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ラ・ラガス~創造魔法で異世界を生き抜く~  作者: タツノオトシゴ
水天一碧の広大な場を駆け巡る
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水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の十一

 天井を何度も飛び越えながら海底都市パーラに向かって走り続けているのだが足を止めて大通りを見れば途方もなく列を成している魚人達の姿を確認できた。ジェバル殿かそれ以外の火付け人がやってくれたこともあるのだろうな、と勝手に解釈している。

 走りながら寝ていた分に練る事ができなかった魔力を平行しながら行なっているのだが守護者との戦闘…というよりかただ単に【千羽戯楽】よりも【水氷ノ太刀】に力を回していたせいで魔力管理ができなかった訳だがかなりの消耗で『星海祭』前の状況に持ってこれるかどうか…


 ポーチに手を伸ばすがあの戦闘で残っているのが魔力補給用の瓶が一本とだけ、それで足しになるかすらも分からない。数軒屋上を駆け少し奥の方にパーラに向かうための一直線の大通りを目視したところで足を止めて水分補給をしようと【水球】を生み出していると後ろから声が聞こえた。


「やっと見つけたぁ!用事があったから少し席を外していたのに戻ったらアウェル君がどこにもいなかった時は焦ったよ…やっぱりルウェー君を側に置いとくべきだったのかな?」


「グリエ殿!すまない起きたら誰もいなくそれにグクェフにいたはずがキードゥにいたのでな…少々不安だったのだがそちらは?」


「ルウェーだ、横にいるグリエと同じ『お星様』って奴と同じ立ち位置の人間だ。色々あって合流するのに遅れたのだが…」


 後ろからやってきたのはグリエ殿とジェバル殿と同じような身長で細々としているのだが軸が太いというか…なんというか、そのジェバル殿の仲間であるルウェー殿の魔力は私以上に蓄積しているとなるとかなりの疲労がかかるが平然そうにしているあたりそういうのにも長けていると読み取って良さそうだろうな。

 ルウェーは話をしている最中にジェスチャーで静かにしろとこちらに見せつけるとグリエ殿に耳打ちをするなりすぐに屋上から降りてパーラとは反対の方向に走っていってしまった。


「ルウェー殿は?」


「今ルウェー君は―――――」


『我の弱々しい分身体を嗅ぎ取り潰しに行ったのだ』


 ルウェー殿の不可解な行動を目で追った後隣に動いていたグリエ殿に質問をしたのだがその解答はグリエ殿ではなくフィレグだった、真後ろから聞こえた声にすぐに反応して振り返ると悪食の姿が目に映った。

 誰も一人立ち入る事がなくなってしまった海底都市パーラで何年も生活している中で何回も目にしているその姿を見てただ虚しさだけが残った。


『どうした、我が友。そのような難しい顔をして何かあったか?ただ二人でパーラに戻るだけなのに流石に傷つくじゃないか』


「ちょっと、撒いたと思っていたのに来るの早すぎない?空中泳いでいるってのもあるけど海底都市を跨ぐ距離だってのに異常だよ…流石は守護者という肩書きを持っているからなんだろうけど、そうなんだよね?アウェル君」


「あぁ…魚人族が悪食と称していたのは紛れもなく海底都市パーラの守護者フィレグ、グクェフからここまですぐに来れたのは彼女の能力の一つである【透過】を使ったからだろうな…」


 そんな事よりも寄ってくる気配はないのだが平然そうに振る舞うフィレグは元の姿を晒さずにいるのが理解できない、フィレグ自身なら大魚の姿にならずとも接してくるというのに…今までとは違う雰囲気を纏っているフィレグに警戒をしている中横にいたグリエ殿に目線を移すと冷や汗を掻きながら手にはしっかりと大鎌を握っていつでも戦える姿勢を取っていた。


