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115話 聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)

「すまんな。俺が参加したことで、お前はお役御免になったようだ」


「ライル様がいらっしゃれば、あなたに用はありません。それでは、新しい仕事を探してみてくださいね」


「テメェら……なめやがってぇ……」


 俺とアイシャの言葉を聞いて、男の怒りは頂点に達したようだった。


「ぶっ殺す!」


「それは困ります。ギルド内で暴力沙汰を起こすのは規則違反になります」


「うるせえ!!」


 男が俺に殴りかかってくる。

 アイシャは止めようとしたが、俺が目で制止した。

 この程度、別に気にすることでもない。

 俺は男の拳を右の小指で受け止めた。


「なっ!?」


「軽いな。蚊でも止まったのかと思ったよ」


「ふざけんなぁっ!」


 今度は逆の手で、握りこぶしか。

 それも小指で止める。


「弱い。弱すぎて話にならないな」


「こんにゃろ!」


 続いてハイキック。

 俺は人差し指と中指の間に挟んで止めた。


「ぐうぅ……」


「どうした? これで終わりか?」


「くそぉおおお! なんなんだ、お前は! お前は何者だぁ!?」


「俺か? 俺はただのBランク冒険者で、『聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)』のリーダーだよ」


「なっ!? れ、例の『聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)』だと……」


 名前は知っているようだ。

 俺も有名になったものだな。

 だが、顔と名前が一致していないあたり、まだまだ中途半端な知名度のようだ。

 まぁ、あまり有名になりすぎるとブリケード王国に気付かれるかもしれないから、今ぐらいがちょうどいいか。


「お前が高ランクのスキル持ちだって噂は本当なのか……?」


「さぁ? どうかな? お前ごときに教える義理はないな」


「ぐぬうっ!」


 男が悔しそうな声を上げる。

 実力の差を感じているようだ。


「クソダサいパーティ名にした奴はどんな勘違い野郎かと思っていたのによ。これほどの化け物だったとは聞いてねぇぜ」


「――は?」


 今、なんて言った?

 俺の聞き間違いじゃなければ、『クソダサいパーティ名』と言ったような……。


「くたばれ」


「ぷごっ!?」


 俺は男を殴り飛ばした。

 もちろん、加減はしている。

 俺が本気を出せば肉体ごと消滅するし、ほどほど程度でも首から上がバイバイすることは確実だ。

 ただ吹き飛んでいっただけという時点で、俺がどれほど手加減したか分かるというものだろう。

 壁に激突した男は白目を剥いて気絶している。


「――なぁ、アイシャ」


「は、はい。なんでしょうか?」


 俺の怒気を感じたのか、アイシャまで顔を青ざめさせていた。


「聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)……カッコいい名前だよな? クールでワイルドなパーティ名だと思うよな?」


「そ、そうですね。少なくとも私の中では最高です!」


「ああ、よかった。この男の感性が貧弱だっただけだよな」


「ソノトオリです」


 アイシャがぎこちなく笑ってくれる。

 パーティ名のカッコ良さを再認識したことだし、何も心配することはない。

 違法奴隷商の摘発へ向けて動き出すことにするか。

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