第32日目 コンピータ―ウィルスとの駆け引き?
「と言う訳で・・・好感度を下げられてしまった『白銀のナイト』2名の好感度をチョイチョイッと上げて頂戴。」
味噌ラーメンを食べ終えた私はベソとノッポに言う。
「何がお詫びですか・・・。」
ベソが恨めしそうにこちらを見る。
「そうですよ・・俺達はちゃんと協力してあげたのに・・・。」
ノッポの言葉にイラッときた私は言った。
「ねえ、何度も言うけどあれの何処が協力なのよっ!協力って言うのはね、何か特別なアイテムを出現させるとか、ちゃんと音声で相手に指揮を取る事を協力って言うんじゃないの?だいたいこっちは作戦?の意図を何も知らないんだから、あんなのが協力なんて認めないからねっ?!さあ!ベソにノッポ!好感度を下げられてしまった2人の白銀のナイトを探して、すぐに好感度を取り戻して、ついでに彼等の好感度をあげて頂戴っ!」
大袈裟な身振り手振りで私は2人に指示をする。
「はいはい、分かりましたよ。」
ベソがPCに向いながらぼやく。
「全く・・・・エリスさんは人使いが荒いんだから・・・・。」
ノッポもPCへと向かった。
ふふん、今日はすごく楽出来そうね。この2人が好感度をアップさせてくれたら、温泉施設へ行ってのんびりゴロゴロ過ごそうかな・・・?
その時・・・。
「うわああっ?!」
「な、何だ何だっ?!」
ベソとのノッポがほぼ同時に悲鳴を上げた。
「な、な、何よっ!一体何が合ったのっ?!」
慌てて2人の元へ駆け寄ると、ベソのPC画面は真っ赤に染まり、「error」という文字が大量に画面に浮かび上がり、一方のノッポのPC画面は緑色に染まり、意味不明な英文画面が上から下に向けて物凄い速さで流れている。
「くそっ!監視サーバ―がやられたっ!」
ノッポが頭を抱え込んでいる。
「こっちもプログラムが汚染されたっ!」
「「しゅ、修復しないとっ!!」」
2人が声を揃えて叫ぶ。
「え?え?ちょっと待ってよ。2人供、私の御願いはどうなるの?ねえ?!攻略キャラの好感度アップは?一体どうするのよっ?!」
「そんな事やってる暇なんかありませんよっ!」
ベソが叫ぶ。
「そうですっ!自分の事は自分で何とかして下さいよっ!まずはこちらを修復しないと・・・この世界がどうなるか分かりませんよっ?!エリスさんっ!この世界の何処かでコンピューターウィルスが発生した可能性がありますっ!駆除しに行って下さいよっ!」
ノッポも叫ぶ。
「え・・?」
何だか、今・・・怖ろしい話を聞いた気がする。
「ちょ、ちょっと待ってよっ!それじゃあ、そのウィルスは一体何処にいるの?!」
「そんな事我等は知りませんよっ!ご自分で何とか探してくださいっ!」
何とも無責任な台詞を吐くベソ。こ、この2人は・・・私に丸投げかっ?!
「わ・・・分かったわよ・・・。その代わり・・・私が見事コンピューターウィルスを探し出して駆除出来たら・・・その時は『焼肉天国』の牛カルビ定食をご馳走して貰うわよっ?!」
そして私は2人の返事を待たずに、『管理事務局』を飛び出した—。
「ふう・・・。しかし・・・啖呵を切って飛び出してきたのはいいけど・・・・そのコンピューターウィルスって一体何処にいるのよ・・せめて何かヒントとか、探知機があればいいのにな・・・。」
そう思いながら歩いていると、ふと自分の左腕にはめている腕時計に気が付いた。
「まあ、ポイント交換アイテムにウィルス探知機のようなアイテムがあるとは思えないけど・・・。」
言いながら液晶画面をタップして、ポイント交換アイテム一覧表を表示させる。
「う~ん・・・やっぱりないなあ・・・。」
画面を次々と送りながらアイテムを探すも収穫は無し。
その時・・・私は液晶画面右上に赤字で「New!」と表記された文字を見つけた。
「何だろう・・・?何か新しいシステムかな?」
そして私は何気なく文字表記をタップした。
すると、画面が切り替わり、説明文が表示された。
「新機能『ウィルス探知』が搭載されました。現在コンピューターウィルスが発生中の場所を教えてくれる便利な機能です。地名と場所、そして地図が表記されますので、是非ご活用下さい。」
「は?何・・・これ?何時の間にこんな機能が搭載されていたの?でも・・・だとしたら何て素晴らしいのっ!これは・・早速試さないとねっ!」
そして私は『ウィルス探知』をタップした。
すると画面がパッと切り替わり、場所が表示された。
「え・・?な、何・・・。う、嘘でしょう・・?」
何とそこに表示されたのは私がたった今まで滞在していた『管理事務局』だったのだ。
そしてその場所に2つの光るマーカーが表示されている。
「ひょっとして・・・この光るマーカーは・・・コンピューターウィルスなのかも・・・。2つ光っていると言う事は2体出現したと言う事なのかな?と、とに角急がなくちゃ、ベソとノッポが!って・・・でも確かあの2人なら強力なウィルス駆除のアイテムを持っていそうだよね・・・。まあきっと大丈夫でしょう。」
