第28日目 死の砂漠から呼ぶ者は ③
学園の校舎を繋ぐ美しい園庭を私達は歩いていた—。
「そもそも、エリスを含めて6人で『アルハール』へ行かせようとする上層部がおかしいんだ。」
怒りを露わにしながら先頭を歩くのはジェフリー。
「ああ。全く持って納得がいかない。しかも『アルハール』は危険な砂漠地帯だ。何故エリスを討伐隊のメンバーに加えるのか・・・全く無謀な話だ。」
眼鏡をクイッと上げながらジェフリーの後を歩くのはエディ。
「大体、モンスターの正体も分からないのに僕達全員を『アルハール』に向かわせないなんて・・・学園長たちは何を考えているんだろう?意味が分からないよ。」
何故か私の右手を繋ぎながら歩くのはアドニスだ。
「意味が分からないのはこっちの台詞だ。おい、アドニス。何故お前がエリスの手を繋いで歩いているんだ?」
イライラしながらアドニスの後ろを歩くフレッド。
「何故、僕にだけ言うのさ。それならアンディにも言えばいいだろう?」
口を尖らせながらアドニスは私の左手を握りしめているアンディをチラリと見る。
「俺とアドニスはエリスの手を繋ぐ権利がある。何故ならいち早くあみだくじで討伐隊のメンバーに選ばれたんだからな。そう思わないか?エリス。」
突然私に話を振って来られても困るんですけどっ!
「何を言ってるんだ?そもそも一番端に書いた名前からあみだくじを開始したんだから、お前とアドニスが最初に選ばれるのは当然だろう?」
アベルが恨めしそうにアドニスに文句を言う。
そうなのだ、あみだくじを作る際に上に書いたのは名前で下に書いたのは当たりか外れをランダムに書いてしまったのである。そして一番左に書かれた名前から順にあみだくじの線を辿る・・という方法を取ってしまった為、たまたま?運が良くアンディの次に名前を書いたアドニスが二人目の討伐隊のメンバーに選ばれたのである。
「くそっ・・・。こんな事なら当たりはずれではなく、数字の番号にして置けばよかった・・・!そうすれば1を引き当てられたかもしれないのに・・・。」
真面目な顔つきで言うのはエリオット。
だけど・・・この際だから言わせてもらいたい。どうして理事長室へ行くのにわざわざ手を繋いで歩かなければならないのだろう?しかも背の高い2人に両手を繋がれて歩かされていると、自分が迷子になって保護されている子供になってしまったような錯覚に襲われてしまう。
「所でエリス・・・。」
左手をしっかりホールドしているアンディがコホンと咳払いしながら私を見た。
「はい、何ですか?」
アンディを見上げつつ、チラリと彼の好感度を見てみる。更に全員の好感度をザッと見ると、何故か彼等の好感度は全員300になっていた。
これはもしや・・・ベソとノッポが、今回『アルハール』へ着いて来れない罪滅ぼし?の為に全員の好感度を300にしてくれたのだろうか・・?うん、そういう事にしておこう!
「背中に背負ってるそれは何だい?」
右隣を歩くアドニスが私の背負っているタンクを指さしながら尋ねて来た。
「はい、これは管理事務局にいる方達から借りてきた『モンスター駆除機』です。実は最初に『アルハール』にモンスター討伐に行かなければならないと言う命令があった時に、あの2人に声を掛けたのですが、断られて・・・。」
そこまで言って、何やら背後から殺気?を感じて慌てて振り向く私。
「何だって?エリス・・・・。俺達に最初に声を掛けないであの訳の分からない覆面男達に声を掛けたのか・・・?」
フレッドが怒りを抑えながら話しかけてきた。
ヒエエエッ!好感度が上がっても・・・・相変わらずフレッドはおっかない!
「おい、やめろ。エリスが怯えているだろう?」
そこへ紳士のように立ちはだかるのはエディである。
「うるさいっ!お前・・・エリスの前だからって恰好付ける気か?知ってるんだぞ?この間、エリスにキスしたそうじゃないかっ!」
フレッドが今にも抜刀しそうな勢いでエディを睨み付ける。あの~そういう貴方も確か眠っている私にキスしましたよねえ?もしかしてバレていないと思っているでしょう?
「な、な、な・・・そ、それとこれと何が関係あるんだっ?!」
エディは真っ赤な顔で抗議し、いつの間にか2人はその場に立ち止まり激しく口喧嘩を始めてしまった。
すると、それを見ていた残りの5人の『白銀のナイト』達。
「これは・・・。」
アベルが言う。
「うん。離れていた方が良さそうだね、エリス。こっちへおいでよ。」
「ああ。ここにいたら危ないぞ。」
アドニスとアンディに手を引かれ、何故か口喧嘩をしているエディとフレッドから引き離される。
「・・・そろそろきそうだな?」
エリオットがボソリと呟く。
え?きそう?きそうって何がくるの?
