第36日目 大喧嘩?
私からの魂を込めた?「魔鉱石」のプレゼントに、迫真の演技の贈る言葉で『白銀のナイト』全員の好感度を400に戻す事が出来た。
本来であれば全員今この場で好感度が500に達してくれれば、私は恐らく元の世界に帰れたはずなのに・・敢えてこの数値で止めたのは恐らく上層部の連中の仕業に違いない・・・・。
等と考え込んでいると、突然背後からガバッと誰かが抱き付いて来た。
「エリスッ!!」
げ・・そ、その声は・・・振り向くとその人物はアベルだった。
「おい!何勝手にエリスに抱き付いてるんだっ!」
ジェフリーが割り込んでくる。
「煩いっ!俺はエリスに話があるんだっ!」
アベルが喚く。
「そうだっ!俺だって話ならあるっ!1人で勝手な真似をするなっ!」
次に出てきたのはエリオット。
「抜け駆けするのはいけなよ?」
不敵な笑みを浮かべて現れたのはアドニス。
「ああ、エリスは『皆のエリス』なんだから。」
アンディの言わんとしている意味が良く分からん。
「貴様・・・早くエリスから離れないと・・切るっ!」
今にも抜刀しそうな・・・あ、いやあああっ!つ、ついにフレッドが剣をぬいちゃたよおっ!
「おい!その物騒な物を早くしまえっ!」
止めに入るはエディ。
「お前ら・・・全員魔法でぶっ飛ばすぞ?」
エリオットは何故か私に迄魔法を放つ気でいるっ!
「い、いい加減にして下さいっ!全員集まるから揉め事になるんじゃないのですか?!」
私がきっぱり言うと、突然シンと静まりかえる。
「そうか・・・なら1人1人ならいいんだな?」
アンディが言う。
「え?」
い、いえ・・今のは言葉のあやで・・・。
「よし、なら順番を決めよう・・・じゃんけんでなっ!」
おおっ!あの生真面目なエディから、まさかのじゃんけんっ!
「よ~し、いいだろう・・・。俺は強いからな?」
何故か鼻高々?にジェフリーが言う。・・・本当だろうか・・?あんなにカードゲームが弱いのに・・実生活に置いてもクジ運なさそうだしな・・・。
「よし、それでは行くぞっ!」
何故か危機迫る?勢いで言うのはエリオット。
「それじゃ〜行くよ~・・・。」
何とも間の抜けた声で指揮を執るのはアドニス。
「「「「「「「じゃ〜んけ〜ん・・・っ!」」」」」」」
ふわあああ・・それにしても眠い・・。背後ではかれこれ30分は『白銀のナイト』達が真剣な顔でじゃんけんをしているが。未だに決着がつかない。
まあ、それはそうだろう。7人で集まって一斉じゃんけんなんて、なかなか決着がつくはずが無い。
「何で3体4に別れてじゃんけんするとか、考えつかないんだろう・・・。」
眠い頭でぼんやり考え、ウトウトしていると誰かがバタバタと走って来た。
「エリスッ!俺が一番になったっ!」
鼻息荒くして隣にやって来たのはジェフリーだった。
「ああ、結局ジェフリー様が一番だったんですね。何だか意外でした。」
「何だ?その意外って言うのは?」
「ジェフリー様は・・・カードゲームはわりと苦手な方でしたから・・・勝負事も苦手なのかな〜と・・・ハッ!!」
「お、お前・・・言うに事かいて・・よくも俺が勝負事が苦手だと行ったな・・?!
ジェフリーが怒りの眼差しで私を見ている。
し、しまった・・・眠気が強くてつい本音を口走ってしまったっ!
恐る恐るジェフリーの顔色を伺うと、彼は明らかにムッとした顔をして・・・好感度が少し・・どころか何と100も減ってしまったっ!
