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98話 あと数人は欲しいなぁ……

 翌日――


「あと数人は欲しいなぁ……」


「む? 何がじゃ?」


 朝食を食べ終えた後、俺は呟いた。

 すると、向かい側に座っていたリリアが尋ねてくる。


「いや、シルバータイガーの討伐に向けて、役立ちそうな人材が欲しいと思ってな」


 ただ討伐するだけなら、S級スキル竜化を持つ俺1人で十分である。

 しかし、”白銀の大牙”の質を保ったまま討伐するには、力任せにぶち殺せばいいわけではない。

 そこそこ強い者たちで取り囲みつつ、慎重にダメージを与えていく必要があるだろう。


「ええと、今の人数は10人だな。リリアの方で誰かアテはないか?」


 俺とリリア。

 キーネたち奴隷5人。

 助っ人に来てくれる冒険者シャオ。

 商会頭取の娘スピカと名も知らぬメイド。

 合計10人だ。

 あと3、4人ぐらいはいてもいい。


「ふむ。どうしてもと言うのであれば、竜王国の部下を連れてきてやってもよいが……。いろいろと問題が発生しそうじゃの」


「まぁ、確かにな」


 竜王リリアの部下は、もちろん竜だ。

 そのままこのストレアの町に来れば、もはやシルバータイガー狩りどころの騒ぎではなくなってしまう。

 ”人化”の術を使える竜であれば目立たずに来ることも可能ではある。


 だがどちらにせよ、狩りの際に手加減を要するのは変わりない。

 『うっかり力を込めて強めに攻撃したら”白銀の大牙”をダメにしてしまう』という戦力を何人(何匹)も抱えるのは神経を使う。

 俺自身とリリアの2人だけで十分だ。


「ライルがそこらの娘に”竜の加護”を与えてやるのが手っ取り早いと思うがのう。たかが人族風情が竜の力の一端を得られるのじゃから、奴らにとっても名誉なことじゃろう」


「ふぅん。そんなもんかね」


 俺は首を傾げる。

 竜の加護か……。

 昨日犯し尽くしたスピカは戦闘の素人だが、”竜の加護”があれば多少は戦えるようになる。

 彼女にとってもメリットは小さくないな。


「その辺を歩いている奴を路地裏に連れ込んで、適当に手篭めてやるとするか……」


「これ、ライルよ。また物騒なことを言っておるな。人族の常識では、それは良くない行為じゃろう?」


「ん? ああ、それもそうだな……」


 いかんいかん。

 油断したら考え方が盗賊か魔王みたいになってしまう。


「となると、奴隷を買ってみるか。……ミルカ? そう言えば、ミルカもいたな。後はアイシャにも声を掛けるか」


「悪くないじゃろう。それと、例の村の娘はどうじゃ?」


「村の娘? だから、ミルカのことだろ?」


「いや、そうではない。余らが最初に降り立った山にある村の……」


「……あ、ああー! そう言えばそんな村もあったな。あいつか……」


 俺がギガント・ボアの肉を提供した村の少女だな。

 一夜限りの関係だったが、結構可愛かったな。


「よし。あいつに会ってくる」


「1人で大丈夫かの?」


「ああ。もうずいぶんと竜化の能力を自分のものにしたからな。大した労力じゃない」


 竜化状態における隠密能力や最高速度は、以前の俺よりも増している。

 また、人族形態における各種の身体能力も向上し続けている。

 遠く離れたあの村だろうと、極端に険しい道程というわけではない。


「では、行ってくるがよい。余はシルバータイガーの情報を集めておこう」


「おう。なるべく早く帰ってくるようにするから」


 俺はそう言って、ストレアの町を出る。

 そして、竜化して飛び立ったのだった。

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