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23話 ゴブリンの群れを一蹴

 男女がゴブリンに追われている。

 俺は彼らの代わりにゴブリンと戦ってやることにした。


「揺蕩う炎の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。火の弾丸を生み出し、我が眼前の敵を滅せよ。ファイアーバレット!」


 俺は中級の火魔法を発動させる。

 もっと上級の火魔法も使えるし、格闘や剣で倒すこともできる。

 だが、ゴブリン程度であれば中級の火魔法が最適だろう。


 上級の火魔法は森林火災が心配だ。

 ならば格闘や剣で戦うのも候補に挙がるが、その場合はゴブリンの汚れが体や剣に付着する。

 ゴブリンという汚物は燃やして消毒するに限るぜ。


「「ぎゃおおぉっ!」」


 ゴブリンたちが焼け死んでいく。

 火力もほどほどに抑えておいた。

 瞬時に灰になるほどではない。

 討伐証明部位の回収も可能だろう。


「す、すげえ……!」


「ゴブリンたちを一撃で……。あの年齢で中級の火魔法を使えるなんて……!」


 途中まで逃げていた男女が振り向き、そう言う。

 自分たちは逃げながらも、戦いの行末を気にしていたのだろう。


「ふん。この程度、造作もない」


 俺はそう言う。

 S級スキル『竜化』を持つ俺にとっては、赤子の手をひねるようなものだ。


 これで、脅威は去った。

 しかし、男女の顔はまだ晴れない。

 今にも、再び逃げ出しそうだ。


「だ、だがよう。あいつらのボスが来たら、さすがに……」


「そうね。君も、今の魔法で魔力が尽きたでしょう? いっしょに逃げるわよ!」


 男女がそう言う。

 普通の魔法使いであれば、そもそもあの威力の火魔法を使えない。

 多少優秀で使える者がいたとしても、1発で魔力が空になるぐらいの威力だ。

 通常の感覚であれば、この者の言っていることは一理ある。

 しかしもちろん、俺の魔力は尽きてなどいない。


「ふむ。ゴブリンの群れは壊滅させたが、まだ後続がいるようだな」


 俺はそう言う。

 先ほどの一団の後方から、援軍がやってきている。

 そしてーー。


 ドシン、ドシン!

 大きな足音が聞こえる。


「ごあああぁっ!」


 一際大きなゴブリンが、叫び声を上げる。


「み、見ろ! あいつはゴブリンキングだ!」


「ゴブリンキングはB級の魔物……。私たちDランク冒険者では厳しい相手だわ……」


 男女がそう言う。

 こいつらはDランク冒険者だったか。

 冒険者ギルドで俺が一蹴したチンピラたちより、さらに下のランクである。

 ゴブリンキングはもちろん、通常のゴブリンの群れですら厳しいのも頷けるな。


「ふん。何かと思えば、ゴブリンキングか」


 俺はS級スキルを持つ。

 『雪原の霊峰』では、A級のギガント・ボアを始め、多数の高ランクの魔物を撃破した。

 今さらB級の魔物ごときに臆する俺ではない。

 ささっと蹴散らしてやることにしよう。

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