように近くに来るような攻撃には対処をするように動くがそこに容赦なく飛ばしてくる攻撃に息を呑みながら叩きつけて隙間を見つけて逃げるが反射する攻撃に【水盾】で防ぐ。
気持ち悪いくらい正確に攻撃してくる部分がより一瞬一瞬の判断を急かされているようにも感じる。【超煌弾】で血痕諸共吹き飛ばして【血の権力者】に近づいて変光星を振るのだが悪食の姿の肉体に変光星の刃が当たっている感触がないところから横に断ち切ることよりも悪手だったことを考え床に向かって振り下ろして【起爆】を狙う。
『遅い!』
「【煌輝燦禅】!!」
床と変光星が接触するよりも早く動く【血の権力者】の腕が近づくがアウェルの放つ当たるはずのない攻撃は【透過】に関係なく勢いよく斬り刻まれすぐにアウェルは自分の肩を掴んでマディーさんの元に投げ込みすかさず追撃に動きを移す。
「やっと届いた!フィレグを返してもらう!」
『やっぱりそれは届くのか…忌々しい!』
アウェルと【血の権力者】が共に叫ぶと再度戦いが始まり後ろで見ることしかできなかったのだが今まで止められていた枷が消えた感じがしたのだ、魔力感知が使える…!すぐに前を向くとアウェルと【血の権力者】との戦いが見れるのだが魔力の塊だけが動いているだけだった。ならば目の前で暴れに暴れている【血の権力者】は魔力で動くただの人形?本体はどこに…
『……主、聞こえますか?』
「ウェール?!」
『要件だけ言います、本体はこちらの残りの体の回収に動いている状態です。今止めていますが逃げられる可能性があるので連絡しておきました』
「大丈夫なのか?!」
『今は…です、過剰な期待は私が押し潰されてしまうので程々にお願いします。最後にルウェー殿に伝言を“ここから速やかな退却を”と』
魔力感知が正常に動き始めたと思ったのだが耳に流れてきたのはアウェル達が初めに探索した遊び部屋の筈…そこで何が起きているか分からないが本体はウェールの元で戦闘をしていると言うことはこっちは偽物。すぐにでも…!
『バレちゃっタカ、なら隠さなくてもイイヨネ【禍血】』
「【火蝶風月】!!」
【血の権力者】の姿を偽っていた魔力の塊が最後に喋った後自身の体を槍に変えアウェルの元へ飛び込むがアウェルの放った対になるような攻撃が打ち消して跡形もなく消えていった。明らかに威力が低かった攻撃だったが魔力感知には先程まで戦っていた【血の権力者】の魔力は跡形も無くなった。
「ジェバル!今のウェールの言葉は本当なのか!?」
「ウェールが言う事に偽りはない筈だ…それまで使えなかった魔力感知が使えるようになった途端聞こえた訳だし一瞬だったのもあって…」
一瞬で色んな事が起こっている、それに【血の権力者】は何がしたいんだ?アウェルを狙った襲撃だったら今のまま攻撃を続けると言うのに自分から自滅する行動をした。本体は今やウェールの所で戦っていると聞く、それに対してウェールはルウェーに伝言まで残した…すぐにルウェーの元に駆け込んでこの事を話して神殿の外に出るか【血の権力者】と戦っているウェールと合流する…迫られた二択を間違えれば取り返しのつかないことになる。
アウェルが大きな声で駆け寄ってマディーさんは霜ついた手を払いながら両者とも自分がどちらを選ぶか判断を任せているのかこちらを見たまま動かない
「……マディーさんは今の事をグリエさんとルウェーに伝えてください。アウェルと一緒にウェールの元に行きます」
「分かった…気をつけてね」
マディーさんがすぐにさっきまで来た廊下を戻る後ろ姿を見送ってすぐに自分達はすぐ近くだった大御所のホテルにありそうな立派な階段を駆けるように降りていくと左方面から大量の魔力が漂っていた。
♢
