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56話 囚われの女冒険者

 盗賊団のボスを撃破した。


「ラ、ライルさまっ! さすがでございます!」


 ミルカが駆け寄ってくる。

 俺があっさりと盗賊団を無力化したことに、大満足の様子だ。

 俺の可愛いオモチャミルカよ……。

 末永く、俺の側にいるがいい。


「まあ、こんなところだ。さて……」


 俺は倒れ伏している盗賊たちを見る。


「こいつらはどうするか。1人1人運び出すのは面倒だな」


「アタシにお任せください。適度に縛り上げ、自分たちの足で歩かせます。それなら、ライルさまの手も煩わせないでしょう」


 ミルカがそう言う。

 確かに、完全に捕縛する必要はないのか。

 手や体だけ縛り、足は多少自由にさせる。

 その状態で数珠つなぎのようにして運べばいい。


「そうだな。それでいこう」


 こうして俺たちは、盗賊団を連行することにした。

 だが、その前に……。


「ん? 洞窟の奥から、2つの魔力反応があるな……。盗賊団の残党か?」


 俺はそう言って、奥へと進む。

 ミルカは慌ててついてくる。


「え? まだ残党がいるんですか? そいつらも早く捕らえないと……」


 そう言いながら、彼女はしっかりと武器を構えていた。

 こういうところが地味に好感持てるんだよな。

 俺の前では、彼女の戦闘能力など誤差に等しいというのに。

 少しでも貢献しようということか。

 いじらしいものである。


「いや、残党ではないようだぞ」


 俺は立ち止まる。


「え?」


 そこには、簡素な牢屋があった。

 中に2人の女性が囚われている。


「あ、あなたたちっ! 助けに来てくれたのですねっ!」


「ちっ! 助けに来るのが遅いんだよ!!」


 2人とも若い。

 俺と同年代くらいだろうか。

 彼女たちも、盗賊団の被害者なのだろう。

 体つきを見た限り、冒険者か。


 片方は物腰の柔らかそうな雰囲気だ。

 魔法使いか何かだろうか。

 金色の髪が美しく、好印象である。


 しかし、もう片方は横暴な態度だ。

 助けにきてもらっておいて、その態度はなんだよ。


 おそらくは剣士で女にしてはそこそこ鍛えられているが、美容などには気を遣っていないのだろう。

 赤色の髪がボサボサで、顔も荒れている。

 はっきり言って、俺の好みの顔ではない。

 これでも態度が殊勝であれば、相手にしてやらんこともないのだが……。


 まあいい。

 話を進めるか。

 俺が口を開こうとしたとき……。


「……お、お前たちは……」


 ミルカがそう呟く。

 彼女の表情が激変していく。

 先ほどまでは、俺の戦果に対して満足げな表情だったのに。

 今は親の仇を見るかのような顔をしていた。


「……お前らぁああ!!」


 そして、怒りの形相で剣を抜き放っていた。


「ちょっ! 待て! ミルカ!!」


 俺はそう叫び、彼女を制止する。


「止めないでくださぃい!!」


「ひいっ!?」


「うわああぁっ!?」


 牢屋の中の女性2人が、悲鳴を上げる。


「おいミルカ! 落ち着けって!!」


 俺はミルカを羽交い締めにする。


「離してくださいっ!! こいつらは、アタシの両親の仇なんです!!」


 暴れるミルカ。

 本当に親の仇だったのか。

 しかしこいつらも、盗賊団の被害者のようではあるが……。

 いったいどういうことなのだろう?

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