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亜竜

『ソイルドラゴン……か……』


ソイルって確か土の意味だったはずだから、直訳すると土竜になるが……。


「どうする?」


『どうするって言われても……』


流石にカノンでもこんな奴相手に突っ込んでいこうとは思わないらしい。



とは言ってもどうすべきか……。


ふとアイリスの方を見てみると、ソイルドラゴンの近くで挑発する様に動き回っている。


あれのおかげでこっちには見向きもしていないようだ。


「アイリスさん凄いね……」


カノンがアイリスの動きに目を丸くしている。


それを聞いたリーゼも頷く。


まぁ確かにな……。


空中を蹴って自在に飛んでいる。


何かの漫画で同じような光景を見たことがある気がするのは気のせいではないだろう……。


『どういう仕組みなんだ?』


「確か跳躍スキルと何かのスキルを組み合わせると出来るって聞いたことはあるけど……」


俺の疑問にリーゼが答えてくれた。


そういえばアイリスは跳躍スキルは持ってたな。


つまりそれ以外のスキルも使って疑似的に飛行できるって訳か。


っと、そんな事を考えている場合でもないな。


「ハク、リーゼさん支えながら戦える?」


『無理だな。ゴブリンやオークなら何とでも出来るが……あんな奴相手にこの状態じゃ落とされるぞ……』


カノンはあくまで人間だ。


元々空を飛べるような体の構造はしていない。


飛行スキルと竜装スキルで飛んではいるものの、流石にドラゴン相手にするには心もとない。


かといって地上に降りても地中からの強襲を受けてしまっては意味がない。


残る手段としては魔法が思い当たるが、俺の手持ちの魔法でダメージが通るかは疑問だ。


ソイルドラゴンの体長は20メートルほどはある。


正直あのサイズ相手にどうやって……。


『ソル、どうする?』


こうなったら困ったときのソル頼みだ。


『アイリスなら戦えないことはありません。あまり長時間の戦闘になると厳しいですが……』


まあ確かに無理やり空飛んでるしな……。


仕方ない。


『リーゼを頼めないか?策がある』


『あれを使うのですか?まだ持続時間に難が……』


『最終手段としてはそれも考えたが、使わずとも行けるはずだ。一応は策を考えた』


『………………分かりました』


少し迷ったそぶりを見せたソルだが、了承してくれた。


『では一旦そちらと合流しましょう。魔法で援護してください』


おぉ……


魔法で援護と言っても相手は土竜だぞ?


いや……、別に何も攻撃でダメージを与えないといけないわけでもない。


目くらましくらいなら何とでも出来るな。


『カノン、魔法撃つから姿勢崩すなよ』


「分かった」


カノンが頷いて身構えたのを確認すると、俺は触手を砲身に変化させ、ソイルドラゴンに向ける。


そして砲身の根元に粘液を作りながら溜めていく。


久しぶりの粘液爆弾だ。


「え?これ効くの!?」


カノンから疑問の声が聞こえてきた気がするが気にしない。


というか俺も効くとは思っていない。


しかし今回作ったのは粘性特化の粘液だ。


空いている時間に色々と実験をして、粘液スキルも検証していた。


元々ある程度粘性などは変えられるのは分かっていたのだが、それがどの程度まで可能なのかは分からなかった。


『行くぞ!』


ポポポポポポポポポポポポポポポン!!!


久しぶりに聞いた相変わらず間抜けな音と共に、粘液爆弾が連射される。


そしてソイルドラゴンに命中してはじけた粘液爆弾は、ソイルドラゴンにまとわりつく。


「グ?……グァァァァァ!!」


ソイルドラゴンは一瞬何が起こったのか分からないようだったが、自分に絡みついた粘液に気が付いたようで雄たけびを上げながら振りほどこうとする。


しかしソイルドラゴンが粘液を取ろうともがくと、粘液は取れるどころか周りの岩や木をソイルドラゴンの体にからめとっていく。


「うわ~……」


その光景を見たカノンが思わずと言った感じで声を上げる。


そしてそんな隙をついたアイリスがソイルドラゴンに対する挑発をやめて、こちらに来た。


「ハクって無茶苦茶するわね」


戻ってきて開口一番これである。


そんなに無茶苦茶か?


