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304/307

304話 空の軍勢-3

「わーい! 父よ! リリナがやったのじゃあ!!」


「おい、油断するな。まだ終わってないぞ」


「……え?」


 リリナは強いが、まだ10歳にもなっていない。

 精神的に甘いところがある。


『グルオオオォ!! ジキリュウオウノザ、ワレガイタダク!!!』


 多くの飛竜が氷漬けになった中、1体の竜だけが動き続ける。

 他の個体よりも図体がでかい。

 あれがリーダー格なのだろう。

 油断していたリリナに、リーダー格が襲いかかるが――


「リリナ姉、危ない!」


 一人の少年が、リーダー格とリリナの間に割り込んだ。

 俺の息子であり、リリナの双子の弟であるルークだ。


「はぁっ!!」


 彼は、炎を纏った剣を振るう。

 その剣はリーダー格の首を切り落とした。

 あの年でこの剣さばき……。

 さすがは俺の子だ。

 火属性の魔法も剣技も、俺がそこそこ得意としていた分野である。

 ルークは、それを受け継いでいるのかもしれないな。


「リリナ姉は僕が守る! だから安心して!」


「う……うむ……」


 ルークがリリナを抱きしめる。

 リリナは、顔を赤くした。


「あ……ありがとうなのじゃ……」


 リリナは礼を言う。

 その表情は、まさに恋する乙女の表情だった。

 双子なのに、そんな想いを抱くとは……。

 大丈夫なのだろうか?

 いや、俺も弟のガルドを女体化させていろいろやったし、あまり強くは言えないか……。


「ふぅ……」


 俺はため息をつく。

 とりあえず、空の軍勢の脅威は去ったようだ。


「よくやったぞ、ルーク。もちろんリリナもな」


「えへへ……。おとーさんに褒められたの、久しぶりだね」


「そ……そうか? 俺はいつも褒めているつもりなんだが……」


 ルークに言われ、俺は口ごもる。

 あまり褒められていないのだろうか?

 そんなはずはないと思うが……。


「父よ! 今日の晩ごはんは、竜の丸焼きがいいのじゃ!!」


「そうだな。今夜は祝勝会だ」


 俺はリリナとルークに微笑みかける。

 空からの軍勢というちょっとしたハプニングはありつつも、今日も聖竜帝国には平和な時が流れていくのだった。

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