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第36日目 メイドハンター?!

ピチョーン・・

冷たい雫が突然顔の上に落ちてきた。


「つ、冷たいっ!」


そこで目を開け、私は初めて巨大な洞窟の中で倒れていた事が分かった。冷たいと感じたのは岩から伝って来た水が顔の上に落ちて来たからだ。

ゆっくりと身体を起こし、辺りをキョロキョロと見渡してみるが・・・・。


「え・・・?い、一体此処は・・何処なのよ・・・?」


それに良く見れば洞窟の内部のあちこちには松明がおいてあり、内部を明るく照らしている。ん・・・?松明?


「こ、これはありがたいわ!」


急いで一番手近にあった松明の元へ駆け寄り、手に取った。


「あ〜あ・・温かい・・。」


私は思わず松明に身体を摺り寄せ・・・危うく髪を焦がしそうになってしまった。それでも火があったのは本当にラッキーだった。

なにせ半強制的にトビーに着るように命じられた?ウェディングワンピース・・・素材が薄地なのか寒くて堪らないのだ。しかもここは鍾乳洞で、ひんやり感が半端ではない。


「と、取り合えず・・・一刻も早くここを抜け出さなければ・・・まるでゲームに出て来るダンジョンみたいなんだもの・・。今にもモンスターが現れそうで怖いわ・・。」


言いかけて私は思いついた。


「そうだっ!元はと言えば『MJ』に乗ってここまで私は飛んできちゃったんじゃないのっ!ならもう一度『MJ』に乗って学園へ戻ればいいだけの話だわっ!」


1人で洞窟の中にいると怖いので、さっきからわざと声に出して出口を目指そうとしていたのだが、足を止めて液晶画面をタップした。よし、アイテムボックスには『MJ』はきちんと格納されている。ならば・・・。


「えい!いでよ!『MJ』!」


しかし、画面をタップしてもうんともすんとも言わない。


「え・・・?う、嘘でしょう?!何故?何故『MJ』が現れないのよっ!」


慌てて再度「魔法の絨毯」のアイテムボックス欄を確認してみると・・・。


「魔法の絨毯」 <現在メンテナンス中で使用不可>


「はあああああああっ?!」


何それ何それっ!


「い、一体何なのよっ!この・・メンテナンス中で使用不可って言うのは!そんなものは真夜中にやって頂戴よっ!どうして人がプレイ中に勝手にメンテナンス中にしてしまうわけっ!信じられないっ!そ、それに・・メンテナンスをする事が決まっていたなら・・・事前に告知してよね〜っ!」


告知してよね〜告知してよね〜・・・・という言葉が洞窟内に2度響き渡った所で、荒いため息を吐いて、その場に座り込んでしまった。


「はあ・・・どうしよう・・。よくよく考えてみれば私が「魔法の絨毯」に行き先も告げずに、何処でも構わないから何処かへ飛んでっ!なんて言い方しちゃったから、混乱してこんな事になって・・緊急メンテナンスに入ったのかな・・・?」


どうしよう・・・進むべきか、それとも「魔法の絨毯」のメンテナンスが終わるまではここでじっとしているべきか・・・。迷いに迷って私が出した結論は・・。


「寒い。ここを出ようっ!」



そして立ち上がると辺りをグルリと見渡した。生憎運が悪い事に私は4方向に道が続いている洞窟の中央付近で倒れていたらしい。これではどちらの方向へ進めば出口へ辿り着けるのか分かるはずも無い。

そこで取りあえず、オーソドックスではあるが、持っている松明を上に掲げて炎の流れる方向を確認する。きっと炎が流される方向に出口があるに違いないっ!

すると炎が右に向って流されている事に気が付いた。


「よ、よし・・・。自分を信じてこの道を歩いて行こう・・・。」


そして私は恐怖と寒さで震えながら、出口目指して歩き始めた―。




「え・・?そ、そんな・・・!また分かれ道なのっ?!」


歩き始めて10分ぐらい経過しただろうか・・・。またまた私は行き詰ってしまった。


「もう〜まだメンテナンスは終わらないの・・?」


再び液晶画面をタップしても無情に表示され文字は『メンテナンス中』。


「うう〜っ!こうなったのも・・・全部トビーのせいだからね・・・!ここから出られたら・・出られたら・・・。」


だ、駄目だっ!もうトビーの事を考えるだけで胸が苦しくなってくる。しかし、この胸の苦しみは断じて恋等で苦しくなっている訳ではないっ!トビーが気色悪くて考えるだけで具合が悪くなってきそうだから胸苦しさを感じているのだ。


「と、とにかく、もう一度松明を掲げて・・・。」



ふとその時、洞窟の奥でまるで昔映画館で恐竜パニック映画を観た時に聞いた恐竜の雄叫び?らしきもの声が響き渡った。


ゾワゾワゾワッ!!


