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第35日目 奪われた魔鉱石 ①

 モンスター退治の翌日―


『おはようございます。35日目の朝がやってまいりました。今の状況をご確認下さい。』



「ふわああ~・・・良く寝たあ・・・。」


状況を確認?一体どういう意味だろう?う~ん・・今の自分の置かれている状況は・・・。とりあえず絶好調!

何せ今朝の私はフカフカの高級ベッドで目覚めているのだ。したがって非常に気分は良い。おまけにベッドの床上に置かれたリュックサックの中には魔鉱石がたっぷり入っている。魔鉱石と言えば高値で取引されているので、今の私たちは超リッチなのだ。そして私たちの取り分だが・・私は『白銀のナイト』達にプレゼントしなければならないので分け前の比率は私が6、ベソとノッポが2の取り分と決めた。

タリク王子の取り分は?と昨日ベソとノッポに尋ねられたが、勿論彼は王子で元々が超リッチなのだから取り分は当然ナシだ。そしてオリバーの方は自分は何もしていないからいらないと遠慮してきたので、私たちは喜んでその提案を受け入れたのだ。

第一タリク王子は食料の買出しを頼んでもサボテンしか買ってこないし、洞窟の中でリヤカーを引っ張っては疲れて伸びてしまうような男なのだ。タリク王子は全く活躍していないのだから当然取り分は無しだろう。頭の中はどうせスライムの養殖しか考えていないのだから、魔鉱石の分け前が無くても文句は言わせない・・と言うか、本日私たちはエタニティス学園に帰るのだから、タリク王子が私たちを探し出して文句を言うのは不可能だろう。


 ベッドから飛び降りると、恒例のお着換えタイムだ。

さて、今日の私の衣装のコンセプトは、ずばりアラビアン・ナイト風。

しかし一口にアラビアン・ナイトと言えば、上半身と下半身が分かれたセパレートタイプでへそ出しのセクシー衣装が思い浮かぶかも知れないが、いくらエリスのスタイルが抜群でも所詮中身は27歳の日本人女性。恥も外聞も知っている。

なので私が着用するアラビアン・ナイト風の衣装は・・・。

ツルツルのサテン生地素材のアクアブルーのパフスリーブワンピース。

ウエスト部分はハイウェストで、エリスのスタイルの良さがはっきり分かるデザインで金糸の見事な刺繍が施されている。ワンピースのスカート部分は丈の長いサーキュラースカートで、くるりと回転したときのデザインがこれまた美しい。

鏡の前でこの衣装を着て、じっくり見つめるとパチリとウィンクをする。


「うん、今日のエリスもばっちり決まって可愛いね?」


何せ今日はいつも以上に気合を入れておめかししたのには訳がある。エタニティス学園に戻ったら好感度が下がってしまった『白銀のナイト』達に魔鉱石をプレゼントしてオリビアから好感度を奪い返さなくてはならないのだから。


 私の準備はバッチリ出来たので、荷造りをして階下のロビーへ降りてみたものの、ベソ達の姿が見当たらない。


「おかしいな・・・?昨夜部屋の前で別れるとき、朝の8時にホテルのロビーで待ち合わせって決めたのに・・・。ハッ!ま、まさか・・・またしても彼等だけで勝手に食事に行ったのでは?!」


慌てて荷物を持ってレストランを覗いてみるも、やはりベソ達の姿は見当たらない。


「まさか・・・まだ眠っているのかなあ・・・?よし!部屋を尋ねてみようっ!」


意気込んでベソ達の部屋の前へ着くと、ドアをドンドン叩いた。


「ベソ~ッ、ノッポ~(ついでに)オリバー様~っ。」


シーン・・・・。


「おかしいな・・・無反応だ・・・。よし、もう一度ノックしてみようっ!」


ドンドンドンッ!!


