水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の八
海底都市キードゥでは『星海祭』が早朝から開始され至る場所で屋台を出して、どこもかしこもお祭りムードが絶えず続いていた。僕は『星海祭』が始まってから友達と一緒に軽食を片手に食べ歩きをした後公園で集まっては屋台で買ってきた食べ物を昼食代わりに食べていた。
「おーい!バテの奴俺にも食わせてくれよ!」
「いいけど、『星海祭』はまだまだ始まったばっかしなのにそんなに食べて大丈夫なの?お腹崩さない?」
「そりゃぁバテが『星海祭』で活躍する『お星様』と話して凄いの約束したって聞いたから今の内に目一杯楽しんで本物の『お星様』に会うために動こうって訳よ!他の奴にも言ってあるしな!」
買ってきた昼食を勢いよく食べる姿を見ている中自分が買っておいた飲み物が空になっていたことに気がつき友達に一言声をかけて公園を後にした。すぐに戻ろうと足を動かすが今日は『星海祭』ということもあって人混みで中々進めないのでどうしようか考えていた、下を向いていたこともあって前にいた人にぶつかってしまったのだが隣の人と慌てた様子で話していた。
どうしてそんな反応だが不思議でもあるが前方で何か起きたようなだ、背が小さい所為で何も見えなかったので無理矢理大人達の足元を掻き分けて人がいない所に動くとたくさんの人が指差していたのが分かりその方向を向くと信じられない光景が映っていた。
「空に何か浮かんでいる…?」
大人達が指差す方を向けば空に浮かぶ無数の影が見える、目を凝らしても変わらない光景に疑問が尽きないのだが呆然と見つめていると段々影は大きくなっていき終いに近くの建物にぶつかった。その時に物凄い突風が起きて何がどうなったか分からなかったが周囲から悲鳴や叫び声がたくさん聞こえる。
「今ので被害は最小限に抑えられたつもりだったのにそれでも石っころは風魔法で止めることができたから実質セーフだな、それよりも住民関係無しに突撃とは同化しているな“悪食”は」
「え?図書庫の『お星様』?なんでここに?」
「図書庫で約束した魚人族の子供か!キードゥのどっかにいるとは思っていたけどこんな怖い思いさせて悪かったな、すぐに友達とか家族の元に行って守護者の塔付近の広場に行っておけ。あの馬鹿も一応は守護者だから市民は守ってくれるはずだからな」
自分自身には全く何もなかったが目の前に図書庫で出会った『お星様』が真っ赤な剣を掲げて空から降ってきた何かを仕留めていた。一瞬のことで情報量が多くて何が起きているのかさっぱりだった。
「主…周辺の確認をしましたが今のが初めてキードゥに襲いかかってきた“悪食”です。パーラの方面で何匹か空中で待機している様ですがマディー殿が様子を窺っているので現状は大丈夫かと」
「分かった、先にウェールはマディーさんの所に移動して突っ込んでくるような“悪食”がいたら出来るだけ被害を出さずに対処してくれ、こっちはこっちで住民の避難誘導と護衛をする」
急に『お星様』の隣で現れた全身真っ黒の外套を纏った人が現れては聞いたことのないような単語をつらつらと喋っていった後一瞬で去っていった。その場に残った『お星様』は崩れた家の瓦礫を魔法で消して空から降ってきた大きな何かを跡形もなく消していた。
周りにいた大人達も『お星様』が何をしてているのか理解できなくその場で固まっていた、その後後ろから不意に肩を叩かれてすぐに後ろを振り返ると棒立ちになって口を大きく開けている大人達と友達がいた。
「おい!バテ大丈夫か?!お前が行った方向に物凄い轟音がして心配になって来てみたら大勢の人が棒立ちでやっと来てみたらお前を見るように大人達がいるみたいだけど何があった?」
「え?だって家が」
友達に何があったか聞かれ真後ろで起きたことを語ろうと振り返ってまずは実物を見せようと指を刺したのだがそこは何事もなかったように立ち尽くす家がそこにはあった。それに加えてさっきまでいた筈の『お星様』も瓦礫を跡形もなく消した魔法の様に消えていた。
「それでバテが指差す家に何があったんだよ、教えてくれよ」
とんでもなく“悪食”に一発…いや数千発は殴りたい気持ちだがそこの所は押さえておこうと思う、今は何しろお祭りムードで警戒心が薄れている海底都市キードゥの市民というか住民の安全が第一優先だ。さっき図書庫でとんでもない約束をした子供が危うく大怪我するところを咄嗟に阻止できたからよかったが本当に容赦がないんだな“悪食”って奴は…