全身に一気に鳥肌が立つ。ま・・・まさか・・・ここは得体の知れないモンスターの棲みか・・・?だったりして・・・。


するとさらに何者かが戦っているのか激しい音が聞こえて来る。時には爆発音迄響き渡り、金属音のような高い音も聞こえて来る。


「ま・・・まさか・・・っ!『白銀のナイト』達がこの奥で何かと戦っているのっ?!」


慌て激しい音の方向へ急ぐと、岩の影から巨大なドラゴンの頭を見つけてしまった。


ヒエエエエエッ!!


そう、そのドラゴンはよくゲームの世界で登場する、あのドラゴンだった。爛々と光り輝く目。牙の覗く大きな口からは黒い煙のようなものを吐き出している。頭からは2本の大きな角が生え、青いうろこに覆われた身体は背中から巨大な翼が生えている。

その姿を一目見た瞬間、あまりの恐怖で一瞬気絶しそうになった瞬間、遠くで倒れ込んでいる『白銀のナイト』達を発見して、私の頭が一気に覚醒した。


あのドラゴンを倒さなければ。そして『白銀のナイト』達を助けなくちゃ・・・!

私は震えながら右手を高く掲げると叫んだ。


「メイドハンターッ!!」


今迄叫んだことも無い?変身魔法を唱えると、突如として身体が光り輝き、戦闘メイド服・・・がバージョンアップ?して戦闘メイドドレスに変身していた。真っ黒の長いドレスに純白に輝く?フリルたっぷりのエプロンドレス。そして右手には何故か長い杖を持っている。極めつけはその杖の飾りだ。杖には五芒星の飾りが埋め込まれているのだ。


そしてドラゴンは地面に倒れた白銀のナイト達には目もくれず、私をジロリと一瞥すると大きな咆哮を上げたが・・・何故か今の私はちっともドラゴンが怖くない。と言うか、まるで他人事の様にすら感じている。さながらテレビ画面越しにゲームをするプレイヤーのような感覚だ。

そう、所詮ここはバーチャルゲームの世界なのだ。そして私は、『白銀のナイト』達のようなバーチャルな存在では無い。だから・・・決して負けるはずは無いのだっ!


私のそんな意気込み?を感じ取ったのか・・・ドラゴンは私の方へ向かって飛びながら何やら炎を吐き出してきたが・・・フッ!そんなものはこの私には通用しないのだよっ?!

軽々と炎を避けると、私は杖をドラゴンに向けて振りかざし・・。


「ドラゴンバスターッ!!」


勝手に口から妙な言葉が飛び出すと同時に、杖から眩しいほどの光の洪水がドラゴン目掛けて降りそそぐ。


「グワワアアアアアアッ!!」


ドラゴンの激しい雄叫びが洞窟内に響き渡り・・・そして辺りは静かになった。


「ハアハアハア・・・・・。」


足を震わせながら、地面に座り込み、今頃になって怖くなってきた。しかし、ドラゴンの様子を確認しに行かなければ・・・・。

よろよろと立ち上がり・・・ドラゴンが飛んできた方向に歩いて行き、私は息を飲んだ。


そこには、意識を失っているのか、青く長い髪のイケメン男性が倒れていたのだった。


「え・・?誰?」


私は間の抜けた声でそのイケメン男性を見下ろした。


「あの〜・・・大丈夫ですか・・・?」


私はしゃがみ込み、その倒れている男性をツンツン突いてみた。


「う・・・。」


するとそのイケメン男性はゆっくりと目を開けた。うわっ!この人・・目が金色に光っているよ。ん・・?でも何処かで見た事があるような・・・?


等と考えていると、気付けばイケメン男性は至近距離で私の事を見つめているでは無いか。


「あ、あの〜・・・な、何か・・?」


思わず引きつった笑みを浮かべながら後ずさると・・。


「見つけた・・・。」


突然イケメンさんが口を開いた。


「へ?」


見つけたって何を・・・?


「ついに・・・ついに俺の花嫁を見つけたっ!!」


そして気付けば私は青い髪のイケメンさんに抱きしめられていた—。





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