66話 出立
村を出立する日になった。
同行者は、俺、竜王リリア、ストレアの冒険者ギルドの職員アイシャ、奴隷キーネである。
そしてこの村でお別れとなるのが……。
「じゃあな、ミルカ。達者で暮らせ」
俺は見送りに来た彼女にそう言う。
「はい! ありがとうございました。また遊びに来てくださいね。その時には、もっと成長した姿を見せたいと思います!」
彼女はそう言いながら深々と頭を垂れた。
元はただの村娘ではあるが、竜の加護を得たことで身体能力が大幅に向上している。
並大抵の男なら、簡単に組み伏せることができるくらいにだ。
「ああ、そうだな。またいずれ寄らせてもらおう。その時は、お前に何か土産を持ってきてやるから楽しみにしていろよ?」
「はいっ! よろしくお願いしますっ!!」
ミルカは満面の笑顔を浮かべて答えてきた。
そんな彼女との別れを惜しみつつ、俺は視線を横に向ける。
ミルカ以外の村人たちが、俺を見ている。
皆、俺に対して感謝の言葉を述べていた。
「ライル殿、本当にありがとうございました」
「貴方のおかげで私たちは救われました」
「これからのご活躍をお祈りしています」
口々に感謝や祈りの言葉を口にしている。
「ああ。お前たちも達者でな。一応言っておくが、俺のミルカに乱暴したりしたら殺すから、覚悟しておけよ?」
俺は冗談交じりにそう言った。
「もちろんでございます。彼女へ強引に迫るような者はいないでしょう」
村長が真面目な顔で言う。
隣に立っている若者も頷いている。
こいつは、かつてミルカに思いを寄せていた奴だな。
初日に俺に絡んできたので、返り討ちにしたことがある。
ミルカや村長、若者たちと最後の別れを済ませ、村を出立する。
「ライルさまっ! またいつか会いましょう!!」
「いつでも歓迎しますぞ!」
「「ご達者でー!」」
背後からそんな言葉を受け取りつつ、俺たちはストレアの街への帰路に付くのであった。




