審判の間
初投稿なので文章がおかしいところが多々あると思います。それでもよろしければあたたかい目で見て頂けると幸いです。
ある夕日が差した放課後の学校、皆が部活が終わって家へ帰る中、まだ教室の電気が消えていないところがあった。
「いつも、お前何様なんだよ!お前はいつも通りに教室の隅で縮こまっていれば俺等にとってはそれで十分なんだよ!」
床に押さえつけられて何も身動きができない状態で一人の少年は抵抗も出来ずに何度も何度も殴られる。
殴られる度に漏れ出る嗚咽に目の前で暴力を振るう彼は、嫌気が差したのか自分の腹を殴った後、悪態を吐きながら近くにあった机を蹴り飛ばして教室から去っていった。
「ちゃんと机直しとけよぉー」
「俺らそういうの面倒だからさー」
殴られている間、ずっと彼と連んでいる仲間は痛みに踠く姿を見て笑いながらその場から姿を消していった。
僕は、殴り蹴られたことによる身体中に響く痛みを我慢しながら蹲っていると背中に小さな感触が伝わる。
「長山君大丈夫?やっぱり先生に言った方がいい気がするよ…前も言わないでって言っていたけどここまで酷くなっているから…ね?今でもいいから言いに行こ?」
「ごめん…柳原さん、今まで先生が僕に対して動いてくれる事はほぼ無かったし前なんか見て見ぬふりなんてこともあったから」
「でも…この傷を見てただ事じゃ済まないよ…」
痛む背中をどうにかして堪えて振り向くと少し反応に困っていた同じクラスメイトの柳原さんが声を掛けてくれた。
だが、実際こんな現状をどうにかして欲しくて何度か教師に頼んだが全く寄り付く島もなかった。
その上、自分の事は厄介者として追い払ったりして何か働きかけるなんてことは考えていないみたいだったりする。
「いいんだ柳原さん、それよりもさっき帰ったあいつが戻ってきたら君も巻き込まれちゃうから…僕は大丈夫だから」
見栄だけ張って心配そうに振舞う柳原さんを置いて教室を出ていつも僕の居場所とも言える学校の屋上へ上がり柵に寄り掛かりながらさっき仲間と一緒に行動していたアイツが騒ぎながら下校する所を見て溜息を吐く。
あの感じだといつもみたく家の近くで待ち伏せしている可能性があるからもう少しここで時間を潰して帰らないと…
「待ち伏せとかしないでさっさと帰ってくれないかな…」
ボソッと、口から吐かれた言葉を吹き飛ばすようなさっきまで感じなかった風が今になってはそう思い込んだからだろうか少し風が強くなったような気がした。
見上げると雲は空に絨毯を敷くように浮かんでさっきまでとは打って変わって今にも雨が降りだしそうだった。
雨に打たれるのは勘弁だからせめて屋根のある場所に移ろうと動いた途中、立つことすらも儘ならない異様な程の強風が吹き込んできた。
「なんで、柵が…!」
何とかして立ち上がろうと背後にある柵へ手を伸ばしたのだが、その手を伸ばした柵の方に意識を向けた時には無理矢理引っ張られたような形に変わり果てて柵として機能しているとは思えない物があった。
柵がその場だけぽっかりと穴のように空いており風に押されて吸い込まれるように滑り落ち、何もできずに落下した後強い衝撃が身体を打ち付けた。
僕の名前は長山仁
ごく普通な高校生だったが見に覚えのないデマが学校に行き渡りクラスからの信用が無くなり、エスカレートした結果陰湿な嫌がらせが度を過ぎていた。
まだ初めは必死に抵抗して嘘であることを証明しようとしたが聞く耳を持たずデマの嫌味を淡々と吐き続けられた。
結果、どういう訳か目の前で広がる光景は地面が空と鏡合わせのようになっていて一度は行ってみたかったウユニ塩湖のようなとても美しい場所だった。
このウユニ塩湖に似た所に何かないか探そうとただひたすら歩いたが、歩いても歩いても景色が一向に変わる気配もなく暫くその場で周りを見ながら立ち止まっていた。
どれくらい時間が過ぎたのか分からなかったが真っ黒の点が段々と奥の方で近づいてる物があった。
こんな何もないところで変なものだったらどうしよう、そんな事を考えながら下を向いていると急に水の音が聞こえ始めた。
「え?」
全身を覆うような真っ黒のベールを纏った自分と同じ背丈位の人がゆっくり、ゆっくりと小舟を地面だと思っていた所に浮かばせてオールを漕いでこっちにやって来ていた。
小舟を目の前に止めてまるで「早く乗れ」とでも言ってそうな感じがしたので急ぎながらも、大丈夫なのか心配しつつゆっくり小舟に足を伸ばして乗り込んだ。
大人しく座るとベールを包んだその人は何も言わずにオールをゆっくりと漕ぎ始めた。
小舟がゆっくりと何処かへ進み始めるとあんなに歩いても変わらなかった景色が少しずつ変わってき、晴天だった空はいつの間にか暗くなっており星空が空を埋め尽くしていた。
