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強制送還の方法

セレンとばったり出くわしたカノン達は、せっかくなので少し遅めの昼食をとりながら話をすることになった。


ギルドに併設されている酒場で料理を注文したカノンは口を開いた。


「えっと、まず紹介させてね?こっちがセレン、私の幼馴染です。で、こっちがリーゼさん、パーティを組んでるの」


カノンがセレンとリーゼにお互いを紹介するとセレンとリーゼは軽く頭を下げあう。


「セレンちゃんね、私はリーゼ、よろしくね」


「…………はい」


相変わらずの無口である。


しかしカノンにはセレンの言いたいことが分かるのだから不思議である。


「で、ロイドさんから聞いたんだけど……」


「…………返す」


「そっちじゃないよ!いや、そっちも大事だけど……」


何を返すというのだろう?


そしてカノンよ……。


何故分かる?


『カノン、頼むから俺とリーゼにも分かるように話してくれ……』


リーゼなんて頭の上に大量の?マークを浮かべているぞ……。


「あ、うん。アインをアレーナ村に送り返すって事」


あぁ、そういうことか……。


「私が言いたいのは、セレンがFランクに成ったってことだよ」


「……頑張った」


カノンが言うとセレンがまんざらでもない様子を見せる。


「うん、おめでとう。……で、アインの方は?ランクはともかく仕事はしてるの?」


「……全く」


今回は何となく分かった。


つまりGランクの依頼を全くこなしていなかったというわけだ。


ん?


『この二人の生活費ってどうなってんだ?』


いくら子供二人でも半月近くも収入なしでは生活できないだろう。


「……セレン、生活費は?」


「……頑張った」


「あ~、そういうことか……。えっと、セレンが二人分稼いでたみたい……」


『二人分!?Gランクの依頼でか!?』


Gランクの依頼は、言ってしまえばただの雑用だ。


仕事内容にもよるだろうが、丸一日働いても一人分の最低限の生活費を稼げるかどうかの仕事も多い。


たまに条件のいい依頼もあるが、それらは競争率が高いので滅多に受けられるものではない。


もし二人分の生活費を稼いでいたとなればそういった依頼を相当数受けてたということになる。


「セレンちゃんって……意外と凄い?」


リーゼも驚いたように呟いた。


「……声?」


「あぁ、この声?私の中にいる竜でハクって言うの」


どうやらさっきの念話がセレンまで漏れていたらしい。


驚いたりしたときは周囲に関係なく念話をばら撒いてしまうな……。


まぁ範囲は狭いから三人以外には聞こえていないのだろうが……。


『ハクだ。よろしくな』


「……はい」


何というか……カノンはよく会話が成り立つな……。


俺にはセレンと会話を続けられる自信がないぞ?


「で、セレン?ハクも言ってたけど、Gランクの依頼だけで二人分の生活費を稼いでたの?」


「……うん」


なんだろう?


普通の人と会話するより二倍くらいの時間がかかるのではないのだろうか?


いや、カノンは言いたいことが分かるみたいだしそうでもないのか?






















その後何とかカノンが聞き出した内容によれば、カノンとFランク依頼を受けた翌日には二人してGランクの依頼を受けに行ったようだ。


しかし、初めてで依頼の争奪戦に勝てるわけもなくその日は全く仕事を取れなかったらしい。


セレンはそれでもあきらめずに、あまり条件が良くない依頼を狙うことで翌日から依頼を受けることが出来たらしい。


そして、そのまま依頼争奪戦のコツをつかんだセレンは最近では割と条件のいい依頼を受けることが出来るようになったらしい。


一方、アインはと言えば、初日に争奪戦で依頼を取れなかった事、また、その後残っていた条件の悪い依頼を一回受けたものの、それ以降依頼を受けようともしなくなったらしい。


一応村から数日分の生活費は貰っていたようだが、それがなくなるころにはセレンが二人分の生活費を稼げるようになったので全く働かなくなったらしい。


一応魔法の練習などはしているようだったが、それでも一日の大半を宿で過ごしていたようだ。


その話を聞いていたカノンの表情が段々と怖くなっていく。


しかし、どうしてそんなに働かなかったんだ?


『最初の仕事で嫌なことでもあったのか?』


それならまぁ……納得できるかどうかは置いておくにしても分からないではない。


「……きついって…」


セレンがそういったとき、カノンの顔から表情が消えた。


カノンの横で話を聞いていたリーゼが思わず縮こまる。


『あぁ、今回は何となく俺にも分かった』


「思った以上の馬鹿だった……このままだとセレンが大変……」


確かにそうだ。


しかし……。


「話を聞いた限り、連れ帰るのは難しいんじゃ?」


リーゼがそういうとカノンとセレンは同時に頷いた。


「自分に都合のいい風にしか考えないですから説得して穏便に…とはいかないですね」


「……力ずく」


なんとも強硬な手段だが仕方ないか……。


となると問題となるのは……。


『アレーナ村まで冒険者の足で1日半、子供の足なら約二日だ。どうやって引っ張っていくかだが……』


「いつもみたいに引っ張ってけばいいんじゃないの?」


さらっとカノンが恐ろしいことを口走る。


『そんなことしたら村に着く前に死ぬわ!!』


犯罪者とは言え、戦えるように体を鍛えている大人とまともに鍛えてもいない子供を一緒にするな。


見ろ!横でリーゼも頷いてるぞ!


『とにかく、いつもみたいな強硬手段はなしだ。他の方法を考えないと……』


俺がそういうと三人が思案顔になる。


そんな時、いい匂いと共に料理が運ばれてきた。


「失礼します。ご注文の品をお持ちしました」


そう言って店員がテーブルに料理を並べていく。


それを見てセレンが一瞬固まった。


店員が去った後、セレンが言いにくそうに口を開く。


「……あの…お金…」


「あぁ、私が払うから大丈夫だよ」


ずらっと並んだのは肉をメインにした品々だ。


流石ギルドに併設されているだけあって料理も重たい物が多い。


そして量も多いので確かにその日の暮らしで精いっぱいのセレンには手の届かない値段ではあるだろう。


カノンが食べるように促すと、申し訳なさそうにしながらもゆっくりと料理を口に運び始めた。


そして一口食べると、よほどおいしかったのかペースアップして食べ始めた。


『話はいったん中断だな。腹が膨れてた方がいいアイディアも出るだろ』


「そうだね」


そんなセレンの様子を微笑ましそうに見ていたカノンだが、俺がそういうと料理に手を伸ばした。


リーゼ?


最初から食べてた。


因みにリーゼが食べる量はカノンの倍以上だ。


カノンも中にいる俺のせいか前よりも食べる量は増えたらしいが、それよりも多いのは竜人だからだろうか?


なにはともあれ、関係ない俺は今のうちに何かいい方法でも考えておくとするか。




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