従魔
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「竜?」
俺とリーゼの言葉にカノンが首を傾げる。
まあ無理もない。
しかしこれで、何で俺だけが気配に気が付いたのか、そして今、俺とリーゼだけがこの気配を感じているのかは分かった。
リーゼには竜感知のスキルがあるし、俺はそもそも同類だから人よりも敏感に反応しただけだ。
「竜ってことはハクの仲間?」
あ、そっちが気になってたのか……。
しかしどうなんだろう?
確かに俺も竜ではあるが、同じキメラドラゴンではないだろう。
「仲間ではないと思うわよ?」
アイリスが苦笑いしながらカノンに言う。
『しかし、竜となると……やれるか?』
「どうだろう?戦ったことないし……」
戦えるような強さならいいんだが、下手をするとカノンやリーゼでは返り討ちになる可能性もあるだろう。
「亜竜種なら私とカノンさんで何とかだと思うけど……」
リーゼがそういうが、確証はないようで歯切れが悪い。
因みに亜竜種とは、分類上は竜になるが、竜とは呼ばれない物の総称だ。
例えば飛竜と言われるワイバーンや、見た目は竜に近いし能力も高いが空を飛べない地竜などがいる。
そして一番大きな違いは、その骨格にある。
竜は4本の手足と独立した翼をもっているのに対して、亜竜は前足と翼が一つになっている。
地竜にしても、退化はしているものの前足に翼のような被膜があるらしい。
因みにキメラドラゴンは前足とは別に翼を持っているので間違いなく竜だ。
話は逸れたが、亜竜種は総合的に見て竜よりも能力が低い。
つまり相手にするなら勝てる可能性も出てくる。
「亜竜なら平均的な脅威度はBランクだから、カノンちゃんだけでも勝てると思うわ。でも竜だと平均がAランクになっちゃうから私でも本気を出さないときついわね……」
つまり全力のアイリスと同等の相手だという事か……。
あまり戦いたくはないな……。
「でもこの気配は亜竜種だと思う。竜はもっと強い気配がするはずだから」
リーゼの言葉にカノンはわずかにほっとした表情をする。
「じゃあドムさんたちは護衛をしながらここを離れて頂戴。私達が引き付けるから」
「し、しかし……」
アイリスの指示にとまどうドム達。
こういった非常時での指揮権は、一番ランクの高いアイリスが持っている。
それは分かっているのだろうが、ドムの表情はすぐれない。
「しかし……いえ、分かりました」
何かを言いかけたドムは、喉元まで出てきた言葉を飲み込むと頷いてガイルとギルに指示を出し始めた。
因みにこの判断にも理由はある。
一つは、もうここはレセアールの近くで危険な魔物はいないこと。
ドム達三人なら問題なく護衛できる。
もう一つは、勝率を上げるためにはカノンとリーゼの存在は必要不可欠だということだ。
リーゼの感知では亜竜であることは確定ではあるのだが、もし飛竜だった場合、空を飛べるカノンがいないと戦えない可能性もある。
いくらAランクのアイリスと言えど、攻撃が届かないのであれば負けはなくても勝ちもない。
そして、竜に関するスキルをいくつか持っているリーゼも、勝率を上げるためには必要だ。
よって、今回この三人が残るのは当然と言える。
それに、この三人、特にカノンとアイリスが自分たちをスルーして馬車を襲おうとしても対処できる。
問題は、戦闘経験の少なさか……。
カノンもそうだが、俺も竜と戦ったことはない。
いざとなれば、練習中だったあれを使う可能性も考えておこう。
その後ドムたちは馬車と共にレセアールへ向かった。
一応竜の気配を感知してみるが、まっすぐこちらに向かっているようで馬車が襲われる危険は少ないだろう。
『さて、作戦はあるのか?』
馬車に関しては安心できるが、俺たちの状況は安心できない。
アイリスなら何かしら策でもあるのではないかと思って聞いてみたが……。
「え?殴る?」
それは作戦とは言わないぞ……。
「……ハクみたいなことを言わないでください」
カノンが呆れたように言う。
ん?
『どういう意味だ!?』
何故俺みたいなんだ!?
「ゴブリン戦の時の三択を忘れたとは言わせないよ?」
やけに冷たい声が聞こえる。
あ~、そういえばそんなこともあったな……。
あの時の俺の三択も作戦とは言えない物ばっかりだったのは間違いないけど……。
「えっと……相手がどんな竜か分かる?」
カノンの冷たい声に怯えているのか珍しくアイリスの声が震えている。
「そうですね……。ワイバーンではないです。これは……地竜かな?」
そういいながら首を傾げるリーゼ。
リーゼにもはっきりとは分からないらしい。
『確かに気配は上にはない。つまり空を飛んでいる訳ではないだろうからそんなところか…』
リーゼの推測はほぼ合っていると見て間違いないだろう。
と言うより俺は、どんな種類の竜がいるのかも把握できていない。
ギルドに併設されていた図書館で調べた事はあるのだが、それでも大まかな種類しか分からなかった。
その時は、いざとなれば鑑定があるからとは思っていたが、先手を打てないことは考えていなかった。
気配は段々と近づいてくる。
そしてある程度の距離まで接近されて初めて分かった。
『なあリーゼ?気配……下からしないか?』
嫌な予感がしつつリーゼにも確認する。
「ハクさんも同じ?私もそう思う……」
やっぱりな……。
地竜って地面に潜れるものだっけ?
ただ飛行能力を失った亜竜って認識だったんだが……。
「…!!カノンちゃん!リーゼちゃん連れて飛んで!」
いよいよ気配が近くなった瞬間、アイリスから指示が飛んだ。
「はい!」
カノンは考えるより早く竜装を発動して翼を出す。
それと同時に俺は触手でリーゼを掴む。
ドゴオオォォォォォォン!!!
カノンが飛び上がるのと、俺たちが今まで立っていた地面が破裂したようにはじけ飛ぶのとは同時だった。
「な、なに!?」
空高く舞い上がったカノンが驚きの声を上げる。
というか、アイリスは無事だよな?
さっきはリーゼしか掴まなかった。
アイリスの指示にアイリス自身は含まれていなかったし、そもそも二人を抱えて飛ぶには俺とカノンでは力不足だ。
間違いなく巻き込まれていただろう。
……っと、居た。
少し離れた所で空中を蹴りあがってくる……。
何で何もない空間を蹴ることが出来るんだ?
アイリスのスキルにそんな物はなかったぞ?
猫耳と尻尾が生えてるから獣装は使っているだろうが……。
「……何?あれ?」
ふいに、カノンの声で目の前の敵に意識を戻された。
地面の中から出てきたのは前足が大きく発達し、そこに申し訳程度の翼の名残であろう被膜がある竜だった。
……いや、ぶっちゃけて言うと、モグラみたいな竜だ。
「あれって……土竜?」
土竜……って確かモグラの漢字表記も【土竜】だったがするのだが……。
そのままか……。
てなわけで鑑定っと……。
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種族・ソイルドラゴン
HP・26583 MP・59846
状態・従魔
スキル
感覚系
熱感知Lv3・気配遮断Lv3・気配察知Lv3・方向感覚Lv6
状態・耐性系
魔法耐性Lv1・毒耐性Lv1
特殊系
飛行Lv3・潜地Lv6
固有スキル
竜魔法Lv1
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思ったより弱い。
HPやMPは負けているが、スキルなどを総合的に見れば俺でも戦えるだろう。
……体格?そんなものは知らん!
状態の欄にある従魔というのが引っかかるが……。
何にせよ、今まで戦った中で最強の敵になるだろう。