『誰でも自分がなんとかするって仲間に大見得を切るっていうお決まりがあるのは知っているけどまさか本当にするとは思わなかったよ、君普通より魔法や剣術が強いってだけでそこまで強気に出るその心意気は認めるよ』
「ただの事実に虚言を重ねてどうするつもりだ【血の権力者】よ」
部屋全体を埋め尽くしている【血の権力者】から掛けられた言葉を平然と返してしまう自分はまだまだだと理解できる。主はこれくらい軽く受け流す程度のことをする…『燦澹』を構えると腕らしきもので叩きつけるようにするが全て斬り刻み血だけを【火球】で焼き尽くす。
「戦いの基本の動きを知らずに間合いに入る事自体が悪手…結果これだが」
『……さっきの言葉は訂正させて貰いたいけどいいかな?まぁそれを呑んでの話にするけど君…死累人でしょ?数少ない記憶からだけどこんな場所で時間潰すなんて有意義過ぎると思うんだけど』
「話すならその【血刃】は必要ないのでは?」
うまく隠していたつもりだったのかもしれない【血の権力者】の【血刃】はこちらを正確に狙っていたし話を続けていても無理だと考えたのかそのまま攻撃として飛ばしてくるが前もって向けていた『燦澹』で打ち消すと全方位を埋め尽くすようにして攻撃をするが魔力を瞬時に込めて深呼吸をする。
「剣王竜転奥義【金星】」
すぐに放たれた光線が攻撃行動をしてきた【血の権力者】に当たりそうになるが…光線の部分だけを器用に避けカウンターをしてくる。振り払うように『燦澹』を振り攻撃を捌いていくが【血の権力者】は血を垂れ流しており原型を保っていない状態から一点に集まっていき少女の姿へと変わっていった。
色々な生物に寄生する【血の権力者】が完璧に体の形としてなっている以上、目の前の少女はアウェル殿が言っていた守護者の立場に立つフィレグの可能性があるのなら悪食の姿に変わることもできる可能性もある。
『甘いね!』
華奢な体から想像がつかない動きを平然としているのだが、魔法職として二つ目の目として機能する魔力感知を取り戻せたのはとても大きい。真後ろから放たれた【血刃】を散り散りになっていた【金星】がそこに一点集中で蜂の巣にしていき攻撃自体を封じて静かに『燦澹』を構える。
ルウェー殿の代わりに戦った【血の権力者】の核を仕留めてから魔力感知が使えるようになったところから考えるに…守護者という立場に立つフィレグの体の主導権を奪って契約魔法を結んでいる…強制的にだろうな。だが核を三分割したことで契約魔法も三分割になったとすればこの魔力感知を使わせないというのが契約内容なのだろうな
今思えば主と共に狼の姿をした【血の権力者】の核を潰した時は溶けるように消えたというのに木の実に化けていた奴の核を潰した筈だが血液という液体だけはそのまま残り続けてアウェル殿が無いと言い張っていた部屋の中を真っ赤に染めていた中血の処理に考えを伏せていると気配を消して入ってきた残りが壁全体を巡り回って回収して攻撃に回って今に至る訳だが…難しいな
『そこだ!』
「闘嶽真流『翡翠』」
『燦澹』を鞘に戻して主が教えてくれた居合の形を取り勢いよく抜く時に放たれた翠色の剣撃は近づいてきた【血の権力者】の腕を断ち切り、一直線に届いた剣撃は魔力感知で微かに見えていた核を真っ二つにした。
「これで二個目だ」
これで魔力感知と同様に何かの契約が破綻されて何かしらの効果が得られると思いたいが…それよりも核潰しよりも優先されることは大量に残っている。今は断片的な魔力感知しか機能していないがより念を込めるように目を凝らすようにしてドロドロと流動的になっているあの血の中に隠れている…いや隠されている腕・を探そうとするが違和感を感じた後確信に変わった。
「…部屋が!」
『待ってたよ』
「押し出す!【海王星】」