「地面見てみてよ……どう見ても無茶苦茶でしょ?」


あれ?


心の声に突っ込みを入れられた?


っと、地面?


地面には何もしていないぞ?


そう思いながら目線を下にやって、ようやく言いたいことが分かった。


というかよく考えれば分かる事だった。


ソイルドラゴンは地面の上で粘液を振り払おうと暴れていた。


しかし今回の粘液は粘性を限界まで高めたものなので、振り払うどころか逆に岩や木を巻き込んでしまっている。


そのおかげでソイルドラゴンは木や岩、土などあらゆるものが混じった気持ちの悪い物体状態ではあるのだが、そのまとわりついている物体が虚空から湧いてくるわけでもない。


その場にあった物を巻き込んでいるだけだ。


つまりソイルドラゴンが暴れた……以前に通った場所に生えていた木々や、そこにあった岩すら巻き込んでいるのでその場所だけが禿げ上がっている。


あー、うん。


やりすぎた……。


『因みに今回の粘液は可燃性にしてみたんだが……燃やすとまずいかな?』


「…………」


カノンは俺の疑問には答えずに信じられないといった様子でソイルドラゴンを見ている。


「ハクさん……やりすぎ……」


その横からはリーゼの呆れた声が聞こえてくる。


『燃やしたとして周りの森はどうするつもりですか?』


ソルからは冷静な指摘が入る。


仰る通りです……。


「その前にカノンちゃん、私も支えてくれない?」


アイリス……、今言う事か?


まぁ確かにそのスキルは短時間しか使えなさそうだし、ここまで距離を取ればアイリスを支えた方が良いのは間違いないか……。


とりあえず触手でアイリスも確保する。


これでカノンは三人分を支えることになるわけだが、今の俺の魔力量なら大丈夫だろう。


それにこの消費速度ならソルから魔力捕食で魔力を分けてもらっても間に合いそうだ。


……本人は嫌がるかも知れないが……。


そんなことを考えているとき、ソイルドラゴンの体に纏わりついている岩の間から、わずかに光が漏れだした。


『なんだ?』


「っ!まずい!!ブレスよ!!」


アイリスからの慌てた声が聞こえてくる。


確かにそれはまずい。


どんなブレスを吐くのか知らないが、竜のブレスと言って真っ先に思いつくのは炎だ。


今の状態でそんなものを吐かれてしまったら、周りが焦土になってしまう。


というか、先に行かせた商隊は大丈夫だよな?


っと、そんな事を考えている場合じゃない。


今の状況で防御姿勢が取れるのは恐らく俺とカノンだけ。


俺たちが……というかカノンのスキルで如何にかなるものでもないから俺が何とかしなくては!


『カノン!衝撃に備えろ!』


「うん!」


カノンの返事が聞こえるのとほぼ同時にスライムの触手を出す。


そしてそれを膜のような形態に変化させて前方に集中させる。


そしていくつかのスキルも発動しておく。


これで準備は完了だ。


「グオォォォォォォォン!!!!」


ボオォォォン!!!


その直後、ソイルドラゴンの雄たけびが聞こえたかと思うと、岩と木の塊が爆散した。


それと同時にスライムで作った盾に伝わる衝撃と、何かが当たる感覚。


熱を感じるが、そんなに高温ではないからブレスの直撃ではなく粘液が燃えた際の爆発による爆炎と熱風だろう。


そこに爆発で砕かれた瓦礫がスライムに当たっている物と思われる。


そしてそれと同時にガリガリと削られていく俺の魔力。


まだまだ余裕はあるが、もうこんな防御はしたくない。


今度はもっと違う方法を考えよう。


俺は密かに決意を固めるのだった。






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