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まさかの二つ名

その後無事にドム達と合流できたカノンたちは何事もなくレセアールまでたどり着いた。


最後の野営の際、俺とカノンは亜竜戦で魔力の大半を消費していたこともあり見張りは他の冒険者が分担してくれた。


そのおかげで俺の魔力も朝には完全に回復していたし、カノンも疲れなどは殆ど残っていないようだった。


しかし、驚異的なのはアイリスだよな……。


直接戦ってこそいなかったとはいえ、戦闘でのサポートはしてもらっていたのだからもっと疲れを見えてもよさそうなものなのだが


野営の時も全く疲れた様子を見せず、率先して準備をしていたのだから……。


そして昼頃になって、ようやくレセアールに到着した。



















依頼人であるゴードンとは町の入り口で別れた。


それぞれのパーティリーダーであるカノンとドムが依頼の達成証明の書類を受け取り、それをギルドに提出すれば依頼完了となるらしい。


そして、その書類にはそれぞれのパーティ別に評価をA~Eの5段階で着けられており、これがギルドでの評価の参考になるらしい。


そして、この評価段階がEの場合はその理由によっては依頼報酬の減額などにもなるようだ。


とは言っても、基本的にE評価などは依頼を放棄したり、意図的に護衛対象を傷つけた場合など、悪質な場合にしか適用されず、Bを基準にA~C評価の間になるらしい。


この評価システムは護衛依頼のみが対象となっており、それ以外の依頼には存在しないのでカノンは初めて評価をもらう事になるのだが、今回カノン達に対する評価はAとなった。


これは、盗賊を早めに発見したこと、盗賊のせん滅に貢献したことが評価されたらしい。


確かに気配察知に加え、竜装で空を飛べるカノンは偵察や索敵には向いている。


そのおかげのようだ。


今回数回あった魔物の襲撃に対しても、アイリスには負けるだろうがドム達より早く感知していたこともその要因だろう。


その感知結果をもとに一人、もしくは二人で先行して魔物を叩くことで馬車は殆ど停車することなく進めたので、その分だけ余裕をもってレセアールにたどり着けたわけなのだが、普通の冒険者は馬車を止める必要のない段階で魔物に気が付くことはできないし、仮に出来たとしても一人で先行して魔物を倒すことなどしないらしい。


万が一予想よりも強い魔物が現れた場合に対処できないし、かといって逃げることも出来ないからだ。


しかしカノンの場合は、自分ともう一人くらいなら空を飛んで逃げることが出来るし、魔物によっては俺の能力で簡単に殲滅できる。


俺としても、俺がスキルとステータスを奪うには俺かカノンが止めを刺す必要があるので先行して魔物を倒すことはメリットになるのだ。


そんなわけでギルドにこの書類を提出したら依頼完了なのだが、ドム達三人は先に昼食を摂ってから完了報告をするらしく、そのまま町の入り口で別れることになった。


カノン達も誘われたのだが、亜竜の事もあるので早めに報告をした方が良いとソルに言われたので誘いを断ってギルドに向かった。










ギルドの入り口の扉を開けてカノンが中に入ると、一瞬遅れてホールにいた冒険者の視線が突き刺さる。


普通なら誰が入ってきたのか確認してそのまま視線は離れていくはずなのだが、なぜかここのギルドではほとんどの冒険者がカノンから視線を逸らさない。


前からそうだったが、今日は一段と視線が多い気がする。


……あ、半月ぶりに帰ってきたからか……。


なんかここではカノンは人気だからな……。


他にも女性冒険者が居るのに、なぜかみんなカノンに群がってくるんだよな……。


カノンも嫌がってはいないから誰も止めようとはしないし……。


しかし今回は何か違った。


視線は確かにカノンの方を向いているのだが、近くにいる冒険者同士でひそひそと何か話している。


「…えっと…?」


カノンも違和感を覚えたのか首を傾げる。


「…………スライム聖女……」


ふと、近くで内緒話をしていた冒険者から不穏な単語が漏れてきた。


いや、なんで聖女が広まってんだよ!?


しかも何で前になんかついてんだよ!?


「…………」


その単語はカノンの耳にも入ったようで、カノンはゆっくりとギルドの扉を閉めた。


そして後ろにいたアイリスとリーゼに向き直る。


……とても怖い笑顔で…………。


「リーゼさん、宿に行きましょう」


「は、はい!!」


ビシッと背筋を伸ばして返事をするリーゼ。


カノンの迫力に負けたらしい。


ふとアイリスの方を見ると、気のせいか先ほどより離れて行っている気が……。


『カノン?諦めろ……』


「聖女は仕方ないとしてスライムはハクのせいだよね?」


冷たい声で呟くカノン。


うん、俺もそう思う。


よくよく考えてみると確かにスライムばかり使ってたからな……。


カノン=スライムって認識でも広まってたのかも知れない。


最初こそ俺みたいな存在が異端だと思っていたから極力隠してはいたが、封印者(シーラー)の事を知ってからはむしろ積極的に使ってたしな……。


確かこのギルドの訓練所でも使ったことがあった気がする。


確かにあんな能力そうそういるわけもないし目立つしな……。


それが小さな女の子だとすれば余計に注目を浴びるだろう。


そこにムードラで広まりかけていた聖女って呼び方が冒険者の耳に入って合体したのが【スライム聖女】というわけか……。



ガチャ



何とかカノンを引き留めていると、ギルドの扉が開いて中からイリスが出てきた。


「カノンちゃん、久しぶり!」


「イリスさん、お久しぶりです」


カノンも出てきたのがイリスだったことに安堵したのか普通の声であいさつをする。


「中はもう大丈夫だから入って入って」


そう言ってカノンを促すイリスに、カノンは恐る恐ると言った感じで中に入った。


中に入ると何人かの冒険者は頭にこぶを作っていた。


その近くには数人の女性冒険者の姿が……。


なるほど、鉄拳制裁されたらしい。


いや、一人腰の剣に手を伸ばしているからもしかすると鉄剣制裁?


……そんなくだらない話は置いておくとして、いつも通りの静かさに戻ったギルドにカノンも安心したような顔をした。


それを見たリーゼとアイリスも安堵の表情を見せている。


うん。確かに怖かったもんな……さっきのカノン……。


その原因の半分が俺の気がするが、これ以上あの話を蒸し返してもいいことはないはずなので一旦置いておこう。


しかし、改めて中に入って気が付いたのだが、いつもよりも冒険者の数が多い気がする。


朝などでは普通なのだが、今は昼過ぎだ。


この時間は殆どの冒険者が依頼に出ていてここにはそんなに人はいないはずである。


「イリスさん、人多くないですか?」


カノンも同じことを思ったようでイリスに聞いている。


「あぁ、それはね……」


カノンの問いにイリスは困ったような顔になった。


「南の森の奥の方で亜竜の目撃情報が出てきたのよ。だから何人かの冒険者は依頼を受けるのを見合わせてるし、腕の立つ冒険者はギルドで待機になってるわね」


そういう事か……。


もし亜竜が町まで来た場合、ある程度戦える冒険者がいないと大変なことになってしまうしな。


というか、もしかしてこの亜竜って……。


「……アイリスさん…もしかして……」


カノンがアイリスの方を見ると、アイリスは何となく察した表情で頷いた。


うん、多分そうだよな。


俺たちが倒した土竜が目撃された亜竜だったというわけか……。






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