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145話 レスティ

「これは……回復薬か……?」


「そうだ。これを飲ませれば、助かるぞ」


「そんな都合の良い話が……いや、お前らは人族だ……。何か企んでいるんだろう……!」


 少女は警戒するように身構える。

 しかし、俺は構わずに言葉を続けた。


「別に何もない。ただ、俺は奴隷商共を殺したし、こうしてお前に回復薬を与えた。誇りある者であれば当然するべきことがあるとは思っているが……」


 こいつは希少種族の獣人だ。

 高い戦闘能力を持っているはず。

 もちろん俺と比べれば足元にも及ばないだろうが、駒はあって困ることはない。


「くっ……人族からの施しなんか……」


「言っている場合か? お前の母親は、放っておくとすぐにでも死ぬ。そしたら、お前は天涯孤独の身になるんじゃないか?」


「……ぐぅッ!」


 俺の言葉を聞いた少女は唇を噛む。

 そして、葛藤の表情を浮かべながら、俺のことを睨んできた。


「クソぉッ!! これは本当に回復薬なんだな!? 嘘だったら許さねぇぞ!!」


「ああ。約束しよう。ほら、早くしろ。母親が死んでも良いのか?」


「分かったよ! チクショウ!」


 少女は受け取った回復薬を母親の口元に運ぶ。

 母親はかろうじてそれを飲んでいく。


「母さん! 母さんしっかりして!」


「…………。ううっ……レスティ……?」


 母親が僅かに反応を示す。

 まだ意識はおぼろげが、ひとまず危機的状況は脱したようだ。

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