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232話 冗談

「もちろん、お互いに争わないという消極的なだけの同盟ではありません。商業や学問分野などで協力態勢を敷き、お互いに利益を享受する関係を築いていきたいと考えております。貴方様にとっても悪い話ではないかと」


「ふむ……。確かに悪い話ではなさそうだな」


 俺は顎に手を当てて考える素振りをする。

 実際のところ、同盟を結ぶメリットは大きい。

 しかしそれは、俺が『聖竜帝国ホーリードラゴン・エンパイア』の帝王として国の発展を真に願うのであれば、という前提が付く。

 俺がこの国を乗っ取ったのは、あくまでルーシーの蘇生に繋げるためだ。

 国や国民がどうなろうと、知ったことではない。


「俺からも一つ質問をしよう」


 俺はニヤリと笑う。

 使者はゴクリと唾を呑んだ。


「俺がその提案を断ったら、お前はどうする?」


「そ、それは……」


 使者は顔色を悪くして口籠る。

 彼は知っているのだ。

 俺の機嫌を損ねれば、どうなるか。


「俺はブリケード王家から追放された身だぜ? 他国を乗っ取って帝王になった途端に同盟を結んでくれるほど、お人好しだと思うか?」


「それは……。しかし、我々と敵対すれば貴方様も厳しい戦局に置かれるのでは?」


「はっはっは。面白い冗談だな」


 俺はケラケラと笑いながら言う。

 使者は押し黙った。

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