「アウェル君!彼女に強力な呪いが掛かっている事は知っているでしょ?!彼女に近づくことは絶対にしないでよ…いいね」


「………」


『お主は…さっきアウェルを奪おうとした女か…邪魔である事は変わらぬ【盛楓冥月(セイフウメイゲツ)】』


 グリエ殿がフィレグに攻撃を仕掛けようと動いた所を止めるように手を出し止めようとしたのだがグリエ殿に言われた言葉で押し黙ってしまった。ただでさえ何もできずにいる自分に針を飲み込むように苦痛な言葉だった。

 黙っていた自分に対して口を動かしたフィレグはただ近くにいたグリエ殿に視線を向くと何事もないように攻撃を飛ばしてきた、急すぎた攻撃は自分もグリエ殿も反応できなかったがすぐさま目の前に迫ってきたのだが不意に飛んできた魔力の塊が攻撃を瞬時に相殺した。


「おいおい、その攻撃が都市のとんでもない被害を起こすって事ぐらい守護者のお前でも分かるだろ?最弱のお前が威張っていい所じゃねぇのは分かっている筈だぜ?」


『……何故お主のような存在がここにいるのだ、シャールペント!』


「そりゃぁ…キードゥの守護者たる者都市を守る為に動いただけだ、守護者同士の戦闘は親父が禁止しているが都市に被害が及ぶような攻撃を防ぐくらいは戦闘になんかなっていないしそれくらいは目瞑ってくれるだろ?」


 横を向くと腕を組んで仁王立ちをしている守護者(シャールペント)が声色は軽やかに喋っているようなのだがフィレグを睨むようにして立っていた。


『我はただ友であるアウェルを渡してほしいのだが邪魔された挙句逃げられ追いつけば面倒な者と合間見ることにならなければいけないのか…理解できぬ』


「ハハ!面白い冗談をつく様にもなったかフィレグ、数十年も引き篭もっていた奴が急に『星海祭』で大事な奴を連れ戻すためにここでやんちゃしていい理由にはならないだろうがな」


『減らず口よ、ただでさえ圧倒的な力で押さえつけるのが得意な者のどこが守護者と言われる存在なのかが理解できん』


「逆に言わせて貰うが力のなかったお前が守護者としていられる方が俺にとっては親父が判断ミスしていると思うのだがどうだ?」


 守護者同士が睨み合いながら状態が続く中吐き捨てられる言葉に対して攻撃に転じる為に用意されているだろう籠められていく魔力は尋常じゃない量だった。確かに『星海祭』で急に動き出したフィレグは分からない事だらけだ、シャールペントが言った通り数十年間自身の塔から動くことすらなく自我がない分身体をパーラ中に撒き散らすだけして連絡すらもしてこないのはあり得ない。


「成る程ね…守護者同士の攻撃、というか塔内という決められた場所でしか戦えない見えない縛りがあるみたいなのに海底都市で平然と私たちに攻撃をしてきたのは制限という存在を無くしてしまう領域魔法があってやっと動いていたってことか…色々考えているのね守護者ってのは」


「すまない…ここに来るのに時間がかかった、さっき筋肉馬鹿が物凄い勢いで動いたのが見えたがここにいるってことは……やはりか」


『ここで時間を使っても無駄なだけだ、友を置き去りにするのはとても気に触るがここで切り上げさせて貰う』


 守護者同士が牽制しあう中グリエ殿はブツブツと何か呟きながら喋っていると分身体と戦っていたルウェー殿もこの場に戻ってきたのを確認したフィレグはあっさりと引き下がって行った。シャールペントはフィレグの気配が完全に消えたのを確認した途端口から血を吐いて膝をついた、さっきまで強気の姿勢だったのにその面影が消えてただの弱々しい姿だった。


「……ったく、フィレグの野郎が面倒なのはこっちも同じでよぉ…ジェバルの野郎と一戦した身って言い訳があるがそれでもつれぇわ…」


「シャールペント…」


お前さん(アウェル)がこんなところで突っ立っても何も始まらないぞ…さっさと大事な奴のところに戻ってやれ…って言いたいところだが正直その道のりでアイツに邪魔される方が面倒そうだから三人ともジェバルの所に転移させてやるよ【流転:転】」


