第32日目 リセッター改良版
手押し一輪車に伸びたエディとフレッドを運ぶ私達を学生達は興味本位で見つめている。
「くそっ!注目を浴びてるな・・・。」
昨夜降った雨のせいで足場が悪く、ガタガタとぬかるんだ道を歩く私達。
ダンがフレッドを乗せた押し一輪車を押しながら忌々し気に言う。
そうだった・・・ダンはエタニティス学園の学生達を嫌いだったんだっけ。
「全く・・・まるで見世物状態だ。」
トビーも仏頂面で手押し一輪車に乗せられたエディを運びながら言う。
う~ん・・・・これはマズイかも・・・。幾ら好感度が高くても、彼等はかなりイライラしているようだ。ここは素直に謝って置こう。
「すみません・・・・お2人にこんな事お願いして・・・。今度何かお詫びさせて下さい。」
うん。何か今度ご馳走すればいいよね?
すると、突然狼狽したようにダンがとんでもない事を言ってきた。
「い、いやっ!俺はお前にイラついている訳じゃないからな?そうだな・・・よし、どうしてもお詫びがしたいと言うなら今日2人で以前一緒に乗った観覧車・・・あれにもう一度二人で乗ろうっ!」
「な・・・何だって?!エリスゥッ!き・・・君はダンと2人で観覧車に乗ったことがあるのかい?!」
有ろう事か、トビーが手押し一輪車をバッと離して、ガシイッと私の両肩に手を置くと、涙目で訴えて来る。
ギャ~ッ!!こ、怖いっ!!
その時・・・
ドサッ!!
背後で大きな音が聞こえた。
恐る恐る後ろを振り返り、私達は思わず目を見開いてしまった。何とそこにはバランスを崩した手押し一輪車が横倒しになって地面にエディが倒れているでは無いか。
しかも最悪な事に雨でぬかるんでいた泥の上に・・・。
そして無情にもエディは全身泥まみれになっている。それでも目覚めないエディ。
「「「ヒエエエエッ!!」」」
私達3人は綺麗に声を揃えて叫んでしまった。
「ど・ど・どうしようっ!エリスゥッ!そ、そうだ・・・もうこうなったら2人で手を取り合って、この学院を逃げるしかないっ!今すぐ逃げよう、エリスゥッ!!」
パニックになったトビーは私の右手をムンズと掴むと、走り出そうとする。
「おいっ!待てっ!そんな勝手な真似はさせられないぞっ!」
ダンがトビーの襟首を捕まえたその途端・・。
ドサッ!!
今度はダンが運んでいたフレッドがバランスを崩した手押し一輪車から落下して地面に落ちてしまった。
私達は無言で泥んこまみれになってしまった2人の『白銀のナイト』を見下ろしていた。
「「「・・・・。」」」
ダンは顔を青ざめているし、トビーに至っては小刻みに震えながら涙を浮かべている。
ああ・・・もう駄目だ・・・。でも、元はと言えば私がエディとフレッドを気絶させてしまったのが原因。ダンとトビーを巻き込むわけにはいかない。
溜息をつくと私は言った。
「ダン・・・トビー・・・。後は私が何とかしますので・・・お2人はこのまま立ち去って下さい。」
「な・・何だってっ?!そんな事出来るはず無いだろうっ?」
ダンが驚いた様に私を見る。
「そ、そ、そうだよっ!エ・・エ・エリスゥッ!君だけ置いて立ち去れるはずが無いだろうっ?!」
トビーは逃げ腰になりながら言う。
「いえ・・・彼等は貴族でしかも『白銀のナイト』ですよ?平民の私達が・・・彼等にこのような事をして・・無事で済まされるとは思えません。ましてや、ここに泥んこまみれになっているフレッド様は、切れるとすぐに抜刀してしまう危険人物なのです。だから・・・ここは私に任せて2人はすぐに立ち去って下さい。」
「エリスッ!!お前は・・・お前はどうするんだっ?!」
ダンは未だに青ざめた顔をしている。
「そうだよっ!逃げるなら君も一緒だよっ!」
トビーは涙でぐしゃぐしゃな顔で私に言う。
う・・・その涙顔・・気色悪い・・・。
「だ・・・大丈夫ですっ!私にはとっておきの秘策があるんですっ!だから私に任せて、2人はここから立ち去って下さいっ!」
そう、いつまでもこんな事をしていれば今に2人が目を覚ましてしまう!
