第27日目 世界がひっくり返った休暇日 ④
「エリス。この場所が一番今恋人たちの間でホットになっている場所だ。」
得意げに言うジョージが連れて来てくれた場所は・・・。
「え・・?何、ここは・・・?」
そこには綺麗な湖と森の景色には不釣り合いな建物が建っていた。それは朽ち果てた教会で、壁と言う壁には一面にツタが張り巡らされ、壁には無数の日々が入っている。そして協会のまわりにある無数の墓場・・・。なんだろう?すごく嫌な予感がしてきた・・・。
「どうだ?すごいだろう?エリス。今、この『ラクス』で一番の定番デートスポットがこれだっ!ほら、ガイドブックにも一押しデートスポットと書いてあるだろう?」
ジョージはいつの間に用意していたのか、上着のポケットからガイドブックを取り出すと、ページを指し示した。
「あ、あの・・・念の為に聞きますけど・・・これは何でしょうか?」
あ、いけない。声が震えちゃってるよ。
「何だ?エリス。見ればわかるじゃないか?」
ジョージは腰に両手を当てて私を見る。
ええ、ええ。何となく・・・何となくは分かりますけどっ!一応確認しておかないと・・・。
「ま、まさか・・・じゃないですよね?」
「え?ごめん。何て言ったんだ?聞き取れなかったからもう一度言ってくれるかい
?」
「だ・・・だから、お、お化け屋敷じゃ・・ないですよ・・・ね・・?」
歯をカチカチ震わせながらジョージを見る。
「ああ、そうだ。お化け屋敷だ。さあ、入ろう。エリス。」
ジョージはグイッと私の腕を引き寄せると、自分の腕に組ませる。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!!な・・・何で中に入るのが決定しちゃっているんですか?!こんなの絶対おかしいですってばっ!」
そうだ。そもそも湖のほとりにお化け屋敷があること自体がおかしいのだ。こういう建物は普通に考えれば遊園地にあるのが普通でしょう?!はっきり言ってこのお化け屋敷が周りの美しい風景をぶち壊しにしている事に何故誰も気が付かないのだっ?!
「う~ん・・。しかしだな、エリス。ほら見てごらん。」
ジョージはお化け屋敷の入り口を指さす。
するとそこには若いカップルたちがチケットを購入し、次々と建物の中へ吸い込まれて行く姿が目に入った。
「え・・?嘘でしょう・・?」
「だから、言っただろう?このお化け屋敷はカップルに人気があるって・・・。それにさっき俺は見たぞ?『白銀のナイト』の一人が、美女とこのお化け屋敷の中へ入って行く姿を・・。」
「ええええっ?!ほ、本当ですかっ?!」
信じられないッ!
「ああ、間違いない。あれは・・・フレッド様で間違いないな。」
ジョージは顎に手をやりながら話す。
「そ、そんな・・・フレッド様が・・・。」
何て事だ。フレッドとオリビアはこのお化け屋敷の中に既に入っているなんて・・・!と言う事は・・恐らくコンピューターウィルスもこの中で発生するのは間違いない。
「そ、そんな・・・。」
思わず目に涙が浮かぶ。
前回の時計台の調査の時もそうだったが、私は怖い話やお化け屋敷といったものが大の苦手である。いや、むしろ得意な人間が不思議でたまらない。
「エ、エリス・・・。」
ジョージに名前を呼ばれてふと顔を上げると、何故か真っ赤な顔をして私を見つめている。そして好感度がまたグググッとあがってゆき・・・・。
「な・・・何故・・・?!」
今やジョージの好感度は350に上昇しているっ!ま・・・まずい・・っ!
「エリス・・・。涙ぐむお前って・・・す、すごく可憐で・・・か・可愛いな・・・?」
はああっ?!
こっちは怯えて涙ぐんでいると言うのに・・。くっ!女心が分からない奴め!
だ、だけど・・・。
「ジョ、ジョージッ!」
グイッとジョージの腕を握りしめ、彼の顔を見上げると言った。
「わ、私をは・・離さないでねっ?!」
するとジョージはますます顔を赤らめ・・コクコクと頷いた。そしてジョージの好感度は400に上昇していた-。
ジョージが2人分のチケットを買ってくれた。
売り子のお姉さんも雰囲気を醸し出す為なのか青白いメイクに、口元には血が垂れたメイクをしている。もはやこの段階で既に心が折れそうになっている。
「よし、エリス。では行くぞ。安心しろ、何があってもこの手は離さないからな?」
じっと私を見つめるジョージ。
おおっ!何て頼もしいんだ・・・。ベソとノッポにジョージの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。
そして私たちは『戦慄!恐怖の呪われた教会。あなたはこの恐怖に耐えられるか?』
のお化け屋敷に挑むために、入口のドアを開けるのだった・・・・。
「ギャアアアアッ!!」
中へ入って1分もしないうちからジョージの叫び声が呪われた教会に響き渡る。
「イヤアアアアアンッ!!そ、そんな叫び声を上げないでよぉぉぉっ!」
冗談じゃないっ!ただでさえ怖いのに、ジョージの叫び声で恐怖度が倍増だっ!