 明らかに腕などの至る所から溢れ出す血に驚いていたのにすぐに回復魔法をかけていたグリエ殿に感謝をいうと固まっていた我々の足元に一瞬で構築される魔法陣が完成された途端視界が変わるとジェバル殿が保存食を食べているところだった。


「え?」


「え?」



















 今、目の前でありのまま起こったことを話すぜ!各自休憩として呆然と英気を養う為に【宝物庫】に貯蔵しておいた保存食を取り出して頬張っていた所突如アウェルの顔がドアップされた。何を言っているか分からないが自分も何をされたかいまいち分かっていない。

 少々取り乱したが話を聞けば一生懸命倒していた悪食もといフィレグという守護者は全部分身体らしい、でも強い個体とかを放置すれば平気で分裂して数を増やすとかいう恐ろしい能力やら自身を透過させて建物とか素通りできるとかいうとんでもない本体と戦っていたらしい。


「え、でも話聞く限りあの筋肉馬鹿がこっちに転移させたのはウェールにアウェルとグリエさん…三人だけだけど今何をしているか分からないオルフィットとシグマリ、イプロに関しては何も触れてなんかすらしてないけど大丈夫なの?」


「イプロがいるから大丈夫だ、それよりもジェバル。ここからどうするつもりだ?今は安全だろうが次の瞬間襲いかかってくる可能性はあるだろ?」


「それに関しては私がいますので安心をルウェー殿、少し散策して見ましたが完全に活動を止めている相手がすぐに動くことはないでしょう。魔力の反応も全く反応しませんし」


  さっきまでいなかったウェールがいつの間にか側に立っていた、さっきまで周辺の様子を見にいくから少し席を外すとか言った後本当にどっかに消えて姿を見せなくなった時は内心ギョッとして廃墟と化した建物を隈無く散策していた。

 いつも側にいる感じがするけど大抵どっかに行って何かやっている印象が強いのがウェール…というか【宝物庫】に住むとか言っていたテトも何を言わずに姿を出さずに消えている状態である。自分が把握できずに何か問題でも起こされたらどうしようで頭が一杯なのだがそれよりも今はアウェルのお友達さんの守護者についてだ。


 悪食とアウェルのお友達さんであるフィレグって人が同一人物ってことは話を聞いて理解できたのだがお友達さんだというのに初めて会った時バリバリに攻撃されていたけどあれはどういうことなのだろうか…普通だったら友達に攻撃を平気でぶっ飛ばしてくる事はない筈だが色々あるのだろうな


「あの筋肉馬鹿と同じ守護者なら同じように塔の中でやった戦い…試練をやるってことになるけどあいつらはそれに関しては何も言わなかったし何ならこっちに来る際に口喧嘩するくらい仲が悪いっておかしいでしょ」


 被害がないようにグリエさんに結界魔法を張らせてから海底都市キードゥで戦闘を始まったのだがその連携を見るから多少の文句を言い合ってたけどそれと比べてみれば違いは明白だった。それに守護者同士の喧嘩ごとは駄目って聞くけど防御に回ればセーフなんていくらでも抜け道探せるから理由をつければ何でも許されるのは判定が緩くありませんかね


「確かにそれもそうだが…元々フィグレはとても優しいんだ。キードゥで対面した時は昔とは違って別人じゃないかと思ったのも多少はある…」


「友達なら二、三日空いたとしても顔くらいは合わせるかもしれないけど何十年も姿を出さないって相当な事がないと出てこないでしょ」


「あぁ…フィレグが『もっと強くなりたい』と言った次の日には海底都市には姿を消していたな」


「ん?今なんて?」


 情報のやり取りとこれからどうするかについて議論を繰り広げていたというのにそれよりも重要そうなことを言っていない奴が平然とした顔でソファに座っていたなんて考えたくもないがいました。アウェルもアウェルで筋肉馬鹿と同じ早めに言って欲しい事を忘れていたパターンのようだ、魚人族ってそういう所は似るのだろうか…

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