ぼうっと空に撒かれた星空を眺めていたが小舟が漕ぎ進んでいく内に段々霧が濃くなって完全に何も見えなくなってしまった。
それでもゆっくりと、ゆっくりと何処かへ向かう小舟に揺られていると突然その場に止まった。
「あそこに次に貴方がいく道を定める」
それまで漕いでくれていた黒のベールの方が小舟を漕ぐのを止めてベールの中から現れた真っ白な手がゆっくりと人差し指を遠くに向ける。
籠った声で言葉を告げた後、すぐに小舟を降りるように言われ感謝を伝えて降りると、乗っていた舟は黒のベールの人が漕ぎ始めると数秒も待たずに霧に隠れ消えてしまった。
ベールの人に言われた通りにする以外この霧の中で何も出来ないので素直に従い示された方角をただ歩き続けた。
歩き続けて、そう時間もかからずに目的地と思われる一枚の白い扉が見えてきた。多分この場所を言っていると思うのだが…恐る恐る真っ白の扉を開けるとその先も白しかない空間が無数に広がっていた。
どこに行ったらいいのか分からないが真っ直ぐ歩くと何故その場所にポツリとカウンターが置かれており不思議に思っていたが持ち場なのだろうか女性の方がカウンター先に座っていた。
異様に辺りが煙っているが程タバコを吸っていて吸殻も沢山あるこちら側に気づいたのかこっちの方を見て手にしていた煙草をどこかに消すとこっちを見定めるようにこっちを見ながら口を動かした。
「……あ、えーと。私は一応彷徨っている魂を導く貴方達が想像している言わば神様みたいな存在でーす」
「これから指定された所で話し合って貰う感じなんで、この紙もって35番の部屋に行ってくださーい」
言動といい、さっきまで煙草を吸っていた女性は一枚の紙を渡して一方的に話を終わらせられてしまったがこの35の部屋と言われたがさっきまで何もない真っ白の空間を歩いていたのだが一歩下がって右を向くと話す前まで何もなかった場所に物凄い遠くまで続く廊下が出来ていた。
だったら、左も同じようになっているのか?と疑問に思って振り返ると予想通り同じように一本の廊下がずっと先まで続いていた。
「35番の部屋は私の後ろにある扉を開けて右に行くとあるからー」
こんな無限にあるんじゃないかと錯覚するような廊下を見て尚更どこにその35番の部屋があるのか立ち止まっていると心を読んだのかカウンターに持たれかかっていた女性が丁寧に答えてくれた。
「ありがとうございます」
いつもこんな言葉は出てこない筈なのだがスッと言葉が出た。言われた通りにカウンター裏に現れた扉前まで進みゆっくりと開けるとまたしても同じような廊下が永遠と続いていたがカウンターを見るとこっちを振り返って手を振っていて会釈をすると扉が自動的に閉じてそこにあった筈の扉が消えてただの廊下の壁に様変わりしていた。
言われた通り右に進むと目的の部屋に辿り着き恐る恐る扉を開けるとソファに座り資料を片手に持ちながら書類を捌いていたキッチリと服装を正している女性がいた。
「早く入って、こっちは手当ての出ない残業が溜まってるんだからこういうのはちゃっちゃと終わらせたいの」
「は、はぁ…」
ソファの反対側の椅子に座り互いに顔を見る。白髪のポニーテールで事務処理してそうなOLみたいな格好だった。
これが神様?そんな感じには見えなかったがジロジロ見るとよくないので最低限顔を見たらすぐに顔を下げておく
「そうよ、ごめんなさいね。人間みたいに忙しそうに仕事をしている神様でがっかりした?私も色々あってこういう所に移って来たから何とも言えない立場で…」
「何か、すいません…」
「まずは私の名前はヒーラ。これだけしか名前がない下位の神よ。貴方は自殺してここに来たわけだけどここは“審判の間”まぁ、名前の通りよね。ここで次の道…人生を決めるのだけど貴方は…」
手元にある資料を一旦テーブルに置いて持っていた一枚の紙を渡すとじっくりと読み始めたがヒーラさんは顔を顰めて手に持っている紙と睨めっこしつつ何もない場所から数枚紙を取り出すと見比べるように何度も見ていた。
「まぁ、いい世界にいけるってことになってるわ」
「曖昧な言い方ですけど…本当なんですか?」
「色々と大変だけど、遠目で見れば幸せな……感じ」
ちょっと諦めたような感じで言われてすごい不安になる。一応不安を持ちながら見知らぬ場所には行きたくない。
もし、なんか変な所に連れてかれて理解できずに終わるのだけは一番嫌だ。そんな事を思いながら言うとヒーラさんは明らかに声が小さくなっているし…これってホントに大丈夫なんだろうか。
この間だけ不穏な空気が漂う中扉のノック音が響きヒーラさんが声を掛けると扉が開き背丈が高くとても温厚そうに見える男性が部屋に入ってきた。
入って来た途端ヒーラさんが驚いている位だしかなり凄い人だと思うが…何をしに来たのだろう。