先にマディーさんの元へとんでもないスピードで走っていた死累人や自分が塔の外に出てこんなことをしているかは海底都市では十二時間、塔の中では二十分前の出来事になる。
「というと、そのお前の言う危ない害虫って言うのは俺達で言う“悪食”って解釈で良いのか?」
「古びれた海底都市パーラに迷い込んだ『お星様』でさえも食べてしまおうと襲い掛かる化け物だから悪食という名なのか…中々にセンスがいいなウチの末裔は」
「話を曲げるな」
変光星をチラつかせて強制的に黙らせる、そうでもしないと話が終わらないのでこれで正解なんだがな…
こいつの欠損している所はまさしく連絡で重宝されるほうれん草が抜けている所だ。自身も言えた口ではないがすぐに情報を交換しないといけない状況になるのならすぐに言うが目の前で横たわっている守護者に関しては何気に話を進めていると思えば重要なことを言いそびれていたなんてこともあり“悪食”ともなんらかのつながりを持っているだなんて言い始めた。それまでは警戒する必要もないと考えていたのだがこれも守護者諸々の大元である『海の王』がいちいち引っ掛かってくる
「取り敢えずここからは出られるんだよな?」
「それくらいはあの死闘で払った代償の反動で体を動かせなくても容易にできるから安心しろ、あと『お星様』には結構オーバーワーク地味たことさせたみたいだし俺の我儘に付き合わせていた償いとして回復薬やるよ、魔法が異様に達者なくせに回復魔法が使えないのは不思議だな」
「誰にだって不得意なのはあるのにそれくらい察してほしいのもあるけど…それよりもお前が急に優しくてとてつもなく恐怖を感じている、どうした?代償ってやつの反動で悪かった頭がもっと悪化したのか?」
「テメッ!素があれだからってその反応は酷いだろ!それよりお前ずっとここでのんびりしているがあっちとは時間差があるから早めに出た方がいいぃぃぃ!?」
雑談して時間を割いている奴に限って何でこんなにも重要な事を思い出したみたいな風で喋り出すのか理解ができん、取り敢えず変光星を守護者の顔面スレスレに差し込んでみたのだがそれよりもこいつに時間差に吐き出させることに力を入れることを優先する。
「次は時間差?塔と外では全く時の流れすらも違うということなのか?」
「そうだ、ここで過ごした時間は塔外に出るとかなりの時間差が生まれるようになっていて、二十分弱の戦いだったから外に出れば大体十二時間ぐらい経っている…初めて星海祭をやった時なんかは一瞬で前代守護者を倒したこともあって時間のずれで困るなんてこともなかったみたいだしな。同じ『お星様』に言いたいところだがその頃はガキだったし完璧には覚えてはいないがダーズリーとかなら覚えているはずだ、アイツは意外と物覚えいいしな」
「他の守護者のことは聞いていないって……というか十二時間とかまたぶっ飛んだことを今更言ってさぁ…」
時間差があることを知れたのは十分すぎる情報だが、なんせ塔に出たらこの懐中時計の刺している時間よりも先に動いているってことだから知らないで塔に出て気になって時間を確認したら十二時間も空いているなんて考えたら日を跨いで戦い始めたのにおかしいだろ。
頭を掻きながらその後も守護者の口から出る話を聞いていたのだが合間合間に言っていた前代の守護者とか諸々は頭から抜けきって塔から出た後はどうしようか考えている時に真後ろから魔力を感じ素早く変光星を【宝物庫】から取り出し刺し向けると見慣れた姿の二人が立っていた。
「死累人とマディーさん!」
「主…情報収集の為各地の海底都市に赴いたこともあり遅れてしまい申し訳ございませんでした。途中不特定多数の魔物に襲われ体を休息するために近づいた海底都市に寄り『星海祭』の火付け人とは認定されていませんが主が認定されているので参戦した所主を知る者と会い流れで守護者と戦闘を行いすぐに終わらせました」
「お、おう…大変だったな…」
変光星を【宝物庫】の中に仕舞ってウェールの近くに寄って見ると全体的に真っ黒な姿で同じ貴族なんだがそれよりも上位貴族が来てそうな衣装を身に纏っていたのに今じゃ隠密を得意とする外套で体全体を隠していたりと格好もまぁまぁ様になっている。動きにくそうだけどそこの所は気にしなくても技量で何とかするタイプだし大丈夫か。前に買った外套なんて火山の戦闘中にどっか飛んでいったまま行方知らずだからまた買い換えようか考えているがそんなこと考えてられないな。