「「だ、だけど・・・・。」」
声を揃えてそれでもその場を立ち去らない2人についに私は言った。
「2人供・・・ここまで言って、まだ立去らないなら・・・・絶交しますよ。もう口をきくのもやめます。」
「わ、分かったよっ!た・・達者でな!」
「エリス・・・・さ、さよならっ!」
まるで今生の別れ?のような台詞を言いながら逃げ去るダンとトビー
そんな彼等の後姿を見送りつつ、私は呟く。
「元気でね・・・2人供。」
そしてまず最初に私は泥んこまみれで未だに伸びているフレッドの側へ行く。
好感度が今幾つなのか確認したかったのだが、どうやら不便な事に彼等が意識の無い状態?では好感度が表示されないようだ。勿論エディも然り。
「フフフ・・・全く何て使えないシステムなの・・・。」
腕組みをしながら、半ばやけくそになって笑う私。どうしよう?このままいっそ私もダンやトビーのように逃げてしまおうか?でもそうなると最も立場が悪くなるのは間違いなくベソとノッポだ。彼等が仮にフレッドに殺られようものなら、困った立場になるのはこの私だ。それだけは絶対に避けなければ・・・。
こうなったら・・・。
「何か、役立つアイテムは無いかな?」
急いではめていた腕時計をタップして便利アイテムが無いか必死で探す。しかし、中々見つからない。徐々に焦りが出て来る。早く・・早く何か良いアイテムを見つけなければ・・・彼等が目覚めてしまうっ!
そしてついに私は見つけたっ!
「ん・・?何・・?リセッター改良版・・?一体何だろう?」
そこに乗っていたのは以前、『暴れ牛の制圧』でベソとノッポが持って来たボタンに似ているアイテムである。よし、まずは説明書きを読んでみるか・・・。
『このボタンを対象者に向けて押すと、その人物の時間が巻き戻ります。1回押すごとに10分前の時間に遡る事が出来ます。』
「おおおおっ!これよっ!これっ!今まさに私が必要としている究極アイテムは・・・さて、一体どの位のポイントで交換出来るのかな・・・・?げげっ!」
思わず目を見開いてしまった。何と魔法の絨毯程では無いものの、60000ポイントも必要では無いかっ!
「神様、仏様、お釈迦様・・・どうぞポイントが足りますように・・・。」
必死で祈りながら恐る恐るポイントを確認すると、現在自分の持ち分は70000ポインと残っていた。
おおっ!こ、これならいけるっ!早速液晶画面をタップして、リセッター改良版をゲット!
「さて、2人を元通りにしないとね・・・。取りあえず手押し一輪車を安定感がある場所に移動させて・・・・。」
私は2台の手押し一輪車をそれぞれ安定感のある芝生の上に移動させた。
「どうか、うまくいきますように・・・。」
そして、リセッター改良版を取りあえずカチカチカチと3回押してみる。
「よし・・・ではスイッチオンッ!」
大袈裟に指を振りかざし、時間をセットしたリセッターをフレッドに向けて、カチリと押す・・・っ!
すると、泥まみれのフレッドはその場でパッと消え失せた。慌てて芝生を見ると、そこには手押し一輪車の上に乗って伸びているフレッドの姿が!勿論当然の如く、身体は泥にまみれていない。
「や・・・やったっ!成功したっ!それじゃ、次はエディだっ!」
そして、先程と同様にボタンを3回カチカチカチと押してエディに向けてセットオンッ!
途端にエディの姿は消え失せ、フレッド同様に手押し一輪車の上に乗って伸びた状態のエディの姿が現れた。
「う~ん・・・それにしても・・一体いつになったら2人は目を覚ますのだろう・・・?」
腕組みしながら考えていると、不意にピロリンと音が鳴り、液晶画面が表示され・・・・。
「ええ~っ?!」
思わず大声で叫んでしまった・・・・!