先程よりも強くノックをしてみてもやはり反応が無い。


「まさか・・・まだ眠って眠っているんじゃないでしょうね・・・?」


試しにドアノブに手を掛けると、カチャリと回る。


「全く不用心ね・・・。鍵を掛けていないなん・・・て・・・?」


その瞬間、目に飛び込んでしまった光景を目にした私は・・・。


「キャアアアアアアアッ!!」


激しく絶叫してしまった―。




「全く・・・朝っぱらからなんて声を出してくれるんですか・・・。」


ベソが頭からかぶった赤ワインをタオルでぬぐいながら言った。


「本当ですよ・・・心臓が止まるかと思いましたよ・・・。」


ノッポもワインまみれの頭をゴシゴシとタオルで拭く。



そんな2人を見ながら私は尋ねた。


「ねえねえ、そんな事よりも一体昨夜何があったのよ?!どうして貴方達はワインまみれになってるの?それにオリバーはどこ?」


「オリバー・・・・?ああっ!そうだっ!」


ノッポが大声を上げた。


「ちょ、ちょっとどうしたのよっ!」


余りのノッポの大声で耳を塞ぎながら抗議した。


「た・た・た・た・・・・・。」


ベソがあまりのショックの為なのか、ろれつが回らなくなり、手をばたばた上下に振っている。・・・ひょっとして連想ゲームのつもりなのだろうか?


「う~ん・・・太鼓?」


首を傾げながら言うと、ベソが半べそをかきながら喚いた。


「ち、違いますよっ!大変なんですっ!オ、オ、オリバーの奴が俺達を裏切ったんですよっ!」


「え?一体どういう事なの?」


訳が分からず首を傾げるとノッポが言った。


「だから、何度も言わせないで下さいっ!オリバーの奴が我々を裏切ったんですよっ!」


「ええっ?!う、裏切ったっ?!ちょ、ちょっとどういう事よっ!」


気付けば私は背の高いノッポの首をギュウギュウに締め上げ、強くゆすぶっていた。


「グ・グエッ!く・苦しい・・・お、落ち着いてくだ・・・さ・・。」


ア・・気付けばノッポが白目をむいて、口から泡を吐いていた―。




「はあ~・・・苦しかった・・・もう少しで死ぬかと思いましたよ。何せ夢の中で大きな川を見たんですから。あれはきっと三途の川に違いない・・・。」


「ま、まあまあ・・・命は助かったんだから・・・。」


ジロリと睨み付けるノッポを宥めながら、私たちはベソ達が宿泊した客室のソファに座って話をしていた。


「それで?裏切ったってどういう意味なの?」


ベソノッポを交互に見渡しながら、2人に尋ねた。


「ええ、それは昨夜の事なのですが・・・。」


ベソが昨夜の経緯を説明し始めた。



 昨夜、私と部屋の前で別れたベソ達は部屋に入るとモンスター討伐の祝賀会を始める事にした。

するとオリバーがどこからか2本のワインを持ってきて、2人にワインを進めてきた。お酒に目が無い2人は(そんな事は初耳だけど)、喜んでワインを飲んでいると、オリバーが魔鉱石を見せて欲しいと言って来た。

そこでアルコールも入って酔いが回って気分が良くなってきた2人は、リュックサックに詰め込んだ魔鉱石を見せたところ・・・。


「これをオリビアにプレゼントとしたら、きっと喜んでもらえるに違いないっ!」


そう叫び・・・。



「突然、オリバーの態度が豹変して、ワインの瓶で頭を殴って来たんですよっ!」


ベソがテーブルをダンッと叩いた。


「全く・・・!本当に死ぬかと思いましたよっ!くそ~!あいつめ・・・!」


ノッポが悔しそうに地団太を踏む。


「ま・・まさか・・・あのオリバーが・・・・オリビアの手下?だったなんて・・!だけど・・・妙だわ。だって昨日までは好感度が400あったのに・・・。」


その時、突然私たちの目の前に液晶パネルが表示された。


『アルハールでコンピューターウィルスが発生しました。すぐに駆除に向かって下さい』


そして今回はご丁寧に地図が表示された。


私達は顔を見合わせた。


「ま、まさか・・。」


ベソが言う。


「コンピューターウィルスって・・・。」


ノッポが続く。


「オリバーに違いないわ・・・。」


最後に私が言う。


ううう~・・・っ!次から次へと問題ばかり・・・。


「いつになったら帰れるのよ~っ!」


思わず私は絶叫していた―。

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