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102話 急行

 俺は”雪原の霊峰”の近くにある山村にやって来た。


「ん? あれは……」


 村まではまだかなりの距離がある。

 だが、S級スキル竜化を持つ俺の視力や気配察知能力をもってすれば、この距離からでも人や魔獣の動きを把握することができる。


「村が魔獣に襲われているようだな。どれ、少し急いでやるか」


 俺は村へ急行する。

 そして――


「よう。また会ったな」


 まずは、ギガント・ボアにやられかけていた少女を助けに動いた。

 ギガント・ボアの突進を体を張って防ぎ、彼女に話しかける。


「あ、ああぁ……、ライル様……、ライル様ぁ……っ!」


 すると、少女はポロリと涙を流した。

 その表情は喜びに満ちている。


「ライル様……! ライル様……!! 助けに来てくださったのですね!!」


「お、おう……。まあ、そういうことだ。怪我はないみたいだな。よかったよ」


 感極まった様子の少女に抱き着かれ、少々困惑してしまう。

 ここまで大げさな反応をされるとは思わなかった。


「はい! 私は無事でございます!!」


「そ、それは何よりだ。さて、積もる話もあるだろうが――」


「ブモオオォッ!!!」


「こいつらを片付けるのが先だな」


 俺は少女から視線を離し、ギガント・ボアを睨みつける。

 そして、地面を踏み砕いて走り出した。


「はぁあああっ!!」


 ギガント・ボアは俺よりも一回り以上大きい巨躯だが、所詮は俺の敵ではない。

 一気に間合いを詰めると、その勢いのまま強烈な一撃を叩き込んだ。


「ブゴオァアッ!!」


 顔面を打ち抜かれたギガント・ボアは断末魔の声を上げて崩れ落ちる。


「す、すごい……。私や村人総出でも歯が立たなかったのに……!」


「これぐらい大したことじゃないさ」


 俺の『竜化』スキルは覚醒を続けている。

 昨日の俺よりも、今日の俺の方が強い。

 ギガント・ボアは、1か月以上前にこの村を通りがかった時点での俺でも楽に勝てた相手だ。

 今の俺の敵ではないことは、ある意味当然とも言える。


「さあて、次はあっちのミドル・ボアどもを蹴散らしてくるか」


「ありがとうございます。ならば、ささやかながら私もお手伝いを――」


「不要だ」


 俺は少女の申し出を即座に断る。

 雑魚の集団を狩る際に、中途半端な味方ほど邪魔なものはない。

 本来であれば『ブレス』系統の魔法で一掃すれば早いのだが、ミドル・ボアの周辺には村人たちが倒れている。

 下手に巻き込んでしまうわけにはいかない。

 ただでさえ邪魔な奴らがいるというのに、この上少女にまで同行されては堪らない。


「お前はここで待っていろ。なぁに、すぐに終わるさ」


 そう言って、俺は再び駆け出すのだった。

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