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112話 アイシャ

「よう。この俺が来てやったぞ」


 翌朝。

 俺は冒険者ギルドにやってきた。

 職員のアイシャに会うためだ。

 一度受付嬢を通そうかと思ったのだが――


「ライル様。すぐに応接室へご案内いたします!」


 なぜか、彼女は飛んで来た。


「おう、話が早いな」


「はい! ライル様に会えるのをずっと心待ちにしていましたので」


「そうなのか? それは悪いことをしちまったかな」


「いえ、いいのです。だって今日はライル様とお話しができるのですから」


 アイシャは満面の笑みを浮かべていた。

 初対面では生意気だった彼女も、完全に屈服しているな。

 最初に威圧して実力の差を分からせて、性的な快楽を与えると同時に”竜の加護”を付与し、さらには盗賊団の討伐で社会貢献する姿も見せてやった。

 おかげで、すっかり俺に懐いているようだ。


「こちらへどうぞ」


「ああ」


 俺はアイシャのあとに続き、応接室に入る。

 そしてソファに座ると、お茶を出してきた彼女に切り出した。


「それで、話なんだが。お前に頼みがある」


「はい! 何なりとご命じください」


 アイシャは目を輝かせながらそう言った。


「近いうちにシルバータイガーの捕獲を計画している。そこで、人手を集めていてな」


「シルバータイガーの件は聞いております。しかし、人手でございますか? ライル様であれば、シルバータイガーを討伐することは容易では?」


「話はちゃんと聞け。討伐ではなく捕獲なんだ。それも、牙に傷を付けないように注意してな」


 良質な”白銀の大牙”を手に入れるためには、そうする必要がある。


「ああ、なるほど……。ライル様は大変お強いですが、そのため牙ごと粉砕してしまう危険があるということですか」


「まぁ、そんなところだ」


「わかりました。私にできる範囲の協力は惜しまないつもりです」


「助かるよ」


 俺は礼を言う。

 拒否するようであれば”命令”して、肉体に分からせてやることも考えていたが……。

 こうすんなり了承してくれるのであれば、楽なものだな。


「であれば、さっそく引き継ぎをしておきます。……ちょっとそこのあなた!」


「は、はい?」


 アイシャが通りすがりのギルド職員を呼び止める。

 こちらも、若い女性だ。


「私はライル様のお手伝いをすることになりました。取り掛かる予定だった仕事は全てあなたに引き継ぎます」


「え? は? ……ど、どういうことでしょうか」


 女性職員は混乱した様子だ。

 アイシャの美点は話が早いことなのだが、いくらなんでもいきなり過ぎるだろう。

 ここは俺からもフォローしてやる必要があるかもしれない。

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