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95話 スピカ
俺はスピカにキスをした。
「おい、大丈夫か?」
「はっ……。はい。もちろんですっ!!」
「ならばいいが」
「ですが、ライル様が私のことを想ってくれているなんて……嬉しいです。すぐに嫁入りの準備を――」
スピカがそんなことを言い出す。
ただキスをしただけで嫁入り?
ずいぶんと初心なことだ。
「勘違いだ」
「え?」
「俺はお前を嫁に迎えるつもりはない」
俺はそう断言する。
S級スキル竜化を持つ俺の妻には、俺と同格のリリアが相応しいだろう。
また、俺の幼なじみにして、俺がツライときに支えてくれたルーシーという存在もある。
たかが商館の娘ごときが俺の妻になれると思ってもらっては困る。
「そんなっ!」
スピカが悲壮感漂う顔になる。
「だが、遊び相手としては悪くない。これからもよろしく頼むぞ」
「え……。は、はいっ!」
スピカの表情が一転して明るくなる。
遊び相手に認定しただけで喜ぶとは。
こうして健気なところもあるんだよな。
妻にするほどではないが、適当にキープしておくのはありだろう。
*****
そして引き続き、適当に楽しんだのだった。




