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90話 ライル様ではありませんか?

 翌日――


「”白銀の大牙”の入手には人手が必要、か……」


 俺は町をぶらつきつつ、そう呟く。

 昨日、冒険者ギルドの受付嬢から情報を集めておいた。

 シルバータイガーはBランクの魔物であり、かなり強いとされている。

 だが、S級スキル竜化を持つ俺であれば、討伐自体は容易い。

 俺とリリアをメインとしつつ、キーネたち5人を適当に使ってやれば、簡単に”白銀の大牙”が手に入る。

 そう思っていたのだが――


「エリクサーの作成のためには、質のいい”白銀の大牙”が必要なんだよなぁ……」


 こちらはリリアからの情報だ。

 様々な回復薬の材料に使える”白銀の大牙”だが、エリクサーを作るためには特に質の高いものが求められるらしい。

 俺やリリアが高威力のブレスで焼き払ってしまえば、牙も焼失してしまう。

 だからといって、肉弾戦を挑んで全力のパンチでも喰らわせてしまっては、せっかくの貴重な素材を台無しにしてしまいかねない。

 ゆえに、”白銀の大牙”の質を保ったまま手に入れるためには、それなりの実力を持つメンバーが複数必要だというわけだ。


「キーネたちも悪くはないが……」


 キーネたち5人には、竜の加護を付与済みだ。

 奴隷契約も結んでいるので、俺の指示には従ってくれる。

 だが、俺とリリアを含めて7人ではまだ不安が残る。

 シルバータイガーは希少な魔物なので、『失敗したから次』ということができないのだ。


 もう少しメンバーがほしい。

 だが、俺はブリケード王国の生まれであり、この町で過ごした月日はさほどでもない。

 この町に知り合いはあまりいないのが現状だ。


(どうしたものかな……)


 そんなことを考えながら歩いていると、後ろから声をかけられた。


「あのっ! ライル様ではありませんか?」


「ん? ああ、その通りだが」


 俺は振り返り、そう答える。

 少女がそこに立っていた。

 ストレアで俺の名前を知っている者は、少しずつ増えてはいる。

 銀月草の採取、ゴブリンキングの討伐、そして盗賊団の殲滅などで、俺の顔は売れつつあるからだ。

 こんなふうに、見知らぬ相手に話しかけられることもある。


「お久しぶりですっ! ご活躍はかねがね聞いております。あの、少しだけお時間よろしいでしょうか?」


 ……どうやら知り合いだったようだ。

 そう言われてみれば、どこかで見覚えがあるような気もする。


「少しだけなら構わんが」


「やった! では、こちらへどうぞ!!」


 少女が無邪気に喜んでいる。

 だが、悪いな。

 俺は君の名前すら思い出せんのだ。

 ふうむ。

 いったいどこで知り合ったのだったか――

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