「そ、それよりあの2人の喧嘩を止めなくていいんですかっ?!」
何だかさっきからエディとフレッドの身体からバチバチ火花が散り始めている。
「まあまあ、大丈夫。この位距離が離れていれば、まず巻き添えは食わないって。」
アベルがニコニニコしながら言う。
え・・・?何だか凄く嫌な予感がしてきた。そうこうしている内に、ますますエディとフレッドの放出する火花が激しく散り始め・・・・。
そして次の瞬間―
ドーンッ!!
激しい火柱が上がった―
「キャアアアアアンッ!!」
あまりの爆音に耳を塞ぎ、悲鳴を上げる。そして一斉に顔を赤らめ、私を見る5人の『白銀のナイト』達・・・・。
そして、火柱の後には2人仲良く地面に気絶しているエディとフレッドの姿があった。
「イヤアアアアンッ!た・た・大変ですっ!エディ様とフレッド様がっ!」
「・・・どうやらこれで決まりだな。」
頬を赤らめながらアンディが言う。
「うん。丸く収まったね。」
アドニスも顔が赤いぞ?
「お、おまえ・・・いい加減その悲鳴・・・な、何とかならないのかよ・・・・。」
アベルが顔を真っ赤にしながら私に言った。
「取りあえず、あの2人を医務室に移動させるか?」
エリオットがスタスタと気絶しているエディとフレッドの方へ歩いていく。
「俺も手伝うよ。お前達、先に行くなよ?それじゃ、1時間後に駅に集合だからな?」
ジェフリーがこちらを見ながらエリオットの後を追いかけた。
そしてエリオットはフレッドを、ジェフリーはエディを背負うと2人で何処かへ歩き去って行った。
「あの・・・・。今のは一体・・?」
私は呆然と彼等を見送りながら誰に言うともなしに口を開いた。
「ああ。あの2人・・・勝手に喧嘩を始めて、勝手に自爆してくれたな。」
自爆・・・怖ろしい台詞をサラリと言ってしまうアンディ。
「でも、これで理事長室へ行く手間が省けたね。」
アドニスは嬉しそうに言う。
「ああ、これで討伐隊のメンバーは決定だ。よろしくな、エリス?」
アベルは私の両手を握りしめると、ブンブン振った。
え?え?
「あ、あの・・・。もしかして・・あの2人を自爆?させる為に・・・喧嘩を止めなかったんですか?討伐隊メンバーから外れて貰う為に?」
まさかね~とは思いつつ、彼等に尋ねてみた。
「「「・・・。」」」
すると何故か全員黙りこくってしまう。あ、やっぱり・・・・。
最早『白銀のナイト』達は仲が良いのか悪いのか訳が分からなくなってしまった。
「まあ・・・・でもこれで穏便に討伐隊メンバーが決まったんだからいいんじゃないのかな?」
アドニスが笑みを浮かべながら言う。
「だ、だって!さっきあみだくじで決めましたよね?フレッドさんとエディさんは討伐隊のメンバーに選ばれていましたよ?逆に・・・選ばれなかったのはエリオットさんとジェフリーさんじゃないですかっ!」
そう、なんたる偶然か・・・・医務室に運びに行ったエリオットとジェフリーは外れくじだったのだ。
「そうだよ、だからせめてもの罪滅ぼし?で医務室に運びに行ったんじゃないか?」
何とものんびりした口調で話すアンディに思わず呆れてしまった。
「皆さんて・・・・本当は・・・仲が悪かったんですか・・・?」
ああ・・・私の中で『白銀のナイト』達のイメージが崩れて行く・・・。ゲーム中では全員が力を合わせて戦いに臨んでいたのに・・・。
「いや?俺達は基本的に仲はいいぞ?だって喧嘩でもしようものなら魔力のぶつかり合いでああいう目に遭ってしまうからな。」
アベルは腕組みしながら私を見た。
「でもねえ・・・君がいけないんだよ?エリス。」
突然スルリと私の右手に指を絡めて来るアドニス。
「へ・・?な、何故・・・私のせいなのでしょう・・・?」
「それはお前が俺達の心を惑わすからだ。エリス。」
じっと見つめて来るアンディ。
「はあ?!な、何故私のせいにするんですか・・と言うか、『アルハール』はすごく遠いんですよね?私・・宿舎に戻ってすぐに出掛ける準備をしたいんですけどっ!」
「そうだな。よし・・・それじゃジェフリーの言う通り、1時間後に駅に集合する事にしよう。エリス、準備が出来たら駅で待っているんだぞ?」
何故か小さい子供に言うように頭を撫でるジェフリー。
こうして有耶無耶の内に?討伐隊のメンバーが決定した。
はあ・・・・。何だか前途多難な旅になりそうな気がする・・・。
出掛ける前から思わずため息をつく私であった―。