そして私はのんびり?『管理事務局』へ向かう事にした。
「ベソ〜。ノッポ〜。どう?片付いた?」
ドアをノックする事も無く、ガチャリとドアを開けた私はそこで固まってしまった。
何故ならそこには刀を構えたフレッドとエディが立っていたからである。
「え・・・?フレッド様?エディ様・・・な、何故こちらに・・・?」
すると奥から叫び声が聞こえて来た。見るとそこには本棚等でバリケードらしきものを築き、震えながらこちらを見ているベソとノッポの姿があった。
「エ・・エリスさんっ!た・・助けて下さいよっ!」
ベソが半べそ・・どころか本気で泣きわめきながら私に助けを求めて来る。
「と、突然こ・このふ・ふ・ふ・・2人が俺達の所へやや・やってきて・・け、剣を振り回してお・俺達をこ・殺そうとしたんですよっ?!」
舌を噛みながらノッポが喚いている。
「い、一体お2人はこんな所で何をされているんですか?」
フレッドとエディに駆け寄ると私は尋ねた。
「別に・・・何となくあの2人が前から気に喰わなかっただけだ。」
フレッドが抜刀しながらこちらをジロリと睨んでくる。
ひえええ・・・こ、怖い。
「ベネット・・・邪魔立てするならお前もただではすまんぞ?」
エディも眼鏡の奥で冷たい光を宿した目でこちらを見ている。ベネット・・・私の事をそう呼ぶと言う事は・・・やはり好感度が下がったのはこの2人だ。そして・・恐らくコンピューターウィルスと言うのはこの2人・・・。ええ?!ま、まさか・・・この2人がコンピューターウィルスなのっ?!
「あははは・・・ま、まさか・・・。」
思わず冷汗が出て来る。
しかしそんな私をチラリとフレッドは一瞥すると、再びバリケード?の奥で震えているベソとノッポを見る。
「おい・・・いつまでそんなところで震えている?俺の気が変わらない内に早くそこから出て来るんだ。さもなくば・・・切るっ!!」
「「ヒエエエエッ!!」」
ベソとノッポが互いに抱き合って声を揃えて悲鳴を上げる。
「ま、待って下さいッ!フレッド様っ!あ、あの2人はフレッド様が手を掛ける程の人間ではありませんよっ?!け・剣が汚れるだけですっ!!考え直してください!」
するとベソとノッポが悲鳴交じりに詰って来た。
「酷いっ!エリスさんっ!」
「それでも人の血が流れてるんですかっ?!」
「うるさいっ!お前ら・・・。ベネットの事は別に何とも思っていないが・・・お前達と妙に仲がいいのが気に入らないっ!おまけに・・・今の言い方は一体何だっ?!」
エディが2人を指さして怒鳴りつけた。
「ああ・・そうだ。何故お前達が気に入らないか・・・お前達が妙にベネットと仲が良いから・・・気に食わなかったんだ・・・。」
フレッドもエディと似たような事を言う。
え・・・?それって・・・ひょっとして・・・この2人はベソとノッポに嫉妬してるって事?
それなら・・・。
「はい、私とベソ、ノッポは・・・とても仲がいいんです。この間は2人がまだ眠っている時間にこちらを訪ねましたし、今朝は3人で朝ご飯を頂きました。」
「な・・何っ?!」
「そ、それは本当かっ?!」
エディとフレッドが私を振り返ると言った。
「「エリスさんっ!!何て事を言うんですかっ!!」」
バリケードの奥では2人が声を揃えて喚いている。
「あの2人は・・・何と言うか、一緒にいて安心出来るんですよ。(同じリアルな人間だから)ですが・・・白銀のナイトの方々は皆さん、私にとっては雲の上のような存在の方々で・・本当は、もっともっとフレッド様やエディ様とも距離を縮めたいのですが・・・所詮私は只のメイドのエリスですから・・・。」
「そうか・・・。それでお前はひょっとすると・・・あの2人と交流を深めていたのか?」
エディが言う。
「はい、私はオリビア様に散々嫌がらせをして・・・爵位を剥奪された人間です。こんな私と好き好んで親しく付き合ってくれるのは・・やはりあの2人だけかと思って・・・。」
言いながら、なるべく上目遣いで可愛く見えるようにしおらしい姿をしてみせる。
「いや・・・少なくとも俺はお前と親しくなっても構わないと思ってるぞ?」
エディは私の顔をじっと見つめながら言う。
「ああ・・・俺もそう思っている。」
フレッドもベソとノッポから注意を逸らした。
「そうですか?それなら・・・剣を・・しまって頂いても宜しいでしょうか?」
「あ、ああ。分かった。しまおう。」
フレッドが剣を鞘に納めた・・・・。よし、今だっ!
「ベソッ!ノッポ!今の内に逃げてっ!!」
私の言葉にベソとノッポがバリケードの隙間から逃げ出した。
「しまった!」
「逃がすかっ!」
フレッドとエディの注意が私からそれた。今だっ!
「ウィルス駆除っ!!」
私が叫ぶと、身体から眩しい光が放たれるっ!!
そして魔女っ娘メイドエリスに変身っ!
「ウッ!!」
「ま・・眩しいっ!!」
フレッドとエディが怯んだ隙に・・一か八かだっ!
「メイドのお仕置きっ!!」
握りしめた杖から雷が2人に向って放たれる―。