ああああ!ど・ど・どうしよう・・・っ!!思わず涙目になり、必死で謝る。
「すみません!すみません!すみません!」
必死になって平謝りする。
「ほ、本当はそんな事微塵も思っていないんですっ!た、ただ・・・どうしても危険な場所に行って欲しく無くて、つ、つい憎まれ口を・・。」
うわ〜ん!だから、お願いです!好感度を下げないで下さい!気付けば私は涙目になってジェフリーの胸に縋りついていた。もう必死だ。死ぬ思いで魔鉱石を取って来たのだから、ここでこんなくだらない事で好感度を下げたくないっ!
すると・・・。
「そ、そうか・・・わざと憎まれ口を叩いたのか・・。分かったよ、エリス。だから・・・顔あげろよ。もう何とも思ってないからさ。」
突然ジェフリーの物腰が柔らかくなった気がした。
「ほ、ほんとですか・・・?」
顔を上げて、ジェフリーの顔を見て、さらにもう一段顔を上に上げて好感度を確認しようとした時・・・。
何故か突然ジェフリーの顔が真っ赤になり・・・・。
「エリス・・・。」
潤んだ瞳で私の名を呼び、頬に手を触れて来た。はて・・・・?すると何故か徐々に迫って来るジェフリーの顔・・・・ま、まさか・・・っ?!
その時・・・。
「貴様っ!何をしているっ!エリスから離れろっ!」
突如、ヒュンッ!と風を切るような音が聞こえ、私の髪の毛が数本パラパラと飛散った。ま・まさか・・・?
「フレッドッ!危ないだろう?!刀を振り回すのはやめろっ!!」
ジェフリーが後ろを振りきながら喚いた。
「黙れっ!!お前がエリスに不埒な真似を働きそうになったからそれを止めたのだろうっ?!」
見ると私の眼前で剣を構えてこちらを睨み付けるフレッドの姿がっ!!
いやはや、その恐ろしい姿に私は危うく気絶しそうになった。
「何の騒ぎだっ!」
そこへ駆けつけてきたのはアンディだった。
「何故来たっ!アンディッ!お前の順番はまだのはずだろうっ?!」
フレッドは今度はアンディに剣を向ける。ヒエエエエッ!こ・怖すぎる・・・っ!!
「こんな騒ぎになれば誰だって何事かと思って駆けつけて当然だろう?その証拠に見ろっ!」
するとアンディの指した方角から残りの『白銀のナイト』全員が駆けつけて来て一斉にフレッドに文句を言い始めた。
「フレッドッ!貴様・・いい加減にしろっ!何処でもかしこでも平気で剣を振り回すなっ!」
エリオットが言う。
「ほんッと!君って血の気が多すぎるよね!」
アドニスが軽蔑した目でフレッドを見る。
「この狂犬めっ!お前のせいで品位が下がるんだよっ!」
アベルが喚く。
「全くその通りだ。お前から剣を取り上げるべきだな。」
エディが眼鏡をクイッとあげる。
あ〜っ!!もう、何て煩い連中なのだろう!ただ、揉めている今がチャンスかもしれない。幸い皆私の存在を忘れているし、彼等の好感度は全員400に戻っている。
よし、どさくさに紛れてこのまま部屋に戻って寝なおそう。
そして私はソロリソロリと彼等に気付かれないようにその場を離れ・・・・後は魔法の絨毯のアイテムを取り出して、それに乗って部屋へと戻ったのである。
「ふわああ〜・・・全く人騒がせな・・・。でも好感度も全員上げる事が出来たし・・・これで目標はクリア出来たんだものね。」
メイド服から再び私はパジャマに着替え、ベッドに潜り込むと目を閉じて、再び眠る事にしたのである。
そして眠りに落ちる瞬間に思った。
あれ・・・そう言えば・・・『白銀のナイト』達は一体何処へ行く事になっていたんだろう・・・?まあ、私には関係ないから気にする事はないよね・・・。
グウ・・・・。
そして私は眠りについた―。