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133話 解放してやったぜ

「さぁ、ゲームは俺の勝ちだな。そのナイフは俺のものだ。ほら、早く渡せ」


「ひ、ひぃっ!」


 俺が催促すると、男は慌ててナイフを手渡してきた。


「へ、へへへ……。で、では俺はこれで……」


 男が逃げるように去ろうとする。


「ああ、待てよ」


 俺は男を呼び止めた。


「な、なな……!?」


 男がビクッと震える。


「せっかくナイフを手に入れたんだ。少し試し斬りさせてくれよ」


「ひぃぃぃぃぃっ!」


 俺の言葉の意味を理解したのか、男が叫び声を上げながら全力で逃げ出す。

 だが、俺は一瞬で背後に回り込む。


「捕まえたぞ」


「ああっ! 助けてくださいっ! 殺さないでくださいいい!!」


 俺の手の中で泣き叫ぶ男。


「安心しろ。殺しはしない。ただ試し斬りするだけだ。無事に耐えたら解放してやる」


「そんな……ぐぎゃっ!」


 男が絶望的な表情を浮かべたところで斬りつけた。

 ゴチャゴチャと問答するつもりもないからな。


「あ、ああぁ……」


 男はガクガクと震えたかと思うと、その場に倒れ込んだ。


「お? さっそく効果が出たのか? 気分はどんな感じなんだ?」


 俺は男にそう問う。

 だが、反応がない。

 ただピクピクと痙攣するのみだ。

 どうやら、情報通りかなり強力な麻痺毒らしい。


「……! …………!!」


「ん? ああ、息ができないのか。ずいぶんと苦しそうだな……」


 弱めの麻痺毒ならば、四肢が麻痺するだけで命に危険はない。

 だが、これほど強力な麻痺毒だと呼吸まで止まってしまうみたいだ。

 このまま放置してやってもいいが、それだと『解放する』という約束を破ることになる。


「仕方がない。俺に任せておけ」


 俺は男の足を無造作に掴む。

 そして――ブオンッ!!

 勢いよく彼方へと投擲した。


 あの勢いなら、町の外まで届くはずだ。

 そして、麻痺状態のアイツではまともに受け身を取れずに地面に叩きつけられて死ぬだろう。

 まぁ、麻痺状態でなくとも大抵の奴は死ぬだろうが……。


「くくく……。解放してやったぜ。呼吸困難の苦しみからなぁ!」


 何から解放するとまでは指定していなかったし、これで約束は守ったことになる。

 無法者との約束を守るなんて、俺は律儀な男だなぁ。

 俺は清々しい気持ちで、飛んでいく男を眺めるのだった。

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