265話 ライルとの思い出 サテラ
「グルルル……。グォオオオッ!!」
レッドドラゴン――ライルの満足気な咆哮が響き渡る。
彼の目の前には、地面に倒れ伏す人々の姿があった。
「うぅ……。くそっ!」
「【竜滅薬】を使っても……勝てないのか……!」
ロゼリアとガルドが忌々しげに呟く。
彼女たちはライルに総攻撃を仕掛けたものの、見事に返り討ちあってしまった。
「グルル……。グォオオッ!!」
ライルは彼女たちにトドメを刺そうと、前足を上げる。
そんな時だ。
「させません! 私とライル様、そして愛娘サティの未来のために……!!」
山娘サテラがライルの眼前に躍り出た。
彼女は彼の前足を支え、攻撃を防ごうとしている。
だが、相手はS級スキル【竜化】を持つ強者だ。
明らかにサテラは力負けしている。
「ぐぬぬぬ……。なんて力……。でも、負けません……!」
サテラが力を振り絞る。
彼女の脳裏に浮かぶのは、かつてのライルとの日々だ。
『この子の父親は、ライル様です。私とあなたの愛の結晶なのです!』
『……なっ!?』
『どうですか? 似ていますでしょう?』
『……ッ!! 俺の子だって?』
そんなやり取りをしたことを思い出して――サテラは笑みを浮かべた。
「ちょっとアレなところもありますけど……。ライル様は私の光! 正気に戻ってください! はああぁっ!!」




