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31話 死にたいようだな

 冒険者ギルドのギルドマスターと面談を行っている。

 彼が何やら威圧を飛ばしてきたが、俺は涼しい顔でスルーした。


「普通……、ねぇ」


 ギルマスがそうつぶやく。

 そこに、受付嬢が割って入る。


「ギルドマスター! このようなことを言っていますが、ライルさんは只者ではありません。銀月草も大量に採取されましたし……」


「……確かに、それも先ほど聞いたな。しかし、銀月草は発見が難しい。ライル君はどうやってそれを入手したのかね?」


「それを教えれば、ギルドマスターも俺のことを信じるか?」


「ふむ。場合によっては信じよう」


「わかった。教えてやる。なに、ただの魔力探知だよ」


 俺はそう言いながら、この場で魔力探知を発動させる。

 周囲の魔力反応を探る技術だ。

 魔力は人や魔物の他、銀月草のような魔力を帯びた材料、魔石、魔道具などからも発せられる。


 この場の魔力反応は、7つ。

 俺、リリア、冒険者の男女、受付嬢、ギルマスで6つ。

 あと1つは……。


「動くな」


 俺は部屋の隅に隠れている人物に一瞬で近づき、ナイフを首筋に当てる。

 気配を消す系統のスキルで隠れていたのだろう。

 S級スキル竜化には及ばないが、なかなか悪くないスキルだ。


「む!?」


 その人物が、驚いたような声を上げる。

 気配を消すスキルが解除されたのか、そいつの気配をしっかりと認識できるようになった。

 現れたのは、20代くらいの女性だ。


「いつの間に後ろに回り込んだんだい?」


「あんたが気づかないうちだ」


「そうかい。それはすごい」


 女性が飄々とそう答える。


「なぜわざわざ隠れていた?」


「さあて。なぜだと思う?」


 女性がそうはぐらかす。

 話すつもりはないらしい。

 俺もナメられたものだ。


「死にたいようだな」


 俺は殺気を開放する。

 さらに、俺は女性の首元から少し血が出るように力を入れる。


「ぐっ……。あっ……」


 女性が錯乱している。

 つい先ほどまでは飄々としていた彼女も、俺の殺気をまともにくらっては正気ではいられない。


「ギ、ギルドマスター! ライルさんを止めてください!」


 受付嬢が悲鳴にも似た声で叫ぶ。


「待ってくれ。これは儂の指示なのだよ」


「……どういうことだ? 答えによっては……」


 俺は彼にも殺気を向け、ナイフを持つ力を強める。


「ま、まずは落ち着くのじゃ。そして、その物騒なものをしまってほしい」


「…………」


 こそこそと隠れておいてよく言う。

 しかし、ギルマスからもこの女性からも、殺気や害意は感じない。

 ギルマスの言葉に従ってやるとするか。

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