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103話 ドラゴンクロー

 俺はギガント・ボアを撃破して少女を助けた。

 次は村人たちを襲っているミドル・ボアどもだ。


「うわああぁっ! も、もう駄目だべぇっ!」


「だ、だが、逃げるわけにはっ! 村には女子供だって……」


「く、来るぞ!!」


「ブモオオオッ!!」


「「「ひぃいいいっ!?!?」」」


 彼らはミドル・ボアの群れを前にして右往左往している。

 正面から戦えば蹴散らされるしかないが、村を背後にして逃げることもできないといったところか。

 何人かは、すでにやられて倒れてしまっている。


「仕方がない……」


 ここは時間をかけずに速攻で決着をつけるとしよう。

 ブレス系の魔法を使えば早いが、巻き添えしないように調整するのが面倒だ。

 ここは――


「……【ドラゴンクロー】」


 魔力を集中させ、右腕を変化させる。

 腕を伸ばし、爪を巨大化させたのだ。

 竜化状態の俺のほんの一部だけを顕現させたようなイメージだな。


「くたばれっ!」


「ギャウゥンッ!!」


 俺は攻撃力を強化した状態でミドル・ボアに接近し、次々と切り裂いていく。

 そして、ものの数十秒で全てを倒した。


「ふう……」


 俺は息を吐きだし、右手を元に戻す。

 すると、周囲からは大歓声が上がった。


「うおおおっ! 凄えっ! すげえべっ!!」


「たった1人であの数をっ!?」


「これで村は救われるっ!」


「助かりました!」


「よく見れば、あなた様はいつぞやの……」


「お久しぶりでございます。ライル殿」


 村人たちが口々に感謝の言葉を口にする。

 俺のこともちゃんと覚えてくれているようだな。


「ああ。久しいな。元気なようで何よりだ」


「はい。お陰さまで皆、無事でした。本当にありがたいことです」


「ははは。大げさだな。ところで――」


 俺は周囲に倒れ伏している男たちに目を向ける。

 全部で5人。

 全員、かなりの深手を負っている。

 ミドル・ボアとの戦闘で負った傷だろう。


「大丈夫か?」


「ぐぅ……ッ! い、痛てえ……。だが、死ぬほどじゃねえ」


「だ、大丈ぶー……です。まだ動ける……んぎゃあぁあっ!!」


「こりゃあ、骨が折れてるかもしれんべ……」


 男たちはそれなりに重症ではあるようだったが、死んではいない。

 戦闘不能状態ではあるが、命に関わるほどの怪我ではなさそうだ。

 この分なら、放っておいても死にはしないだろうが――


「こいつらはどうするのだ?」


 俺は村長に尋ねる。


「村を守るために戦った勇敢な者たちにございます。もちろん村に連れ帰り、静養させるつもりですが……」


「ふむ。まぁ、そうだろうな」


 別に死んだわけではないので、普通に考えれば大きな問題はない。

 だが、ここは山村だ。

 怪我人を抱えていては、今後の村の運営に悪影響もあるだろう。

 ここは一つ、実験を兼ねて手助けしてやるとするか。

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