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139話 ここから出たいか?

「恨みなんかないさ。ただの仕事だよ。退屈でつまらん仕事だがな」


 俺はそう返答する。

 別に、奴隷商や奴隷に対して俺は悪感情を持っていない。

 王族として、国民を円滑に統治する手法も学んできたからな。

 適度に社会的身分を分けた方が、王族に対して不満を抱きにくくなるものだ。


「りゅ、竜が喋った……?」


 男が驚愕に目を見開く。

 彼の背後の牢屋内では、少女もわずかに目を大きくしている。


「竜が喋ることも知らんのか? 浅学な奴め……」


 まぁ、喋ることができるのは一部の上位竜だけなのだがな。

 だが今はそんなことどうでもいいだろう。


「ひぃ……! た、助けてくれぇ……!」


 檻の中の少女を人質に取ろうというのだろうか。

 彼は震える手で牢屋の鍵を開け、中に入ろうとする。

 しかし――


「ぐげっ……!」


 次の瞬間、男の頭が胴体から離れる。

 血しぶきを上げて倒れた頭部は、そのまま地面を転がって動かなくなった。


「これで仕事は終わりだ。このまま帰ってもいいが……」


 俺は呟きながら、ゆっくりと歩み寄る。

 そして、しゃがみ込んで牢獄の少女と目線を合わせた。


「おい、お前。ここから出たいか?」


「あ……う……」


 少女はかすかな声を漏らすばかりである。

 どうやら、相当にヒドイ目にあってきたらしい。

 全身におびただしい数の傷がある。

 顔色はかなり悪く、目に生気もない。


 これは思っていたより重症だ。

 少し待っても反応がない。

 そこで俺は強硬手段に出ることにした。


「ほら、このポーションを使ってやろう」


 俺はアイテムバッグから取り出した上級回復薬を、彼女の全身にぶっかけた。

 すると――


「う、ううっ……! か、身体が……?」


 少女は初めて、意味のある言葉を発したのだった。

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