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69話 キーネの管理は俺が行っている

 ストレアの街の冒険者ギルドで報告を済ませた。

 キーネの知り合いらしき男女4人組のパーティが声を掛けてきたところだ。


「あ、あはは……。みんな久しぶり……。その、私、ちょっと用事があってね……。またあとで……」


 キーネは複雑な表情を浮かべながら、その場をやり過ごそうとする。

 四つん這いになっている情けない姿を見られれば、気まずい気持ちにもなるだろう。


「おいおい、つれねぇこと言うなって。お前と俺たちの仲だろぉ?」


「そうだよキーネちゃん。一緒に飲もうよ」


「キーネが来てくれねえと寂しいぜ」


 彼らがキーネを取り囲むようにして近づいてくる。

 そして、彼女を立たせようとする。


「勝手なことをするな。キーネの管理は俺が行っている」


「ああん? なんだこのガキ……」


「邪魔するんじゃねえよ!」


 男どもが立ち止まり、こちらを見る。


「ほう。威勢だけはいいな。ただのザコのくせに」


「なんだと!?」


「おうコラァッ!! 誰がザコだって!?」


 ザコはザコだ。

 俺は挑発的な態度で彼らの前に立つ。

 4人対1人だ。

 相手もそれなりに強そうではあるが、俺にとってはザコだ。

 特に問題ない。


「ライル様、ストップです!」


「むぐ」


 アイシャに後ろから抱き着かれた。


「ダメですよ。ライル様も冒険者なのですから、無闇に揉め事を起こさないでください」


「……チッ……」


 なぜ俺が人ごときのルールに従わなければならないのか。

 アイシャを振り払いたいところだが、さすがに街中での暴力沙汰はまずい。

 仕方ないので我慢してやることにする。


「いずれにせよ、このキーネは俺の奴隷だ。貴様らに渡すわけにはいかない」


「奴隷だと!? 何の権限がテメーにあるっていうんだ!」


 権限、か。

 確かに言われて見れば、法的な根拠はやや乏しいな。

 俺は盗賊たちに囚われているキーネとメスタを助け出した。

 彼女たちが純粋な被害者だったのであれば、そのまま解放していただろう。

 救出と解放の対価として、俺は彼女たちや冒険者ギルド、あるいは街から多少の謝礼を受け取っていたはずだ。


 しかし、キーネとメスタは単純に盗賊にさらわれた被害者というわけではない。

 盗賊討伐の依頼を受けてミルカの村に寄り、そこでの忠告を無視して盗賊団に捕らえられてしまった無能な冒険者だ。

 彼女たちの愚行により、ミルカの両親を始めとして村人たちが何人か見せしめに殺されたと聞いている。

 その行為を反省させるため、キーネとメスタは奴隷として調教して性根を叩き直してやることにしたわけだ。


「権限なんてつまらないことを気にするな。本人が了承しているんだ。なあ? キーネ」


「……はい。私はご主人様の奴隷です。卑しい奴隷の私の性根を叩き直してくださっているのです」


 四つん這いになりながら、キーネが答える。


「ほらな」


 俺は勝ち誇った顔を浮かべる。


「ふざけんな! キーネにいったい何をした! 答えによっては……」


「ほう? 答えによっては何だと言うのだ?」


 面白い。

 この俺に逆らうとはな。

 せいぜい思い知らせてやるとするか。

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[一言] 奴隷がまた増えるかな?
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