挙句に・・・あろう事かジョージは私の手を振りほどくと走って逃げてしまったのだ!
「そんなーっ!ジョージッ!私を捨てないでええっ!」
傍から見たら男に捨てられた女のような叫び声をあげる私。
そして・・・ついに暗闇に私は1人、取り残されてしまった。
ヒタヒタヒタ・・・・。その時、背後で何やら足音が聞こえてきた。
そしてペタリと冷たい何かが頬に触れる・・・。
「イヤアアアアアンッ!!こ、来ないでえええっ!」
真っ暗闇の中を滅茶苦茶に走る私。次の瞬間・・・。
ドンッ!!
思い切り誰かにぶつかってしまった。はっ!も、もしやこれも・・・お化け・・・?
「イヤアアアアンッ!!み、見逃してぇぇっ!」
滅茶苦茶に腕をぶんぶん振り回していると、突然グッと腕を掴まれた。
「アアアアンッ!は、離してェッ!」
「お、おい!落ち着けッ!ベネット!」
え・・・・?その声は・・・?
暗闇の中で少しだけ視界が慣れて現れたのは・・・・。
「フ・・・フレッド様っ?!」
「ああ・・・そうだ。た、頼むからその叫び声はやめてくれないか・・・?」
フレッドは口元を手で隠しながら言う。
「あ・・・あの、オリビアさんは・・?」
「あ、ああ・・・。途中ではぐれてしまったんだ。悪いことをしてしまったな。」
しかし・・・オリビアが今一緒ではないのなら、これはある意味チャンスである。
「あ、あの!フレッド様・・・。も、申し訳ありませんが・・・で、出口まで連れて行って下さい・・・。」
ガタガタ震えながらフレッドの腕にしがみつく。
「わ・・分かった!分かったから・・・あ、あまりくっつかないでくれ・・!お、お前の胸が・・・当たるっ!」
しかし、次の瞬間・・・。突如として暗闇の中から緑色に光り輝くゴーストの群れが現れた!
「イヤアアアアアンッ!!こ、怖いっ!怖いいいいっ!」
嫌だ怖い怖い怖い!パニックになった私はこれでもかと言うぐらいフレッドの腕にしがみつく。
「ば、ばかっ!く、くっつきすぎだっ!」
フレッドの狼狽した声が闇の中で響き渡る。
ああ、もう駄目。私の精神は限界だ・・・っ!
『害虫駆除ッ!』
咄嗟に叫ぶ私。途端に光に包まれて魔女っ子メイドに変身!
「か・・・神の裁きッ!」
途端に激しい稲妻が杖から放出され、次々とゴーストを狙い撃ちする。
もういやだ、このゴーストがウィルスだろうが、作り物だろうがそんなことはもう関係ない!私を怖がらせる存在は・・・・全部敵だっ!!
そして神の裁きに打たれたゴーストたちは・・・皆天に帰っていきました。
「本当に有難うございました。お客様からもクレームが沢山届いていたんですよ。」
お化け屋敷の支配人の男性が私とフレッドにペコペコ頭を下げている。
「まさか、本物のゴーストが紛れ込んでいたとはな。」
フレッドが腕組みしながら頷く。
結局・・・・お化け屋敷にいたゴーストの正体はコンピューターウィルスで、私は無意識のうちにウィルス駆除まで行っていたのだ。
「エリス・・・。よくやったな?それに・・その衣装・・・すごくか、可愛い・・。」
フレッドが声を掛けてきた。おや・・・?名前の呼び方が変化した。
みると、フレッドは顔を赤らめ、潤んだ瞳で私を見つめている。そして・・・彼の好感度は300になっていた。
・・そしてこの日、ジョージとオリビアの姿を見た者は誰もいなかったのである-。
『第27日目、無事終了致しました。ミッションクリアお疲れさまでした。残り時間は10日減らされ、45日となります-』




