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28話 なっ! こ、この量は……

 冒険者ギルドで報告を行っているところだ。

 採取してきた銀月草の提示は完了した。

 それらの買取金額と功績の査定はまだだが、その前にゴブリンを討伐した件を報告している。


「え、ええっと……。ゴブリンの群れをライルさんお一人で追い払われたと……?」


 受付嬢が信じられないものを見る目でこちらを見る。


「そう言っている。正確に言えば、追い払ったのではなくて討伐したのだがな」


「まあ、ライルならゴブリンくらい余裕じゃな!」


 俺の言葉に続き、リリアが得意げに胸を張る。


「そ、そんなわけないでしょう! ライル様が新人の割にはとんでもない実力をお持ちなのは知っていますが……。いくらゴブリンがD級の魔物とはいえ、1人で群れを討伐するなんて不可能です!」


 受付嬢がそう言う。

 やはりこうなったか。


 A級のギガント・ボアの討伐も認められなかったしな。

 冒険者ギルドは、どうも前例や常識に囚われているようだ。

 今まで有望な新人が出たときにはどう対応していたんだ?


「俺が1人で討伐したのは事実だ」


「で、ですが……」


「何か問題があるのか?」


「そ、そういうことでしたら、まずは討伐の証拠を出してください。ゴブリンの討伐証明部位は右耳です」


 俺が1人で討伐したのか、追い払っただけなのか。

 あるいはリリアや冒険者の男女を合わせて戦ったのか。

 現時点では判断材料に乏しい。

 まずは討伐証明部位だけでも提示すれば、追い払ったのではなく討伐したことの証拠にはなる。


「わかった」


 俺はそう返答する。

 アイテムバッグを腰から外し、カウンターの上に持っていく。


「小袋に入れられているのですね。それに入る量から判断すると、10匹ぐらいですか」


 受付嬢がそう言う。

 彼女の見立ては概ね正しい。

 俺のアイテムバッグは、外見上はただの小袋だ。

 ゴブリンの耳が何十個も入るような容量があるようには見えない。


 しかし、それはもちろんこれがただの小袋だった場合の話だ。

 実際には、これはアイテムバッグである。

 見た目以上の容量がある。


「ほら。確認してくれ」


 ドサッ!

 ドサドサッ!


 俺はアイテムバッグを傾け、ゴブリンの耳をカウンター上にぶちまける。

 確実に10匹分以上ある。


「なっ! こ、この量は……」


 受付嬢が言葉を失う。


「どうした? アイテムバッグに入れていただけだぞ」


 この受付嬢には、以前もギガント・ボアの死体をアイテムバッグから取り出して見せたことがあるのだが。


「……はっ! し、失礼しました……。ライル様のそれは、アイテムバッグでしたね。前回はギガント・ボアに気を取られて、意識できていませんでした。アイテムバッグも相当に貴重な代物ですのに……」


 受付嬢がそう言いながら、ゴブリンの耳を手にとって見る。


「間違いありません。これはゴブリンの耳です。ずいぶんと数が多いですが……」


「ゴブリンは群れで行動する。あの森で中規模な群れが発生していたようだな」


「……確かにそのような情報はありました。ですので、定期的にゴブリンの討伐依頼を出していたのです」


「それだけでは不足だったわけだ。ゴブリンは繁殖して数を増やしていた」


「…………そのようですね。まさか、これほど大規模な群れになっているとは……」


 受付嬢がそう言って頭を抱える。

 とりあえず、追い払ったのではなく討伐したことは信じてもらえそうだ。

 話を進めていきたいところである。

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