出会い
目の前に映ったのは鎧のようなものを纏う人たちそれと異色を放っている一人の少女であった。驚いたのはその少女の外見だ。整った顔に宝石のように輝く水色の眼、太陽のように明るい黄色の髪に程良く焼けた健康的な肌。そんな百人に聞いたら百人が美人と言うであろう少女は意識を取り戻した私に気づいたのか私の目の前まで近寄ってきてしゃがみ込んだ
少女はうつ伏せの状態で顔を上げる私を興味深そうにジロジロと見てくる。私の顔がそんなに変だとでもいうのか。これでも小学生の頃はクラスの男子にチョコをもらったこともあるんだぞ!と言ってやりたいが言えるはずもなく沈黙が続く。あまりの状況に何も言えない私はしばらく固まっていると目の前の少女はとうとう口を開いた。
「貴方、妖精!?それともそれに準ずる何かだったりする!?」
「へ?」
この少女が何を言っているのか理解できずなんとも間抜けな声が出てしまった。唐突のワードに頭が全くついてこない。せいれい、精霊と言ったのかこの少女は。
(精霊って、精霊・・・だよね・・あのファンタジーとかで出てくるあの可愛いあれ)
よく聞くやつだと魔法少女には精霊のようなマスコットがつきものだとか。いやそんな事を考えてる場合じゃなかった、、、。
「いや、、、違う、、、とは、、思います、、、、はい。、、ほんと、多分」
絶対違うのについ多分って言っちゃったよ、、、恥ずかしぃぃぃぃぃ。
「嘘をつかないでちょうだい、馬車の窓から外を見ていたら森の方に光の柱が見えて、その麓に来たら貴方がいたのよ?これが妖精と関係ないわけないじゃない。」
光の下に私がいた!?そんなことも言われても、今の自分の状況すらわかってないのにわかるわけないじゃないか。しかもこの子馬車とも言った?馬車ってあのお姫様とかが乗ってるやつだよね、、、。
「あ!分かったわ貴方正体を隠しているのね!妖精は自分から正体を明かしたりしないもの、いいわ!そういうことにしといてあげる!」
「い、いや、だからちがうんだって」
「分かってるわ、他の人には正体は内緒にしといてあげる。その代わり貴方は今日から私の友達よ!」
話が早すぎて何がなんだかわからない。妖精になったと思ったら次は友達になったようだ。この子のコミュ力が私に一欠片でもあれば上司が私に仕事を押し付けるなんてことは起きなかったのだろうか。
とりあえずもう行きたくもないクソ会社だが、社会人としてしっかり遅刻の連絡は入れなければ。
こんな時でも会社のことを考えているあたり、あぁ私も社畜生活が身についてきたなとしみじみ感じ肩を落としながらもガラケーをポケットからとりだす。時代遅れであろうがLINEだって出来るのだ。連絡以外携帯を使わない私にとってはこれで問題ない。それにこのボタンがいっぱいついている感じとかパタンと閉じる今ではいらなくなったこの機能を私はとても気に入っている。
手に持っている携帯の画面とキーを打つ部分の接合部に親指を押し込むとカチッと心地よい音がなり画面が開く。幸か不幸か電源は75%としっかり残っている。が、表示はなんと県外であった。今の現代社会において県外なんてことがあるのだろうか、しかも東京都内市街地でだ。何かの間違いかと思い、ガラケーを手に掲げ電波を探ろうと立ちがった時違和感に気づいた。いや、最初から気づいてはいたが目の前の少女から放たれる情報量が多すぎてすっかり忘れていた。あたりを見回すと目に入るものは目の前の少女と後ろにいる鎧を着た人たち、後は全て全く見たことのない植物と木だ。彼女は森と言っていた。森の方に光の柱を見てここに来たと。
私の知る限りじゃあの帰り道に森と呼べるような場所は絶対にない。あっても小さい公園程度だ。
それに少女の洋服。あまりの綺麗さに顔の方に集中してしまったがこの子の着ているこの服、、
「ドレスだ・・・・」
まるでお城のお姫様みたいな。それに少女の後ろにいる人たちの腰には剣のようなものが、、、、。今の時代銃ではなく剣を携帯している国がいくつあるだろうか。
ドレスを着たお姫様のような少女そしてその護衛のような格好をした人たち。そしてこの青々と生い茂る植物と木々。
ある可能性が私の頭をぐるぐると回る。ありえないとわかっているのにその思考を捨てきれない。
私はその疑問を解消すべくある質問を問いかける
「一つ聞きたいことがあるんだけど、、、」
「やっと貴方から言葉らしい言葉を聞けたわね、いいわ!なんでも聞いて頂戴!私に知らない事なんてないんだから」
私は緊張で声を震わせながらもしっかり相手に聞き取れるよう声を放つ
「この世界で一番大きい国ってどこ、、、、なのかな?」
真っ当に答えるなら少女から紡がれる言葉はロシアになるはずだ、、
「妖精ってなぞなぞが好きって聞くけど、そういう事・・じゃないのよね?」
「そうねぇ・・・四年前にフイド戦争でリンド帝国が勝ったから、今はリンド帝国が一番大きいはずよ」
「まじか、、、、、、」
私の想像はどうやら当たってしまったようだ