明らかに部屋が縮まっていくのを感じすぐにこの部屋から脱出を図ろうとするがそれを許さない【血の権力者】は私を囲むようにして迫ってくるが【海王星】で周りを囲む血を無理矢理押し出し部屋から出ると連続してナイフの形をした【血刃】が頭を連続して狙ってきた。
残っていた【海王星】の水を使って体勢を戻すまでの盾としても機能を果たしてもらいすぐに本体に向かって三度『燦澹』を振るうと合わせるように悪食の姿へと変化すると小さな悪食が連続してこちらに放たれ邪魔をする。
可能性としては分かっていたが部屋での圧死を狙っていた訳か…契約した可能性のあるのは神殿には存在しなかった、または隠されている部屋の消滅。魔力感知がなければ誰でも引っ掛かる初見殺しと言った所か…意地が悪い。そんな悪口を心の中で呟くだけでも相手には聞こえるのだろうか分からないがこちらを見て薄気味悪く嘲笑う。
『そろそろ面倒なのが来るみたいだからここはお暇させてもらおうかな』
「――――ッ待て!」
すぐに『燦澹』を振るうが【透過】の状態になっていた【血の権力者】は攻撃を避けながら扉に近づいて壁を通り越すとそのまま神殿の窓を通り抜けていった。すぐに廊下に出るのだが既に窓の外に出ていってしまった。
◆
想像以上に回りくどいことをしてきた【血の権力者】…アウェルやジェバルとの戦いの中でも牙を剥き続ける一種の呪いのようにも捉える事ができるそれはどんどんと体を蝕んでいく。
「回復魔法を掛け続けているのに血が止まらない…」
「腕を斬られた時に仕込まれた感じだな、グリエ…【火球】か【火炎球】は出せるか?」
「え…?なんで?」
今も回復魔法を掛け続けてくれるグリエに魔法を出すように頼んだのだが普通に戦闘以外に使い所のない魔法をここに出せと言われても反応に困るのは当然のことだろう…切断された腕の近くに自分が出した【火球】を生み出しその近くに体を寄らせた後【火球】に押し付けるように腕を前に出す。
痛みが全身を巡るが回復魔法が通用しないのならこの場で止血するのに一番効果的と考えた焼灼止血…原始的な方法だが垂れ続けていた血が収まりつつあるのを確認していると体を火から遠ざけるようにグリエが引っ張ってきた。
「なんで火の魔法を頼んでくるのか不思議だったけど血管を焼いて止血するためにここまでする必要はないでしょ!」
「するも何も【血の権力者】の仕業で血が溢れさせていたんだ、そのまま止血しなかったら身体中の血が出し尽くして死ぬ所だったんだ。これが最善と自分が決めた、十分だろ」
痛みを我慢しながら喋るがその時封じられていた魔力感知が使えるようになった途端扉が開きマディーが部屋の中に姿を現す。
「ウェールから伝言…“ここから速やかな退却を”って…今も【血の権力者】と戦っている状態で…え?なんでアットゥルが手から生み出されるの?それに紫?」
「…私にも渡すの?ルウェー君…疲れてるのは分かるけどここで奇行には走って欲しくないんだけど…」
「いいから斬るか砕くかしてアットゥルの形を崩せ」
変な事をさせてくる自分に対して頭でもおかしくなったのではないのかと心配してくる二人だが仕方なしに【招致の果物】を砕くと自分の目の前から消えたことを確認して自分も砕くと瞬時に目の前の景色が変わり先に転移した二人が慌てている姿を確認できた。すぐに立ち上がり近くの窓を開けて先程までいた遠くにある神殿を見て溜め息を吐く
「ちょっとルウェー君?ここレヴィレット神殿じゃないけど…次はどうしたの?」
「二人とも戦闘体勢に移って準備してくれ【血の権力者】が突っ込んでくる」
遠くに見える真っ黒な点がこちらに向かって飛んでくるからかだんだん大きくなっている…やっぱり狙いは俺か…