それよりも死累人が淡々と話していたが後ろにはマディーさんがいて何処かしらで合流していたことが窺えるグリエさんからは自分と同様一人で守護者と戦うと言っていたから少し不安だったがウェールがいたから大丈夫だろう、マディーさん本人は青褪めた顔して死累人との距離をとってこちらを見ているけど中身はいい奴だからすぐ仲良くなれるだろうな。
「そこにいるのは…主と戦った守護者か?」
「あぁ、海底都市キードゥの守護者シャールペントだ。お前さん相当な魔力で大したやつみたいだな、目星をつけていた『お星様』の中でもお前とも戦って見たいが現状そいつにボコされたからまた今度戦わせて欲しい」
「今は『星海祭』の真っ只中、祭りも終わり空いた時間でもできたらその時はということで…それより主には諸々のことは説明しましたか?」
「それは勿論、こいつに逐一言わないと文句を言うから大抵のことはお前さん達が来るまでに喋り終えた。なるほどなぁ…『お星様』にはこんなにも強いやつがいるなんてな後ろにいる奴もとんでもない魔力を持ち合わせていたりとそれまで気付かなかったのがおかしいぐらいだな、話はこれくらいにしておかないと外とのズレがどんどんと広がっていくから後は頼むぜ『お星様』堕落野郎をなんとかしてやってくれ」
守護者が横になりながらこちらを向いて笑っていたがゆっくりとボロボロな体を起き上がらせると自分含めた『お星様』の足元に魔法陣が組まれると視界が瞬時に変わり殺風景だった塔内とは全く違って塔を囲う建物の前に多くの屋台が立っていた。
それまで静かだったマディーさんは目の前に現れたのを見て物凄い勢いで屋台に向かって走ってしまった、すぐに走ってしまったマディーさんは人混みの中に入ってしまった時に塔を囲むように青白い炎が燭台に灯ると急に起きたことに驚いた魚人族達がこちらを向くと視線が直ぐに集まった。
「あれって……!今回の『星海祭』の『お星様』!?」
「おいおい、マジかよ!数人で守護者様に決着を着けるなんて流石『お星様』だ!俺達とやる次元が違うぜ」
視線が集まる中隣同士でコソコソとして呟いている様に見えて結構聞こえるせいですごく恥ずかしく感じるからやめて欲しい…ただ単に海底都市に連れてこられただけで『お星様』という特別な名称がここまで有名になれるバフがかかるとは正直驚きもある自分に反して平然と装っている死累人の姿を見ると自分がどんどん悲しく思えてしまう。
「主…ここで時間を使ってしまうといつ来るか分からない“悪食”を警戒するのが今の最善の行動だと分かっていらっしゃいますが速やかにここからマディー殿を連れて海底都市パーラとキードゥの境界線近くに移動することを…」
「分かった、そうしようか。マディーさん!一旦ここから離れるんでその林檎飴みたいなの買ったらでいいんで直ぐについて来て下さいね!」
ウキウキで屋台にあった林檎飴らしきものを買おうとするマディーさんの姿を見て喋った後ウェールと一緒に多分行き先が海底都市パーラである方向に向かうべく連なる屋根を経由して動いていたのだが突如前方から筋肉馬鹿が出す魔法と同等の魔力を感じ移動しながら真横から【宝物庫】を展開しそこから変光星を取り出し【起爆】を行う。
「分かっていると思うが“悪食”が来た可能性がある、ここまで連れて来させてすまないが後ろにいるマディーさんのピックアップをした後他の“悪食”に警戒をしてくれ“悪食”は一匹なんてことはなく数で押し込んでくるような奴だから頼む」
「御意」
直ぐに死累人は体の向きを切り返してマディーさんの元に向かったのを直感的に感じ取り上から感じ取れる魔力の塊が一気に落下していたのを小さくだが目視できた。真下には大勢の魚人族の住民がいる筈だ、守護者から貰った回復薬のお陰で身体、魔力ともに万全だ。変光星に魔力を入れ込んでいきその都度力の糧に変換させていくと剣身は真っ赤に変色する。
「あの筋肉馬鹿に任されてすぐに任されたことさえもできない『お星様』はダメダメだからなぁ!」
屋根を思いっ切り踏み込んで勢いをつけると“悪食”が建物と接触すると同時に力一杯叩きつけるように変光星を振るうと“悪食”は突然掛かったとてつもない力に対応できずに押し潰された。今の攻撃で建物を壊してしまうことになってしまったが中に人がいなくて本当によかったと内心ホッとしていた。




